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絡人繰形店ーーペットと黒歴史

お空じゃないよお空だよ、え?区別がつかないって?


心の眼で見て下さいww


絡人繰形店の店主、岬影 連は基本的に客を選ぶような真似はしない。


お世辞にも人付き合いが上手いとは言えない岬影が、開店当初からブレる事のないこの方針を掲げているのには訳がある。


ぶっちゃけた話面倒臭いのだ。客を選り好みするのが。


本当にこいつは商人なのか? と聞かれればそこまでだが岬影は誰も拒まない……いや、一部の客ではない客を猛烈に拒否するがあくまでも口頭でだ。


それに、受けた依頼は必ずやり遂げる辺りから割と仕事熱心である事も窺える。


冒頭に戻るが、岬影は客を選ぶような真似はしない。

彼にとっては訪れる全てが客なのだ。

その証拠に普段から当然のようにツケで済ます某異変解決人や仕事の一つも持ってこない某人狼に対してぶっきら棒な態度を装っても、物理的に追い出そうとはしない。


無論、店に対し敵意を抱く者は容赦なく潰すのだが……とまぁ、語るとこんな形に落ち着く岬影は今。


「ははは!!この店を私の地上征服の拠点として使ってあげる、だから岬影の兄ちゃんにはショーグンの任を授けるわ」


この⑨(チルノではない)の⑨(チルノではない)な発言を敵意表明と捉えるべきか考えていた。


ーーどうすっかねぇこの⑨(断じてチルノではない!!)


どうも向こうは岬影の顔を知っている様だが…どこで会ったのだろうかまるで覚えがない。

一度見たらそう簡単には忘れられそうにもない格好をしているにもだ。


長いボサボサの黒髪に緑の大きなリボン、同じく緑のミニスカートに白のブラウス。

鴉系統の妖怪らしく真っ黒な翼に、上から白いマントをかけており、そのマントの内側には見た事もない不思議な空間が映し出されている。

それだけでも十分特徴的だが、胸には大きな真紅の目。両足に装着された怪奇な物体、極めつけに右腕には多角柱の棒まで付いている。


一体何があれば忘れるのだろう?


すると岬影のリアクションの薄さに感ずいたのか。


「あれ?兄ちゃん覚えてないのー?私だよ私、一緒に勇儀さんと弾幕ごっこしたじゃん」


「お前か!!!!」


ようやく思い出した。


以前萃香と勇儀に誘われ……否攫われて地底の宴会に参加させられた時に会った地獄鴉だ。

あの時は泥酔していたのとその他諸々で記憶が朧げだが。


ーーそぉいや八咫爺さんの力を取り込んでるんだったか


つまりこの奇妙な両足と胸の瞳は太陽神(又はその使い)である八咫烏の有する[核融合を操る程度の能力]の象徴。


昔一度だけ遭遇し何を血迷ったのか勝負を挑んで塵も残らない程に消し飛ばされた思い出がある。


まさか力尽きる寸前に守谷の二柱に力を預けるとは思ってもみなかったが。


「……で、確か…霊烏路(れいうじ) (うつほ)であってるよな?」


「お空で良いよ、長いし呼びにくいもんね。

いやぁそれにしてもあの時の兄ちゃんはカッコ良かったよねー、「今だ!!俺ごと吹き飛ばせって」……」


バキン!!


岬影が持っていた鉛筆が真っ二つに折れた音だ。


「忘れろ」


「うにゅ?」


「今すぐ!!迅速に!!お前の頭の中から消しされ!!」


酔った勢いとはいえあの様な台詞を吐いたのは「消し去りたい過去」……俗に言う黒歴史である。


このままではいけないと判断した岬影は話題を変えるべく会話を続行。


見るからに焦っていた。


「ん、んで?お空は何の様で来たんだ?」


空は何かを思い出した様頷くと。


「そうそう、私はさとり様に言われてここに来たの」


さとり……と言うと彼女の主である覚妖怪、古明地(こめいじ) さとりの事だろうか?


となると地霊殿からの依頼が舞い込んだのかもしれない。

前回(11〜13話参照)は失敗したが今回こそはパイプを作っておきたい岬影にとっては朗報である。


「なるほどな、なんて言われたんだ?」


空は暫くうんうん唸ると閃いたと言いたげな表情で。


「さとり様が言ってたんだよ……何て言ってたか忘れちゃったけど」


「何で肝心な事だけ抜け落ちてんだよお間の頭は!!」


覚える事と忘れる事が逆である気がする。


ーーこのままじゃ埒が明かねぇ、いっそこっちから地霊殿を訪ねるべきか?


そう岬影が結論を出そうとするとバン!!という音と共に、深紅の髪を両サイドでおさげにした猫耳妖怪少女。

地獄の輪禍。

お空と同じくさとりのペットである火焔猫(かえんびょう) (りん)が飛び込んできた。


彼女は暫く肩で息をすると。


「お空!!どうしてあたいを待たずに行っちゃうのさ、一人で行っても言伝を忘れるって決まってるのに」


見事に的を得ていた。


対するお空は特に反省の色を見せる事もなく。


「ゴメンごめん、お燐を待ってるよりパパッと私一人で行った方が早いと思ったんだよ」


確かに早いが伝える言葉を忘れてしまえば本末転倒であろう。


燐は苦労人特有の溜息を吐くとようやく岬影に気がついたらしい。


「あーゴメンよ岬影の兄さん、お空ってばいつもこうなのさ」


何となく彼女らの日頃が見えた気がする岬影は気を悪くする事もなく言葉を返す。


「あぁ、大体想像が出来た、んでお前も地霊殿の主から伝言を頼まれているんだろ?」


「そういう事、にしても兄さんあの時とはまるで別人だね、凄かったよあれは「特攻隊長岬影連、いざ参る」ってさ、そのせいでお空がSAMURAIってのに嵌っちゃって……」


「良いから今すぐ忘れろぉぉぉ!!!!!」


人形の岬影は顔を赤くしたりはしないが、羞恥心はある。

という事で唯でさえ先程のお空の言葉で一杯一杯であった岬影の堪忍袋は。


「そーだ!!お燐はニンジャで兄ちゃんはトッコウタイチョウで行けば良いじゃん!!」


お燐とお空のダブルパンチにより限界を迎え。


「お前らちょっくら表に出ようか?言っていい事と悪い事の区別の仕方を体に教えてやる!!!」


絡人繰形店の内部に絶叫が響き渡った。





そんな訳で、結局岬影等、一人と一匹と一羽が地霊殿に向けて飛び立ったのはそれから二刻も後の話であった。









次回こそ地霊殿!!


全国のさとりファンの皆さん乞うご期待!!

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