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犯罪史上最も得をしない犯罪

前回、誘拐されたものの、野丸の経営状況の話をされた途端、覚醒してしまった。これから、この誘拐犯達はどうなってしまうのであろうか。トゥ ビー コンテニュードゥ・・・

あっ、今から始まるのか。


兄「ああ、ひどい目にあった。」

弟「この怪我のひどさを見せられないところが、小説のつらいところだ。」

培句「うーん。」

兄「おい、気がついたぞ。」

培句「おや、どうしました、その怪我?漫画みたいに体中に包帯を巻いて、そこら中に青あざを作って。」

弟「どうしたって、あんたに・・・」

兄「いいよ、もう。」

弟「だって、兄貴。」

兄「いいんだよ、これ以上なんか言って飛びかかって来られたら、身がもたない。ところで、おっさんの会社の住所は?」

培句「えーと、茄茂泣町木連3丁目真田野{まだの}ビル一階有限会社野丸。」

兄「なるほど、おい手紙書いたか?」

弟「うん。」

兄「さっき、聞いた住所書いとけ。」

弟「こいつはなかなか名文だよ。」

兄「別に、脅迫状で名文書かなくていいんだよ。住所書いたか?」

弟「うん。」

兄「じゃあ、それポストに入れて来てくれ。俺は、見張ってるから。」

少し時が経って、有限会社野丸では

宇多「あれ、みんな何やってるの?」

佐藤「焼き芋ですよ。」

宇多「この、桜が咲いてる時期に、随分季節感の無いことやってるな。」

佐藤「処分する書類が沢山あったのと、スーパーで芋の特売やってたのが重なったんで、書類を燃やして焼き芋って事に。」

苑自「しかしまあ、本当に芋ってのはいいですね。」

宇多「どうした?急に語り出して。」

苑自「だって素晴らしいじゃないですか。腹に溜まるし、それでもって安く手にはいるし、焼けばうまいし。」

宇多「どうして、突然、戦時中みたいな了見になるんだよ。それに、どうでもいいけど、なんだか火が弱くないか?」

佐藤「もうちょっと、燃やしたいんですけどもう書類がなくて。」

郵便配達員「すいません、もしかしてあのビルの会社の方達ですか?」

宇多「ええ、そうですけど。」

郵便配達員「あの、これ印鑑かサインがいるんですけど。」

宇多「はいはい、これでいいですか?」

郵便配達員「はい、どうもありがとうございました。」

宇多「どれどれ、なんだこれ重いな。苑自君・・・、うわあああああ、何燃やしてるの?」

苑自「さっき来た手紙とかですよ。」

宇多「いや、そうじゃなくてなんで燃やしてるの?」

苑自「いいじゃないですか、どうせここに来るのは、請求書ぐらいなんですから。」

3日後 例のアジト

兄「来ないな。」

弟「来ないね。」

兄「なあ、あのおっさん本当に社長か?」

弟「知らないよ、兄貴が言ったんだよ。」

兄「でも、社長が誘拐されたの知ったら警察に電話ぐらいするだろ。こんな小さな町で、誘拐があったらニュースぐらいなるだろおお。」

弟「駄目だよ、大きな声だしちゃ。あのおっさんが覚醒しないように、食べたいだけ食べさせてるから、俺達ろくに食べてないんだから。」

兄「でも、なんだかイライラしてきてしょうがねぇんだよ。なあ、おっさん。あんた、そんなに大切にされてないんじゃないか?」

弟「あ、兄貴そんな事言って覚醒したら・・・。」

兄「うるせえよ、イライラしてんだからなんか言うな。」

培句「(心の声)なんだ、この人達?覚醒?何、言ってるんだろう?だいたい、ひとつの会社の社長だよ、大切にされてない訳ない。仮に、会社の奴らが見捨てたところで、家族もいるわけだし、多分何らかの作戦で・・・。」

このとき、培句社長の記憶のスイッチが入った。

培句「(心の声)そういえば、妻はこの頃カルチャーセンターに夢中で、『あなたが居なくても大丈夫』が口癖だった気がする。弟の鑓栗は・・・、『俺も苦しいから兄さんに何かあっても、助けられないよ。』が口癖だった。子ども達はあてにならんし…でも、会社の連中は私が居なくなったら・・・。宇多君は・・・駄目だな。奥さんの実家が漬け物屋って言ってたから、そこを継ぐだろうし。苑自のバカは・・・。あいつ、腕だけは確かなんだよな。雇い先はいくらでもあるし、裏でなんかやってるらしいから、生活に困らないんだよな…佐藤さんは・・・多分、内木さんのところに嫁に行くから、食べていけるな。平野さんは・・・無理だな。あの人どうやって生きてるのかが分からないし…。あれ、もしかして私が居なくても誰も困らないんじゃ…ていうか、もし私が死にでもしたら保険金がいくらかあいつらにはいる訳だから、どっちかっていうと得・・・。あああああ。」

兄「うわあああ、また覚醒したあああ。」

弟「だからいったじゃん、だからいったじゃん。」

培句「冗談じゃねえよおおお。なんで、私が死んであいつらが得するんだよおおお。こうなりゃ、意地でも生き延びてやるからなあああ。あああああ。」

弟「うわあああ、また飛びかかって来たあああ。」

1時間後

兄「怖かったよお、怖かったよお。」

弟「兄貴、このおっさん寝てるすきに送り返そうよ。」

兄「と、言うと?」

弟「前に手紙を送った時、住所が分かったから。寝てる間に会社に置いて来ちゃおう。」

兄「そうだな。」

その頃 野丸

宇多「うっぷ。」

苑自「部長、まだへばつちゃ駄目ですよ。」

宇多「後、何本だ?」

佐藤「買って来たのが10本、宅配で届いたのが25本、合計35本です。」

宇多「まだ、そんなにあるのか。」

苑自「焼き芋もこれだけあると、憎いですね。もっと、手伝ってくれる人いないですかね?」

佐藤「そういえば、社長が食べてないんじゃないんですか?」

宇多「そういえばそうだな。苑自君、ちょっと呼んできて。」

苑自「さっき、社長室みたらいませんでしたよ。」

宇多「そう?どこか行くって言ってたっけ。」

苑自「知らないですよ、だいいち会ってないんで。」

佐藤「私もです。」

宇多「えっ、ちょっと待ってよ。じゃあ、最後にあったのいつ?」

苑自「出張の前の日です。」

佐藤「私もです。」

宇多「じゃあ、ここにいるみんな5日間、社長を見てないの?」

苑自「そういえば、気づかなかったですね。社長、影薄いし。」

宇多「・・・、さがせええええ!」


弟「兄貴、ここだよ。」

兄「そうか、じゃあ起きないように、そっと運べ。」

弟「ヨイショっと。ここのソファーに寝かしとこう。」

兄「あーあ、くたびれた。」

30分後

宇多「社長、見つかった?」

苑自「いいえ。」

佐藤「私もです。」

宇多「本当にどこいっちゃんたんだろう?あれ?」

佐藤「どうしました?」

宇多「なんか、社長ソファーで寝てるんだけど。」

苑自「もしかして、ずっといたのに、私達が気づかなかっただけなんじゃ…」

宇多「いや、まさかそんな・・・。」

その後、この事件は培句社長の神隠しとして、語り継がれている。



ええ、今回も無事書き終わりました。

感想お願いします、相変わらず作者が寂しがるので・・・

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