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リクエスト  作者: 潜水艦7号
3/9

生還

次の日の朝。

ナツキは『昨晩、アレからどうしたのか』サッパリ記憶が残っていなかった。

晩御飯を食べたのか、食べなかったのか。

お風呂に入ったのか、入らなかったのか。

まったく覚えていない。とにかく何も手に付かないまま、ひたすらテレビの続報を観たり、ネットで情報を確認していたと思う。多分、その途中で意識が途切れて寝てしまったのだろう。

時計を見ると午前4時過ぎだ。冬の外は、まだ真っ暗である。

「ヘンな時間に起きたな・・・」

ナツキはムックリと身体を椅子から起こした。

「痛てててて・・・」

おかしな体勢で寝ていたせいで、身体のあちこちが軋む。

「とりあえず・・・何か食うか・・・」

フラフラと立ち上がった時だった。

ピー・・・・ンポー・・・ン・・・

玄関のチャイムが鳴った。

「えっ!」

ナツキは一瞬にして眼が覚めた。改めて時計を見るが、やはり時刻は朝の4時過ぎ。『誰かお客が来る』時間ではないと言える。

ナツキの背筋に寒気が走る。

「いやいやいや・・・アタシさぁ『そういうの』ってダメな性質(たち)なのよ・・・勘弁してよね・・・」

これは『話に聞く』パターンだ、とナツキは思った。

『想いを残して死んだ人間が、家族や恋人の元にやってくる』という・・・

「いや、待て!まてまて。今のは・・・そう!『気のせい』だしっ!」

心を強く持とうとした瞬間、更なる追撃が来た。

ピー・・・・ンポー・・・ン・・・

また、チャイムが鳴ったのだ。確かに鳴った。もう、『幻聴』では済まされないレベルだ。

「いやぁ・・・参ったぞこれ・・・どうすんだよぉ・・・」

思わず左手の爪を噛んだユキナの耳に、今度はインターフォンから声が聞こえてくるではないか。

"おい・・・!聞こえるか?ボクだよ、ヒロキだ!頼む、此処を開けてくれ・・・!"

心なしか、その声には不気味さが漂っているような気さえする。

「『やっぱり』じゃねーかー!」

ナツキはヘナヘナとその場に座り込む。

「コレはアレでしょ?下手に『まぁ、良くぞ帰って来てくれたわねぇ!』ってドアを開けた瞬間に『お~れ~だ~ぁぁぁぁ!』とか言って、化けて出て来るヤツなんでしょ?!そう、子供の頃にテレビのオカルト特集で見たんだから!アタシ知ってんだから!」

すると今度は、ドアを叩く音が聞こえ始めた。

ドンドン!ドンドン!

"おいっ!ナツキっ、頼む、起きてくれ!頼むからさ!早くっ!"

「・・・・ん?」

ここに来て、やっとナツキも『何やら様子が変だ』と気づく。

え?もしかして『本物』なの?

「ジュリエット、玄関の防犯モニターを映して!」

『了解デス。モニターヲ、映シマス』

ジュリエットのディスプレイに玄関外の様子が映し出される。

「居たよ・・・ヒロキだよ・・・」

意を決し、ナツキはインターフォンの応答ボタンを押した。

「ヒロキ?、ヒロキなの?マジメに?幽霊とかじゃなくて?」

"当たり前だよ!ボクは生きてるんだよ!ホラ、『足』だってチャンと付いてるだろ?"

モニターのカメラに向かって、ヒロキが足を突き出して見せる。

「あ・・・ホントだ。足、付いてる」

"『付いてる』じゃなくって、頼むよ、早く開けてくれって。外は寒いんだ!"

「ゴメ、すぐに開けるから!・・ジュリエット、玄関の電子錠を開けて」

『了解。電子錠ヲ開ケマス』

ガチャリ、と音がして玄関のカギが開く。

「おお・・くそ寒みぃ・・・・ありがとう、開けてくれてさ・・・」

慌ただしく、ヒロキが室内に入ってきた。

「ホントに・・・アンタ、ホントに生きてるの?『お化け』とかじゃなくって?」

ナツキはマジマジとヒロキを見つめる。

「ああ・・・『かろうじて』ね・・・正直、ボクも『どうして助かったのか』良く分かってないんだ。気が付いたら漁船の上に居てさ・・・『死体が浮いてると思って引き上げたら生きてた』って漁師さんが言ってたよ」

ペタンと、ナツキがその場に座り込んだ。

「・・・信じらんない・・・生きてたなんて・・・ホント、奇跡みたい・・・」

「すまない、心配掛けてさ。けど、とりあえず『生き残った』から」

ヒロキもその場に座り込み、ナツキを抱きしめようと・・・

バシっ!

「痛い!何すんだよ!」

ヒロキが頬を押さえる。

「いま、『恋人同士の奇跡の再会』的な良い雰囲気だったじゃんか!何で殴るんだよっ!」

「うるさいっ!」

ナツキが怒鳴り返す。

「テメェ!どんだけアタシが心配したか知ってんのか、この野郎が!昨日一日、まったく『こっちが死にそうだった』わよ!」

「ゴメン!心配かけた!」

プイっと横を向いてむくれるナツキに、ヒロキが手を合わせる。

「あっ!そうだ、アンタのお母さんが死ぬほど心配してたわ!すぐに連絡・・・」

端末を取ろうとするナツキの手を、ヒロキがグイっと引っ掴む。

「・・・待ってくれ。『それ』をされると困るから『此処』に来たんだ・・・」


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