第一話 軍部総大将 キリシマ ユウゴ
都内某所に都庁に負けん勢いで屹立す都立金剛電波高等学校。
この学校では秘密裏に超能力を有する生徒を保護し、超能力の制御と正しい使い方を教えるという役目があり、その一環として軍部がある。
"戦闘能力の保持"のみならず、銃器の知識や自制心、規律を重んじる精神の長けた者のみが入部出来る部である。
部という括りではあるがそれは括りに過ぎず、その部員達の特性から風紀委員としての役割も担っている。
そんな軍部の総大将、キリシマ ソウゴはこの物語の主人公にして学園史上最強の人物である。
彼の使える超能力は、戦闘系統はE.S.P、サイコキネシス、パイロキネシス(火)の三種。その他アンチ・サイとサイキックスティールの計五種だ。
一人の人間が五種もの能力を使えるのは実質不可能と言われているが、彼の元来持つ希少な能力、サイキックスティールがその全てを可能にした。
サイキックスティール、人の記憶、能力、技能、知識を吸い取る能力である。もちろん返還も可能だ。
彼のこの能力のおかげで金剛電波高等学校には懲罰『一週間超能力取り上げ』が追加された。
それに加えて鍛錬を怠らぬ彼の性格もあり、キリシマ ソウゴは学園最強となったと言えよう。
そんな彼は今日も喧騒にまみれた廊下を闊歩する。
幾人かが彼の顔を見てバツの悪そうな顔をするが、それは彼らに恨めしいことがあるからであろう。
キリシマもそれを察しあえて目を向けず姿勢を正し昼休みが終えるまでに次の授業のある教室へと移動していた。
テレポートを持っていないキリシマは、移動がほぼ徒歩であり、それがより校内から悪を排除していたのは言うまでもない。
「ねえ、聞いてよ!新しい超能力を手に入れたんだ!!」
ロジックマスター、という電脳世界に入り込める能力を持つキリシマの友人が横から声を掛けてくる。
彼は時々電脳世界に入り込み、一度きりしか使えぬDLPSYと言われる電脳超能力を拾ってきては彼に披露するのを一つの楽しみとしていた。
「うぬ、どんなものだ。」
重々しい口調で隆々とした胸板を張ると、その友人、イガラシへと視線を向け立ち止まる。幸いにもそこは廊下の端だったので誰の迷惑を掛けることもないはずだ。
「G.O.A.B.R.O.A.Dって言うらしいんだけどね。」
英語が苦手なイガラシはDを分かりやすいように"デー"と発音し、超能力のスペルを告げる。
「ふむ、テレポート系統か。使ってみせてくれ、どこに飛んでもお前ならば帰ってこれるだろう。」
その言葉に合わせてイガラシが両手を前に出し、瞳を閉じる。
そのポーズは確か、人に掛ける場合のはずだ。
「おい、待て」
と、能力の発動を止める前に空間が縦に歪み耳鳴りが鳴る。
旅客機が離陸する時の妙な安定感とハラワタの浮く感覚がキリシマを襲い眩暈を起こさせた。
しばらくチカチカとした眩暈に悩まされるも、それが治った頃には彼は眩暈を起こしたままの方がまだ幸せだったかもしれないと考えた。
辺りは森で覆われ、目の前にはゲームの広告で見たことしかないゴブリンじみた格好の体長が5mを越えるであろう異形の生物が立っていたのだ。
目からは確かな殺意を感じる。キリシマの足の下にある料理のせいだろう。
瞬間掌がキリシマに向かって振られる。空を割く音が聞こえるが、キリシマはそれを難なく避けた。予知能力であるE.S.Pのおかげだ。
「発火。」
すかさずキリシマが静かに呟き、そのゴブリンモドキを凝視する。
ゴウッという音が鳴り、そのゴブリンモドキは瞬く間に炭と化した。
踵を返しキリシマは歩みを進めようとするが、周りから十数人が急に飛び出しキリシマの前にひれ伏した。
「あなたは英雄です、ぜひうちの村に来てください。」
「なにを言っているんだ。」
押し問答の末キリシマは両手を抱えられ引き摺られ気味に村へと連行された。