絡人繰形店ーー感染と温暖化
悪いが俺はめーさく派だ!!
なんのこっちゃ。
……何で。
「岬影ー氷嚢が温くなったから新しいのに変えて頂戴」
「へいへい」
……何で俺が。
「店主さん、紅茶を淹れて下さる?」
「あいよ」
……何でまた。
「岬影ー!!」
「店主さん」
「何で俺がこんな事をしなねぇといけないんだ?!」
岬影の絶叫が博麗神社の寝室に響き渡った、そんな冬の日の話。
▲▼▲▼
人間の里で『いんふるえんざ』とか言う病気が流行っているらしい。
そんな話を岬影が連華から聞いたのは六日ほど前の事。
何でも非常に感染力の強い病いで人里の方では既に何十人もの感染者が出ているとか。
特に身体の弱い者、老人や幼子の場合感染すれば死亡する恐れすらあるらしく寺子屋も一時休校、人里の活気は見る影もなくなっていたとのこと。
幸い竹林の薬師、八意・永琳の活躍もあり大事に至る前に特効薬が完成、そのおかげで死人を出す事もなく里の住民も冬を越せそうだ。
だが、今でも感染すると特効薬を飲んだとしても熱が出るので、身体を冷やさず手洗いうがいを怠らぬよう報せが出ている。
「だからお前ももっと暖かい格好をした方が良いんじゃねぇのか?」
「私を誰だと思っているのよ、博麗の巫女がたかが病原体如きに負ける筈ないでしょう」
そんな会話をしたのが三日前。
今思えばあれがフラグだったのかもしれない。
岬影が苦労すると言う。
「全く、何で俺がお前らの世話を焼かなきゃなんねぇんだ」
「仕方ないでしょ?コレって妖怪にも感染するっぽいし」
「お嬢様にご迷惑を掛ける訳にはいかないわ」
「俺にならいいのかよ……」
博麗神社の寝室にひかれた二組の布団の中で先程から岬影にあれこれ要求をしているのは、楽園の素敵な巫女こと博麗・霊夢に。
「妖精メイド達に紅魔館を任せる事になるなんて……帰った時に館の原形が残っていれば良いのだけど」
それで良いのか、と思わずツッコミをいれたくなる発言をぶちかます紅魔館のメイド長、十六夜・咲夜の二名である。
何故彼女まで博麗神社に寝間着姿でぶっ倒れているのか?
時間は少し巻き戻る。
▲▼▲▼
ーー昨晩
「霊夢~聞いたわよ病気に感染したんだって?調子はいかが」
「丁度今最悪になったところよ、空気の読めない吸血鬼のせいでね。少しは竜宮の使いを見習ったら?」
「嫌よ、あんな長い物に巻かれている様な奴の真似だなんて、自分の意思を持ってないみたいじゃない」
「あいつの長いのは羽衣でしょうに」
やって来るなり騒がしく霊夢と語り出したのは紅魔館の主、永遠に紅い幼き月レミリア・スカーレットだ。
どうやって霊夢の不調を知ったのか……考えるまでもなく彼女の能力
【運命を操る程度の能力】によるモノだろう。
運命を操ると言う事は其れ即ち、運命を覗き見る事に等しいのだから。
「だいたい、こんなとこで油売ってるとアンタにも感染するわよ」
「おや?私の心配のしてくれるのか?」
「さっさと感染しなさい馬鹿吸血鬼」
「照れるな照れるな、と言っても今は紅魔館に戻ったほうが……」
レミリアがここまで言ったところで物音に気が付いた岬影が神社の奥から顔を出す。
「病人は安静にさせておくこと、コレ看病ノ鉄則也。
そう言う訳で御引き取り願おうか?レミリア・スカーレット」
「やはりお前が看病をしていたのか人形店主、だが大人しくソレを引き受ける程貴様もお人好しではないだろうに。
大方自分を人質に取った霊夢に仕方なく、と言ったところか?」
見事なまでに大当たりである。
しかし改めて言われると霊夢のやっている事の異常さに気付かされるもの。
自分を人質に取る巫女なんて初めて見た。
「そんなとこだ、そんでもって先の霊夢の話も事実。
妖怪が感染した前例もある事だし帰った方が身の為だな」
「生憎とそう言う訳にもいかなくてね、おっと来た来た」
「何だってのよ一体」
そんな霊夢と岬影の視線を流したレミリア、彼女の横に降り立ったのは大陸風の衣装に身を包んだ門番、紅・美鈴であった。
「到ーー着!!、大丈夫ですか?咲夜さん」
「えぇ、特に問題はないわありがとう美鈴」
「いえいえ、紅魔館の家族が苦しんでいるんです。これくらいの事は当然ですよ」
状況をサッパリ把握で来ていない二人にレミリアがザッと説明する。
要約すると。
咲夜が『いんふるえんざ』に感染した。
看病すべきなのだが、紅魔館内に他の感染者を出す事を咲夜は許せない。
すると霊夢も感染しているらしく看病しているのは感染する恐れのない岬影であるらしい。
良し、後は任せた。
「任せるな馬鹿野郎、霊夢も何か言ってやれ」
「あ、霊夢。これ御見舞いの果物に、少ないけど貴方達の回復を願ってお賽銭ね」
「まぁ岬影の手厚い看病しか約束出来ないけど、ゆっくりして行きなさい咲夜」
「それではお言葉に甘えて、宜しくお願いしますわ店主さん」
「咲夜さんの事頼みましたよ店主さん、私も後で様子を見に来ますから」
まさに四面楚歌。
周りは敵だらけであった。
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そして現在この状況に陥っていると言う訳だ。
何とも傍迷惑な話であるが、今更放っておく訳にもいかない。何だかんだ言って岬影もかなりお人好しな性格であったりした。
もっとも。
「そう言う訳で、早速お見舞に来ましたよー」
この華人小娘にはとても敵わないのだが。
「いや、早いな」
確かにお見舞に来るとは言っていたが昨日今日でとは予想外である。
「め、美鈴?、貴方どうしてここに門番はどうしたの?」
昨日のやり取りの記憶が曖昧になっているらしく、美鈴の訪問に驚く咲夜。
「嫌だなー咲夜さん、昨日お見舞に来るって言ったじゃないですか。
それに門番の方でしたら妹様が『門番ごっこ』をして下さっているので」
「何よその反則門番、今日の魔理沙には同情するわ」
空模様を確認し、今日が絶好の吸血鬼日和である事に気が付いた霊夢は今日も紅魔館に侵入するであろう魔理沙に同情する。
「って事はレミリアはその付き添いか」
正確には付き添いと言うより見守り、と言うべきか。
恐らくだが、今頃フランの様子を確認しながら彼女の挙動をチェックしているのだろう。
アレはアレでかなり妹想いの姉である。
魔理沙がやって来たらきっとそれとなく参戦するつもりの筈だ。
つくづく今日の魔理沙に同情する岬影であった。
そんな二人の存在を脇に捨て美鈴と咲夜は……何かやってた。
「はい咲夜さん、リンゴが切り終わりましたよ。あーん」
「べ、別に一人でも食べられるわよ、ほらフォークを渡しなさい」
「駄目ですよー病人は大人しくしませんと、私は身体の丈夫さが取り柄ですし病気なんかに負けませんから、ね?」
「……う」
次に言おうとしていた事に予防線を張られ退路を失う咲夜、リンゴ(ウサギちゃんカットver)の刺さったフォークは目の前である。
「ほらほら、病気の時ぐらい童心に戻ってみたらどうですか?あーん」
「……」
「それとも、私が切り分けたリンゴなんてお口に合いませんか?」
咲夜は折れた。
「……あ、あ、あ、あーん」
「どうですか?美味しいでしょう?」
羞恥に顔をそれこそリンゴの様に染めた咲夜はただコクコクと頷くだけ、それを美鈴は満足そうにそして優しく見守っていた。
「……熱いな」
「……そうね」
ただし、周りへ温暖被害が出ていたのだが。
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因みに咲夜、その時は意識が朦朧としており。
その後デレる事は無かったとか。
ただめーさくが書きたかっただけのお話。
皆さんもインフルエンザに感染しないよう、うがい手洗い東方を欠かさ無い様に。
言っておくが俺は東方地霊殿をやっているうちに風邪を直した経験がある!!
だからなんのこっちゃ。




