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絡人繰形店ーー巫女とコップ

「おーっす!!邪魔するぜ連!!」


「入るわね、岬影、御茶請けは饅頭にしてくれる?」


「何の用だ、"変な魔法使い"に自称"楽園の素敵な巫女(笑)"」


店のカウンターに腰掛けた岬影が、先週無縁塚で拾った本を読んでいると、ドカァ!!というカウベルの鳴る音、、ではなくドアの粉砕される音と共に客(泥棒)が襲来した。


取り合えず、この二人の積み上げたツケにドアの修理代を加えながら、接客をこなす。

絡人繰形店の店長としてはあらゆる(邪魔な)客と語らう(戦う)事も重要なのだ、店の存続のためにも。


「私は"普通"だぜ」


「私は他称だしね」


ああ言えばこう言うフリーダムすぎる少女達に、思わず物理的に放り出したくなるがグッと堪える。

仮にも幻想郷で度々起きる異変を解決してくれる人間なのだ、邪険に扱うとスキマに放り込まれかねない。


「それで、本当に何のようなんだ?冷やかしなら回れ右して帰れ、出来れば当分来ないでくれると俺の財布が喜ぶ」


「失礼ね、今日はちゃんと客として来たのよ、代金はツケだけど」


「結局ツケじゃねぇかよ、払う気あるのか?」


「ないならこの店には来てないわね」


どうやらこの巫女は真面目に答える気が全く無いらしい。

まぁそれでこそ、幻想郷を守護する大結界[博麗大結界]の管理者たる博麗(はくれい) 霊夢(れいむ)の在るべき姿なのだと思う、思うのだがこちらとしては迷惑この上ない。


「そんで?そっちの白黒は何を"盗み"に来たんだ?」


「おいおい、人聞きの悪い事を言わないでくれよ、私は借りてくだけだぜ、ちゃんと返す私が死んだらな」


「ああ連華、悪いんだが倉庫の片付けを切り上げてこっちに来てくれ、お帰りのお客様を見送って欲しいんだ」


霊夢と同様にのらりくらりと言葉をかわす普通の魔法使い霧雨 魔理沙。

そんな彼女の対応にカチンと来た岬影は通信用の護符で連華に連絡する、霊夢も似た様なものだが魔理沙にはこの間(第四話)店を吹き飛ばされた仮がある。

決して先日の宴会で、嫌と言うほど酒を飲まされた仕返しではないのだ。


「連様?一体お客様のお見送りって白黒!!

・・・なるほど性懲りもなく商品の強奪に来たって訳ね!!いいわ相手をしてあげる、表に出なさい弾幕ごっこで勝負よ!!」


「ったく今日は本当に客として来たんだけどな、売られた弾幕ごっこは買うに限るぜ!!」


魔理沙を撃退し岬影に褒めてもらいたい一心で戦いを挑んだ連華と、根本的に弾幕ごっこが好きな魔理沙は店の外へと出て行った。


その気になれば岬影一人でも魔理沙を退けるのはた易いのだが、なんだかんだで魔理沙に甘い霖之助に免じて手は出さない。


「どさくさに紛れて私に全部押し付けたわね魔理沙の奴」


「そういうお前もどさくさに紛れて俺の饅頭を食ってんじゃねぇよ、つーかどうやって見つけたんだ?」


「勘よ」


流石はてけとーに進んで目の前の障害を撃破するだけで異変を解決する巫女だ。

スペックの高さは半端ではないらしい。

かといって、先日の詫び(彼女らの顔に反省の色は見られなかったが)として紫と幽々子から貰った饅頭を食べるのは止めて欲しいのだが。


「これを直して欲しいのよ、それこそ割れる前と見分けがつかない様に完璧にね」


そう言って霊夢が渡してきた品を岬影が受け取った。


「こいつは、コップか。

しかも西洋風のアンティーク物だぞ、買おうとしたら5円は堅いな、なんでこんな高級品をお前みたいな貧乏巫女が持ってくるんだ?」


「そんな事はどうでもいいでしょ?私が聞きたいのは直せるか直せないか?よ」


なにやら裏が有りそうだな、とそこまで思考がたどり着いた時点で、岬影はある事に気づいた。


(ん?このコップ前にどっかで見た様な気が、、しかもごく最近)


西洋風のアンティークコップ。


西洋風、、、、、


西洋、、


「これ、紅魔館とこのコップじゃねぇか、なんでまたこんな・・・・・ああ、そう言う事か、それでここにきたって訳だ、なるほど、なるほど、なるほどなぁ」


ニヤニヤと笑みを浮かべる岬影の指摘に霊夢は答えない。

しかし答えないと言う事は、肯定しているも同然である。


恐らく霊夢と魔理沙は紅魔館を訪れており、その際になんらかの過程を経てコップを割ってしまったのだろう。

これは霖之助から聞いた話だが、以前レミリアが神社のコップを割った時に霊夢はかなり怒っていたそうだ。

そんことをした手前、ばれない内に直してしまおうと思ったのだろう。

香霖堂は霖之助経由でバレる可能性が在るので却下、ならば残りはここ絡人繰形店しかないと言う訳だ。


誤算があったとするならば、岬影と紅魔館の間には作られたばかりのパイプがあったという事。


「まぁ、コップを直すのは構わねぇよ、、、、その代わり」


"お客様"に対するサービス満載の笑顔を浮かべた岬影は言い放った。


「貸し、一つだな」


そんな、店の外では閃光が瞬き、轟音が巻き散らかされていた。



▲▼▲▼



数日後ーー


絡人繰形店には再び博霊 霊夢の姿があった。


「いらっしゃい、ん、霊夢か今日はどうしたんだ?」


前回の来店で貸しを作る事に成功した岬影の顔には余裕しか無い。

流石の霊夢もこれではツケで依頼は出来まい、と高を括っているのが丸わかりだ。


しかし、気のせいか霊夢の表情にも余裕しか無い要に見える。


「ちょっとした新聞配達のお手伝い、って所かしらね」


新聞?と思いつつも岬影が受け取ったのは、岬影が購読している文々。新聞だ。

ーーそれなら昨日最新号を受け取ったばかりなんだが


などと考えながら、新聞の大見出を見た岬影は。


「な、な、な、何だこれはぁぁぁァァァァァ!!!!!!」


と言う叫びと共に飲みかけの緑茶を噴き出した。


新聞の第一面の見出しはこうだ。



絡人繰形店、店長と店員の危険な恋?!


先日、本新聞の射命丸 文記者兼カメラマン兼編集者兼新聞配達員が絡人繰形店を訪れた所、彼らが(中略)している決定的瞬間を捉える事に成功した、以前より岬影店長は店員である付喪神連華とそれらしき関係を築いているとの噂があり今回ついに(中略)我々としては心からの祝杯を(以下略


そんな感じの記事が長々と続いており、それを裏付ける様に、かなり引き伸ばされた写真がデカデカと貼りつけてあった。


そこに写されていたのは、岬影と連華。

ちょうど尻餅をついた連華の上に、覆いかぶさる様な格好をしている岬影は360度何所から見ても立派な変態である。


「これは、、あの時の」


二日前の事。


いきなり絡人繰形店の周囲を極地的な振動が襲った。

その結果がこの写真であり、別にやましい事など何一つないのだ。


「霊夢、お前まさか」


「知り合いの不良天人に頼んでちょっとね、安心していいわよこの新聞、剃ってあるのはこの一部だけだし、ま、そういう事で」


物凄く良い笑顔でこちらを向く霊夢。


「貸し、一つね」



▲▼▲▼



後日、妖怪の山にて天狗に宣戦布告をしようとする絡人繰形店の店長と、それを必至で止めようとする店員の姿があったとか、なかったとか。







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