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絡人繰形店ーーエンジニアと床暖

久しぶりの更新のくせに短いです。


三話続きの一話目です。

冬が迫り、そろそろ対寒気用最終兵器[KOTATU]を出す頃か、と岬影が考えていると、総合修理屋絡人繰形店に客がやって来た。


バン!!!!


カランカラン!!!


スタタ


ズダァー!!!


擬音語だけだと意味不明かもしれないが、実際に音だけだったので仕方が無い。

どうやら床に置いてある、最近拾って来た燭台の足に引っかかったらしいのだが、何者の姿も見えない。


ーーこの店の客はドアを静かに開けるっつぅ考えがねぇのかよ。

と言ってもドアを破壊する様な客(泥棒)もいるので、壊されないだけマシかもしれないが。

そんな事を思いつつ、絡人繰形店、店長、岬影 連は見えざる客に声をかける。


「よう、にとり。

急ぎの様なのは今の慌てっぷりから想像出来る、けどまずは光学迷彩を解け、じゃないと見えねぇから」


「ん?ああ、ごめんごめん、そのまま来ちゃってたみたいだ」


すると空間の歪みと共に一人の少女が現れた。

薄水色のツーピースに、緑色の野球帽をかぶった水色ツインテール。


河城 にとり(かわしろ にとり)


幻想郷屈指のエンジニア、自称人間の盟友(一方通行な交友とか言っちゃ負け)、超妖怪弾頭。

[水を操る程度の能力]を持つ河童である。

河童という種族は総じて技術屋であり、にとりもその例に漏れず、今の様な光学迷彩スーツ、のびーるアーム、全自動パパラッチ撃退機構、などの発明をしている。

加えて岬影や霖之助と同様、外界の道具に対する興味関心が大きく、最近は三人であれこれ議論を交わしたりしているのだ。


毎度毎度窓ガラスを粉砕する鴉天狗や、壁に大穴開ける魔法使いなどと、比べるまでもなく良客だ。


「聞いてくれよレン!!実はさぁー・・・・・・・・・」


そんな彼女はなにやら慌てた様子で語りだす。



▲▼▲▼



「一度ならず二度もアンタが自分から尋ねて来るなんて、こりゃ明日は雨かもしれないね」


「その気になりゃ、自分で雨振らせられる神がなに言ってんだよ」


「は、初めまして!!河城にとりと申す者です!!」


ここは妖怪の山、その山頂に位置する守矢神社だ。

どうやら今代の風祝と諏訪子様は人里への布教活動に出払っているらしく、ここにいるのは神奈子様のみ。

まぁ神奈子様は守矢神社の責任者と言っても過言ではないので、岬影達としては特に問題は無い。


「つーかにとり、わざわざ口調を変える必要はねぇから、神奈子様はこの世で一番フランクな神様だからな」


「ん?そうなのかい?」


「こら岬影、何妙な事を教え込もうと・・・・・・・」


「500年前の大宴会・・・」


「あっはは、河童よ確かにとりと言ったな、そう硬くなる必要はない自然にしておけ」


「神様の弱みを握る修理屋店主か、文に教えたら面白い事になりそうだね」


頼むから止めてくれ、とにとりの口を封じる。

バラされる前に口封じをしてしまえ!!となった神奈子様と、こんな特ダネ放っておく訳にはいきません!!となった文の二人を同時に相手にするなど、想像だけでも疲労困憊になってしまう。

ーーってかにとり、変り身が早過ぎだ。


「で?今日は一体何の用なんだい?」


「一種の商談、といったところだな。

詳しい話はにとりからして貰う、頼んだぜにとり」


「あいよ」



[床暖房しすてむ]


にとり曰く、冬でも床を暖かく保つ事が出来る画期的なしすてむ、らしい。

床下にパイプラインを敷き、その中に湯を通すことで温めるそうだ。

これを幻想郷中に広め河童の技術力をアピールする。と言うのがにとり達の計画であり、そのための協力者を彼女は探していたのだ。


「それで最初に岬影の所に白羽の矢が立ったのか」


「まぁ、大の冬嫌いな岬影なら乗ってくれると信じていたからね」


「ちっとも喜べないのは何故だ?」


気にしちゃ負けだよ!!、と全力の笑顔でスルーしたにとり。

言外にーー黙って話を聞け、と言われたのは気のせいだと思いたい。


とは言え、イキナリ床暖房しすてむが普及する筈もない。

なので、この計画を円滑に進めるには、幻想郷の実力者達の住居にこのしすてむを採用してもらうのが手取早い方法なのだ。


そんな訳で、人里にも妖怪の山にも顔がきき、尚且つこう言った類いの物に興味がある岬影に声がかかったのである。


「後は永遠亭に白玉楼、それと紅魔館辺りに行くつもりだ、てもまぁ姫さんのとこなら似たようなものが既に在るかもしれねぇがな」


あの屋敷のオーバーテクノロジーは洒落にならない。


「私的には命蓮寺と地霊殿にも協力を取り付けたいんだよ、特に地霊殿には熱源の提供をしてもらう訳だしね」


「なるほど熱源はあの灼熱地獄か、まぁ私としては一向に構わない、諏訪子と早苗には私から話しておいてやろう」


「サンキュー神奈子様、助かるぜ」


「礼を言うぐらいならもう一度、諏訪子とゆっくり話をしてやるんだな、あいつも頭では理解している、後は時間さえかければ昔の様に戻るさ」


神奈子の言葉に岬影の顔に自虐的な笑みが浮かぶ。

どこか悲しげで、懐かしげなそんな笑み。


「俺に、その資格はねぇよ」


「全く似た者同士にも程ある、二人共筋金入りの頑固なもんだから質が悪い」


余計なお世話だ、と言おうとした所で岬影の服の裾を小柄な手が掴んだ。

河城にとりである。


「ねー岬影」


「な、何だにとり?」


とても良い笑顔。

ただし、他人を安心さずにそのまま土下座させてしまうタイプの笑顔だ。


ココニキタノハナンノタメ?


「よし!!次行こう、つー訳で神奈子様また来るぜ!!」


「ああ、いつでも来くるといいさ」


苦笑いしている八百万の神の一柱に見送られ、二人は次の目的地へと向かう。


今回の教訓。

友人を空気にしてはいけない。


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