初心者訓練場。
初心者訓練場。
ベータテストの頃は、そこで真面目に説明を受けようとする者など殆どいなかった。
不死身のカカシを相手にいかに最大DPSの出すか計算する者がいた程度だ。
DPSとは、damage per secondの略だ。
一秒あたりのダメージを意味する。
このゲームでは決まった型がないので、同じレベル帯、スキル帯でも武器の振り方一つでダメージ効率が全く違う。
スキルを上げたいならば、手数を多くする方が効率が良い。
攻撃毎に上昇判定がある為、3発より4発で倒す方が上がりが良いのだ。
では速度重視の攻撃のが良いか?といえばそうとも言えない。
手数を多くすれば今度は傷が浅くなり敵が倒せなくなる。
防御力の高い相手には傷一つ付けられないことも珍しくない。
基本的に、手数を重ねる武器より体重を乗せて大きな一撃を出す攻撃の方がDPSが出る。
それを知らない冒険者は、どうしても武器に頼ってしまうことが多い。
初期装備で冒険者はナイフを持っているが、その刃だけを頼りにしてしまうと無駄に戦闘時間を長引かせてしまう。
ナイフで浅い切り傷を1回2回とつけられた程度では、コボルトさえ死なないのだ。
体重を乗せて急所に一撃を狙う方がダメージが大きい。
クリティカルヒットは意図的に出せる。
逆に、クリティカルではない一撃では中々モンスターは死なないのだ。
敵の弱点を見極め、的確に突くことこそが最大DPSの出し方だった。
それゆえに敵の弱点という情報を知っていることこそが最も重要となる。
しかし、カカシ相手とモンスター相手ではDPS効率は全く違う。
モンスター相手ならば弱点を突けることもあれば、全くダメージの通らない部分を攻撃してしまうこともある。こうしたカカシには弱点などないのだ。
また、このゲームの魔法には8つの属性がある。
魔・水・重・闇の魔属性系統。
聖・火・光・雷の聖属性系統。
この中で重力系魔法は特に物理系と相性が良い。攻撃が重くなる。
序盤から魔法前提の戦い方をしたら魔力不足でどうにもならないが。
更に魔系統は筋肉の増強を施すことも出来て、物理系向けの魔法が揃っている。
聖系統はその点、同じような強化系がないわけではない。
例えば武器の神の祝福を受けられているのであれば、羽根のように軽い武器なのに威力だけは凄まじい・・・といった加護を掛けることが出来る。
だが、誰もがその加護を使えるわけではないのが聖系統の特徴だ。
特殊な条件をクリアし、神や聖霊に認められなければならない。
逆に言えば、認められさえすれば使えるようになるので条件さえ判明すれば習得しやすいというのが聖系統の特徴でもある。最も、初心者訓練場で教えてくれるのはその概要までだ。
習得条件については教えてくれない。
そんな基本知識を、初心者訓練場では丁寧に教えていた。
ポーションと傷薬の違いだとか、魔力についての説明だとか。
パーティの組み方、気をつけるべき点。
聞いても特に報酬こそないが、今やそれらの知識は冒険者にとって必須情報と言えた。
Wikiや攻略サイト、掲示板などこの世界にないのだ。