Leave me alone
読みにくかったらすみません。
「これは、違う……っ!」
あの人の叫びが聞こえる。
「俺はこんな結末認めないぞ!」
あの人の怒りが聞こえる。
「こんな糞みたいな結末はいらない!」
あの人の嘆きが聞こえる。
「ミィィシャァ!」
あの人が私を呼ぶ声が聞こえる。
「認めない!俺は、この結末を、認めない!」
あの人の血を吐くような願いが聞こえる。
『貴方が認めない結末は』
なら私はそれに応えよう。
『私も認めない』
***
「な、んだよ……あいつ。」
腐りきった国を倒す為に俺達カーシル義勇軍は立ち上がった。
総員100にも足りない集団だが、俺達には旗頭のカーシル王子がいた。
味方を集め、敵を説得して、民を救って。
義勇軍結成の一年後には諸悪の根源である国王の死刑を除く王城の無血開城によって目的は果たされた。
しかし国王は世界に蔓延る崩壊の芽の尖兵に過ぎないことが発覚。
世界に蔓延る崩壊の芽…魔物と呼ばれる異世界からの侵略者。
先王によって封じられていた女神を解放し、異世界から召喚された女神の巫女を仲間に加え
カーシル義勇軍改め新生国軍は再び戦いに身を投じた。
苦しい戦いだった。
人の社会に潜んで疑心暗鬼にさせることなど彼らにとって赤子の手をひねるようなものであり
強いものになれば強く心を持たねば心を操る異能を持ったものもいた。
暗殺、調略、だまし討ち、裏切り。国を相手取ったときより遥かにえげつなく、つらいものだった。
そしてついに魔王を追い詰め、倒すことに成功する…と思った矢先。
魔王の叫びに呼応するかのように一人の女が魔王を包み込むように出現した。
女…いや、少女といえる幼い女は不思議な装束をしていた。
その姿は巫女と似た物で…
「み、さ?美沙なの?」
どうやら少女と知り合いらしい巫女が呼びかける。
しかし巫女の国の人間は皆黒髪と聞いていたが、彼女は真っ白な髪だ。
巫女の国の人間ではないのだろうか?
『……また、瑞樹。また邪魔するんだ。』
少女は全てを飲み込む闇のような暗い瞳で巫女を見る。
同じ黒い目でも神秘的で神聖に感じる巫女と違い、淀んだ混沌のような目。
そして感情を削ぎ落としたような、抑揚のない単調な口調とは裏腹にその目は怒りを灯している。
『何度でも繰り返してやるわ。何度でも、何度でも。望んで結末が来るまで。』
歌うようにそう言う。
いや、事実謳っていたのだろう。起こるはずのない奇跡を。
ありえない奇跡を。
今更のように思い出した。
この少女を見たのはこれが初めてではない。
魔王を追い詰めたのもこれが初めてではない。
遠い昔を思い出すように、そんな記憶を思い出し切る前に。
『私は望むわ、幸せな結末を!』
***
「お前大丈夫か?」
友人が変な魔法陣に連れて行かれそうになっていた。
「おい、意識はあるか?」
助けようと手を伸ばして魔法陣に引き込まれて
「…なんだ、ちゃんと起きているんじゃないか。」
変な空間に私一人だけいて
「お前なんでこんな所にいるんだ?」
叫んでも 泣いても 誰も答えない暗いかすらわからない変な空間に一人だけいて
「一人だけなのか?」
ずっとずっと…気が狂いそうな程 一人でいて
「じゃぁ一緒に来るか?」
そしてある日あの人が来た。
「そうだ、お前の名前は?」
あの人は私を見つけてくれた。
『……美沙』
あの人は私の手を引いてくれた。
『立花美沙』
だから私はこの人を助けるの。
いつの間にか身につけていたこの力で。
* * *
「うなぁぁぁぁぁ!また時戻しされたぁぁぁぁっ!」
「お疲れちゃん。はい舞丼。」
「なにそれシャレですか?親父ギャグですか?プークスクス。」
「いらないなら素直にそういえばいいのに。」
「さーせんっしたあああああああ!」
「うむ。ほれ、そちに下賜してやろう。」
「あぐあぐ……というか本当この存在迷惑なんだけど!」
「お前がそもそも他の世界からこっそり存在盗ってきたのが悪い。てかバレてないの?」
「代わりに疑似魂魄置いてきたんだから管理人にはバレないわよ!」
「用意周到な窃盗だが自慢げに言う事じゃ決してないからな?」
「だってうちの世界の存在じゃ、あの侵略してきた存在達に勝てないんだもん。」
「じゃあもういっそ初期化しろよ。」
「それもこの存在に邪魔されて不可能っていう。」
「……お前どこの世界の存在盗んできたの?」
「同じ所から盗んできた存在はそこまで魂の強度は強くないから他の世界から流れてきた魂をさらに私が盗んだんじゃないか?て推測を立ててみた。念のため確認していたけど他の存在もどっこいどっこい。」
「というかそんなに簡単に許可無しで見に行けるとかどんだけ管理が杜撰な世界だよ。」
「んむ。私の予想だとこのまま手を入れないと管理不十分による存在の暴走が原因で世界滅亡しそう。盗ってきた存在の種族が増長しすぎて世界がヤバイって奴。」
「管理人仕事しろ。」
「じゃなくてー、存在の排除よ、排除!このままじゃ私の世界乗っ取られちゃうじゃない!」
「その前に魂が擦り切れそうだけどな。たかが管理される存在が一部とはいえ世界管理に干渉しているんだ。いつかガタがくるはずだ。」
「ふむふむ。」
「それか……その存在が望む通り、侵略してきた存在を受け入れてやるとか。」
「断固拒否します。」
「即答!?何がそんなに気に食わない訳?『勇者様』達に吹き込んでいるような崩壊の芽とかそんなんじゃなくて、ただ平和に暮らしたいだけじゃんか?」
「……私の世界にイレギュラーは要らないもん。」
「子供かよ。」
「何と言われようとこいつらの要望は却下!存在は認めるわけにはいかないの!」
「我儘かよ。」
「ふんっ。」
「……本当にそれでいいの?」
「力がない人間は欲望を抱く権利はない。」
「……はぁ?」
「これ私の持論よ。私は絶対に認めない。その要望は、欲望は絶対に認めない。」
「……認めて欲しかったら自分を超えて見せろってか?」
「認めないわよ。」
「おい。」
「欲望を叶える為に神も抑えて見せろってことよ。そんなこともできない存在に妥協してやる事なんて塵一つとして存在していないわ。」
「……なんだかんだ認めてきてないか?」
「ふんっ。このままだと絶対に私を超えられないんだから認めないに決まってるでしょ!」
「実力は下の下でもお前神だから超えちゃったら神になるだろ。」
「一言余計!」
「事実だろ。管理している世界の未来予知も出来てないんだから。」
「世界管理は難しいの!あんたもやればいいじゃない!」
「やなこった。」
「……うがー!もう知らない!今日はもう休憩!」
「おいこら世界放置してどこへ……はぁ、あの猪娘。」
「……おい、そこのお前。そうそう、さっきからこっちを覗いているお前だ。」
「ネズミを許すとは私も耄碌したか。その実力を認めて今回は見逃してやる。」
「……もしかしてこの世界の行く末が気になるのか?」
「私は見ての通り弱小だからね。人様の世界に干渉する労力も時間もない。ただ今過ぎている瞬間をあいつに付き添って見ているだけさ。要するに知らん。」
「まぁでもそうだな。」
「私は人間の持つ可能性、信じているよ。それこそ神なんかに与えられたものじゃない、自分達で幸せな結末とやらを掴みとれるってね。」
「……猪娘が迷ったようだ。私も退かせてもらおう。世間話に付き合ってくれてありがとう。最近はあいつとばっかり話していて退屈していたんだ。」
「ふむ。最後まで聞いてくれたお礼にちょっとおまけ話をしてやろう。」
「行く末を知らないといったな?あれは嘘だ。」
Leave me alone(:余計なお世話)
なお、この短編はどこぞかの長編の黒幕とちょっと関係があるような気がなきにしもあらずだけど殆ど関係ありません。
伏線やら何やら回収していないものが多いですがこの話は続きません。
見た目について殆ど省きましたが設定はありました。
あらすじ以外地文もかなり省いて…ただのSSになりました。
無駄を排したらSSになるような駄文を読んでいただき本当にありがとうございます。
読んでいただいた方に一言。
強い女の子は好きですか?
ちなみに作者は守ってあげたくなるか弱い女の子が好きです。