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絡人繰形店ーー月と姫

サブタイがこれですが輝夜様は出て来ません。


それと今後、更新のペースを固定していきたいと思います。


大体週に二度、三度が目安ですね。

朧月夜の迷いの竹林にて動く影が二つ。


「それでは失礼致します、八意様。


又いずれ、出来る事ならその際には依姫も一緒に」


「ええ、楽しみしているとあの子(依姫)にも伝えて頂戴」


方や、月の頭脳とまで謳われた天才薬師、八意・永琳。


もう方や、山と海を繋ぐ月の姫こと綿月(わたつきの)豊姫(とよひめ)である。


月の使者のリーダーである彼女が永琳の元を訪れているのは……とある計画の為だとか、月の都の侵略の手引きだとか、そんな事の為ではない。


単に会いたいから会う、ただそれだけの事。


もっとも、彼女の立場上迂闊に動く訳にもいかず、数ヶ月にも及ぶ念入りな隠蔽や捏造などの下準備の末に……なのだが。


その為彼女の妹であり、月の使者のリーダーの片割れである綿月(わたつきの)依姫(よりひめ)の姿は無い。


……次は一緒に来れるのかしらね


羨ましそうな顔を隠そうとして余り隠せていなかった素直でない妹の事を思い出し、思わず笑みを零す豊姫。


そして彼女の能力【海と山を繋ぐ程度の能力】の力により竹林と月の都を繋げようとした所で。


ふと、とある修理屋の存在を思い出した。


以前、幻想郷から巫女に魔法使いにメイドに吸血鬼がやって来た際に"再開"したあの男、聞くに此処で修理屋を営んでいるとか。


……ついでに会って行こうかしらね


そう、あくまでもついでに、だ。


ピッと空間が裂ける。


一見、妖怪の賢者たる八雲・紫の使う"スキマ"に酷似しているモノの空間の転移と言う点に関して言えばこちらの方が数段上手である。


さてさて、どんな話をしようか?


そんな事を考えながら豊姫は裂け目の中へと身を投じた。



▲▼▲▼



幻想郷内に於いて真夜中の訪問者……と言うのは別段珍しくない。


紅魔館のメイド長などはその筆頭であるし、朝だの夜だの気にする事のない地底の連中もその中に含まれる。


そもそも妖怪なんて生き物は時間にルーズなのだ。


故にここ、絡人繰形店に真夜中の客が来たとしてもそこまで不思議な話ではない。


だが。


「げぇ、綿月・豊姫。何でここに」


「相変わらず反応が新鮮ねぇ貴方は」


彼女、綿月・豊姫の来店であれば何時であろうと驚く自信が岬影にはあった。


大体、彼女に関して……いや月の都に関して岬影は碌な思い出が無い。


ある日突然霊夢がやって来て、「途中でロケットが壊れたら危ないし、一緒に来なさい」だ、そもそもレミリア達が月を目指していた事自体初耳だったのだが。


その後は有無を言わせぬ勢いで話がトントン拍子に進み岬影が「絶手ぇ裏があるだろこれ?!」と叫んだのは、既にロケットが発射された後の事であった。


そして、様々なやり取りの末に出会ったのが彼女。


「それにしても、本当に私の事を覚えてないの?」


「だからよぉ、何度も言うがあんたに会ったのはアレが初めてだ」


やたらめったら親しげに話してくるが岬影は全く憶えに無い。


月面に霊夢が残る際に保護者役と称して月の都に招待と言う名の軟禁状態を受けた時にも似た様な事を言っていたが。


「まぁあの"人間"が黙っているなら私から伝えられる事はないのだけれど、依姫は怒るでしょうね。


貴方のことがお気に入りだったもの」


「オイオイ冗談はよしてくれ、あの神依の巫女のせいで俺はあんた等を様付けする気になれないんだ」


神格のあるものには様を付け敬う。


岬影の掲げるポリシーの一つだが、自分から必要無いと言い切った永琳と違い綿月姉妹に関しては素で呼ぶ気になれなかった。


なんせ八百万の神の力でフルボッコにされたのだ。


そりゃ敬う気も失せる。


「あの子も素直じゃないものねぇ、自分の力が通じないとは言え確かにアレはやり過ぎ、だったわ」


「単に相性の問題だろ、依姫が最初から捕縛に特化した神を依らせていれば最初から決着はついてたんだしな」


実際のところ、どれだけ攻撃を加えても倒れる事のない岬影はその手の敵からして見れば悪夢以外の何者でもないのだから。


「ふふ、このまま貴方を月の都に連れ去る、と言うのも面白そうなのだけど」


「それをやったら俺は全力で暴れる……」


「だろうから、今日のところは帰るわ。


次は依姫も一緒に会いにくるから楽しみにしていて」


それだけ言い残し、スルリと裂け目の中に去って行ってしまった豊姫。


何と言うか……嵐の様な、和邇の様なーー神話になぞられるのであればだがーー女性である。


「いや、だからもう来るなよ……」


そんな岬影の呟きは誰に届く事もなく、闇夜へ消えていった。



▲▼▲▼



所変わって、ここは月の都。


「……で、お姉様。


あの駄目人形は一体何とほざいていたのですか?」


何やら物騒な物言いで豊姫に質問しているのは神霊の依り憑く月の姫、綿月(わたつきの)依姫(よりひめ)である。


永琳からの伝言に頬を緩ませていた彼女だが、岬影の名が出て来た瞬間にこれだ、気にしているのがバレバレであった。


そんな妹の様子に豊姫は笑みを浮かべ。


「依姫が来るのを心待ちにしている、ですって」


「……?!」


何とも言えない微妙な、しかしそれでいて何処か嬉しそうな表情の依姫。



数ヶ月後、漸く絡人繰形店に訪れた依姫と岬影との間に一悶着起きるのだが、それはまた別の機会に。






今更気が付いたのだが、豊姫様って属性の塊の気が……

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