自分より明らかに実力が上の人に挑むのは、勇気ではなく無謀
いつも平和なようで、なにかしら事件が起こる茄茂泣町、今回は少し穏やかでない事件が起こったようで・・・
鶴野 玉州「俺の名前は鶴野、詐欺師である。近頃少し名前が知られてきた。ちなみにこれは、心の声であって誰かに説明しているわけではない、ということをいっておく。さて、今回のターゲットは・・・」
プルルルルッ
苑自「はい、こちら株式会社野丸、苑自主任です。」
鶴野「あっ、オレです。オレッ」
苑自「あいにく、オレという知り合いはいませんな。」
鶴野「くそっ、なかなか引っかからないな、しかしここで引き下がっては・・・(心の声)いやですねー、忘れちゃったんですか?声でわかるでしょ?」
苑自「声・・・?まさかお前20年前に実家から家出した、弟の髪造じゃ無いか?」
鶴野「しめた、うまく引っかかった。(心の声)そうだよ、髪造だよ。」
苑自「お前、20年前に家出して、家の金持ち出してから、全く連絡も無く、父さんと母さんはお前はもう息子じゃない、っていってたけど兄ちゃんはお前の味方だからな。」
鶴野「なんか、意外と複雑な事情があったよ。(心の声)ところで、兄ちゃん。」
苑自「今この町にいるのか?だったら、明日時間空いてるか?明日の11時ごろ、茄茂泣第2広場でどうだ。」
鶴野「うん、わかったよ。」
苑自「いいか、絶対来いよ。もし、来なかったら、兄ちゃんは今科学者やってるから、今の電話を元に地獄のそこまで追いかけて、お前を見つけ出すからな。じゃあな。」
ガチャッ プーップーップー
鶴野「切れちゃったよ、まあいいや、金に困ってるか何か言っていくらか頂くことにしよう」
宇多「なあ、苑自君。」
苑自「どうしましたか?」
宇多「今、横で聞いてたけど、お前そんな複雑な事情があったのか?」
苑自「いいえ、第1私1人っ子ですよ。」
宇多「えっ?」
苑自「だから、今のは口からでまかせですよ。なんか、詐欺師の類だと感じたんで、口からでまかせにいったんですよ。じゃあ、明日の11時ごろ、外出しますんで・・・」
宇多「こういうことらしいですけど、いいんですか社長?」
培句「別にいいよ。」
宇多「えっ?」
培句「あいつは、たまにそういうイタズラをさせないと、発明の回転が悪いんだよ。」
翌日11時
苑自「よお、待ったか?」
鶴野「20分ぐらい、まったよ。(心の声)いえ、全然。」
苑自「そういえば、兄ちゃん、お前が昔好きだったお菓子買っといたぞ。ほら、『酢梅』」
鶴野「うげっ、オレこれ大嫌いなんだよ。(心の声)あっ、ありがとう頂くよ。」
苑自「そうそう、兄ちゃんちょっと寄るところあるんだけど、いいか?」
鶴野「ああ、いいよ。」
15分後
苑自「すいませーん。おまわりさーん。」
鶴野「何でよりによって交番なんだーー?(心の声)」
智理 隼人「これは苑自さん、本官に何か用でありますか?」
苑自「いやね、落し物しちゃってね、おもちゃのクレジットカードなんだけど・・届いてない?」
鶴野「こいつ、いい年して何落としてるの?(心の声)」
智理「いえ、届いてませんね。」
苑自「じゃあ、届いたら連絡してもらえます?」
智理「はい、わかりました。」
苑自「それじゃあ、お願いします。」
智理「それでは・・・ああ行っちゃった、そういえば苑自さんの近くにいた人、どっかで見たような・・・」
苑自「そういえば、もう昼食べたか?食べてなかったらおごるぞ。」
鶴野「ああ、いただくよ。でもいいの、こんな高そうな料亭?」
苑自「ああ、気にするな。上着かけるから貸しな。」
20分後
苑自「なかなか、美味かったな。兄ちゃんは急用を思い出したから行くけど、財布ここにおいて置くからな、これで払っていいぞ。」
鶴野「ああ、やっと得できたよ。(心の声)うん、わかったよ。」
苑自「じゃあな、ちょっと女将さーん。今、私と一緒にいた男いただろ、財布おいとくからよろしく。」
10分後
鶴野「さて、そろそろ会計するか。女将さーん。」
女将A「はーい。」
鶴野「確か、この財布の中に・・・あれ、紙が一枚だけ入ってる、なになに・・・『よく考えたら私に弟はいなかった』?なんだこれ、しょうがない、自分の財布が上着に合ったはず・・・あれ、無い、まさか落とした・・いや、そんなはずない、料亭に入る前は確かにあったから・・・しまった、上着かけたときに、財布もってかれた。やられた、騙された。」
女将A「どうしました、お客様失礼ですけどまさかお金が・・・無いのなら警察を呼ぶことになりますが。」
鶴野「ちょっと、待ってください、突然警察って・・・」
女将A「いえ、前に喫茶店でおもちゃのクレジットカードでの支払い事件があったでしょ、そのため店でそのように取り決められまして・・・なにかあったら、すぐに警察を呼ぶことになったんです。」
5分後
智理「本官、到着いたしました。あれ、あなたさっき苑自さんと一緒にいた人で・・・アッよく見たらあんた、詐欺で手配されてる鶴野じゃないか。」
鶴野「しまった、気づかれた。」
智理「分かったぞ、また新しいターゲットを見つけて、そいつに食事代を払わせようとして、失敗したんだな?」
鶴野「いや、あながち間違ってはいないけど・・・」
智理「とりあえず、詳しい話は署で聞こう。」
鶴野「ちょっ、ちょっと待って・・・」
30分後
苑自「あの、すいませーん。」
刑事B「はい、どうしました?」
苑自「あれ、いつもの刑事さんは?」
刑事B「いえ、私は留守番なんですけど、智理さんは今、本署のほうに出かけてますよ。それで、用件は?」
苑自「いえね、財布を見つけたんだけど、これが結構中身が入ってるんだよ・・・」
刑事B「うわ、すごいですね、じゃあこの書類に必要事項を書いてください。」
苑自「はい、分かりました。」
刑事B「しかし、あなたも正直な人ですね、拾っちゃえばネコババできるのに・・・。そうそう、さっき智理さんが外出したって言いましたよね、実は智理さんが詐欺師を捕まえたんですよ、こいつがタチの悪いやつなんですよ、このせちがらい世の中にあなたみたいな人が増えればいいんですけれどね。」
苑自「でも、落とし主が現れなければ、全額もらえるんですよね?」
刑事B「ええ、でもこんな大金が中身ですから、現れると思いますよ。」
苑自「なあに、世の中はうまくできたもんですよ・・・。」
かくして、鶴野は逮捕された。取調室では事実を話したが、全く信用されなかった。
数日後、鶴野の差し入れに大量の酢梅が送られてきた。
ええ、今回も無事書き終わりました。
今回のモチーフは落語の「鰻の幇間」と「粗忽大名」です。
感想お願いします。相変わらず、作者が寂しがるので・・・