絡人繰形店ーー神社とGBA
カオス注意報
「お客様は神様」と言う言葉がある。
店にとって買い物をしてくれるお客様は神様の様な存在、と言う意味だ。
まぁ幻想郷においては、ろくに客の相手もせずに読書に没頭する様な古道具屋もいるので余り当てにはならない。
ここ絡人繰形店でも、相手によっては客扱いすらしない店長がいる訳なのだが。
「そのGBAいくらで売る?」
(さてと、どうやって追い返すかな)
今現在、岬影の目の前には本物の神がいた。
▲▼▲▼
洩矢 諏訪子
遥か太古、神話の時代よりこの世に存在したとされる土着神の頂点である。
祟み神「ミシャグジ様」を使役し、[坤を創造する程度の能力]を有し、かつては一国の王として君臨していた程だ。
坤とは八卦における「地」を意味し、地を司る力の持ち主でもある。
見た目は幼女だが。
どう頑張って見ても八歳以上に見えぬ容姿といい、頭に乗っかっているZUNぼ・・・奇妙な帽子といい、「ロリ」から始まって「コン」で終わるロリコン共が見れば思わず飛びかかるであろう程に幼女だ。
無論、岬影にはそういった性癖は無い。
彼女と初めて会ってから500年程になるが、長寿の存在にはよくある事で、これ以上外見が成長する事はないらしい。
「ったく久しぶりの再開だってのに、いきなりGBAを売れ、ってのはあんまりじゃねぇのか諏訪子様?」
「うちの神社が幻想入りしたのを、知ってて知らんぷりしたような薄情者にとやかく言われる筋合いはないね」
ピリピリ、とした空気が店内に張り詰める。
この二人、実を言うと仲が悪い。
元はと言えば、500年前、岬影が幻想入りする以前に旅をしていた頃の事件が原因なのだが、ここで語ると一日が終わりかねないのでまたの機会にするとしよう。
「とはいえ流石は土着神の頂点だな、お目が高い、こいつが何の道具か分かっているのか?」
ーーま、どうせ面白い映像が映る箱程度にしか思って・・・・
後に岬影はこう語る。
ーー諏訪子様が名前を知っている時点で気付くべきだった、と。
「GBA、日本最大のゲームメーカー任天堂が開発し、2001年3月21日に発売された携帯ゲーム機だけど?たまには旧作で遊ぶのも良いかと思ったんだけどさ、こっちに来る前にGBAは売っちゃったんだよね」
なん、、、、だと?!
と言いたげな表情で岬影の顔面が固定される。
よく考えれば分かった事なのだ、彼女等守矢神社の面々がこの地にやって来たのは極最近の事、つまり外の世界の事をよく知っているのは当たり前の事である。
「諏訪子様!!」
「え?どうしたのさいきなり!!そんな肩掴んで、は、離せ変態!!」
諏訪子の声に岬影は我に帰る。
なんか、連華が見れば三日三晩号泣しそうな状況が完成していた。
「ん、いやわりぃ、まぁそんな事よりもだ!!守矢神社に行ってもいいか?断られても押しかけるが」
「どっちにしろ来るんじゃないか、別に言いけどね、神奈子も喜ぶだろうし」
「決まりだな」
そんな訳で守矢神社へ向かう二人。
岬影からして見れば、外の道具を仕入れる又とないチャンスでもあり、うまくいけば外の道具を買い取ってくれる良客なのだ、みすみす逃す気など毛頭ない。
お客様は神様?アーアーキコエナーイ。
▲▼▲▼
「どうも毎度お馴染み清く正しく射命丸 文です!!本日は守矢神社にお招き頂き取材に詣りました!!」
「招いた憶えはないよ」
「半ば無理矢理について来ただけだろうが」
そんな二人のダブルパンチに、一ミリも笑みを崩さない辺りは流石と言うべきか。
守矢神社があるのは妖怪の山、山頂だ。
故に、そこまでの道のりで妖怪に会う事は寧ろ必然だと言えよう、本来ならば白狼天狗や鴉天狗が侵入者を撃退するのだが、そこは諏訪子が一緒なので顔パス。
しかし、そこで文に姿を見られたのがこの結果である。
パパラッ・・・新聞記者としての本能が疼いたのか、もっとも友人である岬影がいたからの話なのだが。
なんだかんだで、守矢神社行き御一行の人数は増えていた。
突然の来客に少々驚いていた、少女。
身につけている服装は500年前と変わらないままだ。
「えぇっと、初めまして。
守矢神社の風祝を勤めさせております東風谷 早苗です」
「ほぅ、お前が今代の風祝か、あのお転婆と比べると随分真面目そうだな、良い事だ。
俺は岬影 連、この山と人里の間にある絡人繰形店の店長をしている」
「あれは華弥が特別だったんだよ、あの子みたいな風祝は1500年に一人いるがいないかさ」
三人がそんな会話をしていると(文はカメラで神社を激写していた)神社の方から新たな人影、いや神影が現れた。
「懐かしい霊力を感じると思ったら、やっぱりお前か岬影、えらく遅い挨拶だねぇ?」
守矢神社二神が一人、独立不撓の神様。
[乾を操る程度の能力]をもって天を司る風神。
八坂 神奈子である。
ガンキャ(言わせねーよ!!
「ご無沙汰しておりました、じゃ許してくれそうにもねぇな」
「当たり前だろう?と言っても一番怒ってるのは諏訪子の方だが」
でもまぁとりあえず、と言いながら神奈子は懐から何かを取り出す。
酒だ。
「飲むだろう?」
「あぁ、頂くとしよう」
ここで酒を飲むのも500ぶりである。
▲▼▲▼
何故こうなった。
と言うのは幻想郷の文屋、射命丸 文の現在の心境である。
岬影の友人と言う事でちゃっかり守矢神社に入り込んだまでは作戦道理だったのだ、天狗という立場上なかなか取材のする事が出来なかった守矢神社に入るチャンス!!の筈だったのだが。
大事なのでもう一回。
ーー何故こうなった。
「ふはははははっっっっ我が道を遮る物は全て蹴散らすのみ、御柱発射ぁぁぁ!!!!!」
「甘いよ神奈子!!!ミシャグジ様の祟り(目隠し)!!」
「なっ画面が真っ暗に!!」
「流石は諏訪子様、ですが私も負ける訳には行きません現人神の奇跡(雷)!!」
「ック!!火痕が小さくなっただと?!」
「なんで岬影だけ無事なのさぁ!!!」
「ふっ、切り札ってのは最後まで隠しとくもんなんだよぉぉぉぉぉ!!!!絶対防御素他愛発動!!!!!!」
「え、きゃ!!火痕が吹き飛ばされて」
カオス。
無秩序、混沌を意味する言葉だが。
この状況にこれ程しっくり来る言葉があるだろうか?いや無いだろう(反語)。
巨大な黒い塊にうぃなぁーという文字が表示される。
「俺の勝ちだ!!」
どうやら、岬影の勝利という形で決着がついた様である。
四人がやっていたのは「真理雄火痕」とか言う外界の遊びらしい。
仕組みはよく分からないが、画面に映る火痕(火の痕を残しながら進むから)を操る遊び、手軽な式神を操る遊びのようだ。
(と、とりあえず終わったようですし、そろそろ取材の方も進めましょうか)
そんな事を考えながら、守矢神社の二神に近づく文の手をガシィと掴む手が。
岬影だ。
ーー目が血ばしってますけどぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!
酒+ゲーム+マリオカートのテンション=⑨
「お前もやるよなぁ?文。
心配すんな改造されているおかげで、五人だろうが六人だろうが余裕で対戦出来るぞ!!」
「ちょっと、連?!
少しはこっちの話を聞い・・・・・」
「おお!!いいねぇあんたも参戦するのかい」
「次はあたしが勝たせてもらうよ!!」
「いいえ!!私です」
「俺の連戦連勝をとめるつもりか愚か者が!!!」
ーーダメだこいつら早くなんとかしないと。
次の日、帰ってこない岬影を心配した連華が守矢神社を訪れるのだが、その時に何があったのか、彼女は未だに語ろうとしない。
すいませんやり過ぎました。
なら最初からやるなって?
ごもっともです。