培句社長の人生リベンジ作戦
ながらく無沙汰を致しました。これからも一生懸命精進させて頂きます。
社長室
培句「・・・・・。」
宇多「失礼します。あれ、社長何してるんですか?」
培句「ああ、部屋を整理していたら昔のアルバムが出てきたんで、懐かしくなってな。」
宇多「どれどれ、随分昔の奴ですね。多分、この会社に入る前ですね。」
培句「そうだな。君が入社する5年前だからな。」
宇多「あの頃、もう少しちゃんと就活していれば・・・。(小声)」
培句「なんか、言ったか?」
宇多「いえ、それより、この頃苑自の研究室が変なんですよ。」
培句「変なのは、いつもだろう。使ってる奴が変な奴なんだから。」
宇多「それはそうなんですけど、そういうのじゃなくて、なんか・・こう・・物音がするんですよ。」
培句「どんな?」
宇多「機械が動いたりするような、まるで仕事をしているみたいな音がするんですよ。」
培句「仕事?あいつがっ?何ヶ月ぶりだろうな。」
宇多「そうですね、かれこれ4ヶ月ぶりぐらいですね。」
培句「本当か。いやあ、この所仕事をしてないみたいだから、てっきり辞めちゃうんだと思ってた。さっそく、様子見に行ってこよう。」
研究室前
コンコン
宇多「苑自君〜?」
培句「苑自〜?」
宇多「返事がないですね。」
培句「でも、鍵開いてるぞ。」
宇多「入りますか。」
培句「そうするか。」
ガチャツ
苑自「あっ、入っちゃだ・・・」
培句「うわあああ。」
苑自「あーあ、だから入っちゃ駄目って言ったのに。間に合わなかったけど・・・」
宇多「なっ何が起こったんだ。」
苑自「あっ、部長駄目ですよ。勝手に入っちゃ。」
宇多「入っちゃ駄目って、返事がないのに鍵が開いてるし、第一そんな危険なことしてるんなら、何か書いて貼っておくとか・・・。」
苑自「だから、そこに『入室禁止』の札をかけてるじゃないですか。」
宇多「ドアの内側にかけても意味ないだろ。外から分かるようにしなきゃ。」
培句「うーん。何があったんだ?」
宇多「あっ、社長気がつきましたか。あれっ?」
培句「どっ、どうかしたのか?」
宇多「さっきのアルバムの写真と同じ顔になってる!」
苑自「と、いうことは成功だ。」 宇多「苑自君、いったい何作ってたの?」
苑自「『ネンレノイド』っていう放射性物質です。」
宇多「ネンレノイド?何それ?」
苑自「この石から出る放射線を浴びると、細胞が変化して若返ったり老けたりするんです。」
宇多「すごいじゃないか。これが製品化できたら、億万長者だぞ。」
苑自「そうなんですけどね…」
宇多「あ〜あ。また、何かあるのかよ。」
苑自「いや、大した事じゃないんですけどね、ただ、放射線が出るのが調節できないんです。」
宇多「大した事あるよ。好きなときに使えないって事だろ。」
培句「おっ、おい2人とも。」
宇多「どっ、どうしました?」
培句「なんだか体に力がみなぎってたまらないんだ。ああ、もう我慢できない。契約取ってくる。」
バタンッ
苑自「行っちゃった。」
宇多「契約って、うちの会社に今いち押しの商品なんてないぞ。」
佐藤「あの〜、さっき20代ぐらいの若い男の人が平野さんを連れてどっか行っちゃったんですけど。」
宇多「ああ、あれ社長だよ。」
佐藤「えっ、どういうことですか?」
宇多「実はこれこれこういう訳で・・・。」
佐藤「なるほど、でもそれじゃあ役に立たないじゃないですか。」
宇多「そうなんだよなあ、どうする?」
苑自「しょうがないから、町外れの崖に捨てに行きますか。」
佐藤「でも、あそこって前に謎の爆発があったんじゃないんですか?」
苑自「まあ、町外れの崖だったら爆発ぐらいよくありますよ。」
宇多「いや、謎じゃない爆発でもそうないだろ。」
その頃、培句社長
培句「ですから、契約お願いします・・・お願いします・・・」
実業家「えっ?はあ、はい。分かりました。ここにサインすればいいんですか?」
培句「ありがとうございます。それでは、失礼します。」
バタンッ
秘書「社長。」
実業家「ああ。」
秘書「なぜ、あのような条件でご契約を?」
実業家「私だって、分かっているさ。しかし、あいつの顔を見て、しゃべりを聞いていると、体が金縛りにあって、気づいたら契約書に手が・・・」
秘書「しかし、いつもの社長ならあれぐらいの気迫で来ようが、なんなく追い返せるはずです。どこかお体が悪いのでは・・・。」
実業家「お前達の世代はもう知らないかもしれないが、あの顔を見たら、我々の世代は体から鳥肌が出るような言われがあるんだ。」
秘書「と、おっしゃいますと?」
実業家「私がこの会社を立ち上げる前、資金作りの為に、ある企業に勤めていた。」
秘書「存じております。」
実業家「そのとき、私のそうだな・・・2・3才下の後輩で『契約の韋駄天』と呼ばれている男がいた。その名の通り、相手の訳の分からないうちに契約を決めてしまい、韋駄天のような速さで去って行くというまるで出来のよい空き巣のような奴だった。」
秘書「妙な表現ですが、おそらく適切なんでしょう。しかし、その話とさっきの男とどのような関係が?」
実業家「さっきの男がそいつにそっくりだったんだ。まるで、本人のようだった。」
秘書「お言葉ですが、その噂の本人と、さっきの男が同じ人間とは思えません。第一、社長の2・3才下なら50代そこそこのはずです。さっきの男だったらどうみても20代そこそこ・・・。」
実業家「私だってそう思うさ、でもあのテクニックに、顔までそっくりときてるんだ。動揺しないほうがおかしいだろ。現に、お前もあいつに圧倒されて、奥から出て来られなかっただろう。」
秘書「なるほど・・・。」
ええ、長くなりましたので残りは後編となります。
次回は、野丸のメンバーがまた一騒動起こさせていただきます。