幼馴染みで婚約者となった彼には捨てられてしまいましたが、その後特技が花開き明るい未来を作ってくれました。
幼い頃から縄跳びが得意だった私も、年頃になると婚約者を作ることを求められ、近所で親しくしていた幼馴染み的存在の彼アチュバールと婚約した。
お互いのことを知り尽くしている彼と私ならきっと上手くやっていけるはず。そう思っていたからこそ、彼と歩む道を選んだのだ。そして、彼もきっと同じ思いでいてくれているのだろうと考えていた。婚約を決めるまでの間、幾度も話し合いを重ねたけれど、その中で彼が否定的なことを言ったことはなかったから。だから私たちは同じ方向を見つめているのだと理解していた。
……だがそれは間違いだった。
「俺、お前とは生きていかねぇわ」
ある日のこと、アチュバールは急にそんなことを言ってきて。
「お前との婚約は破棄な。じゃ、そういうことで。ばいばい。もうお前と会ったり喋ったりすることはない、そのつもりだから。永遠にさよならだからな」
私たちの関係は突如終わりを迎えてしまったのだった。
同じ道を行けるものと思っていた。
同じ未来を見ていると信じていた。
けれどもそれは間違いで、そんなものは所詮幻想でしかなかった――すべてはただの私の思い込みだったのだろう。
私がそう信じたかった。
私がそう思いたかった。
結局はそういうことで、ただそれだけのことだったのだろう。
とはいえ、アチュバールのいない未来のことなんて考えてみたことはなかったので、胸に残ったのは主に戸惑いの色であった。
――そんな時、それは起こった。
「ねぇ、せっかくだし、この縄跳び大会出てみない?」
アチュバールとは別の関係性だが幼馴染みのような関係であった女友達からそんな風に提案されて。
「景品がすごいのよ! なんとなんと、豪華ランチ券一年分!」
「え、ええ……確かにすごいと思うわ」
「でしょでしょ! でも、あたしは縄跳びとか得意じゃないからー……ね? 出てくれない? おねがーいっ」
流されるように出場した縄跳び大会にてまさかの優勝を果たした私は、縄跳び競技で世界大会にも出場することとなる。で、そこでも二位になった。それによって一躍時の人となり。ただの婚約破棄された女でしかなかった私は、大会を経て、あっという間に価値のある女と見られるようになった。
そんな時、唐突に家へやって来たアチュバールに「やり直さないか? 今なら上手くいく、そんな気がするんだ。だから……頼みたいんだ。改めて……婚約してください」と言われたけれど、丁寧にお断りした。
「永遠にさよなら、だったのでしょう。だから私はその通り、貴方とはもう二度と関わらないわ。お互い幸せになりましょう」
はっきりそう言ってやってぽかんと口を開けている彼を見るのは痛快だった。
ちなみに、だが。
縄跳び大会の景品だった豪華ランチ券一年分は友人に贈った。
それから数年が経ち、私は、仕事の関係で知り合った青年と結婚した。
彼はどんな時でも私の話を聞いてくれる温かい人。
だから彼といる時は常に笑顔で過ごせる。
ちなみに今でも縄跳びはしている。
毎朝、二十種類くらいの飛び方を少なくとも百回ずつは行うようにして、大会がない時期でも身体がなまることがないよう気をつけている。
大会への参加数は以前よりは減っているけれど、縄跳び自体への想いが消えたわけではないので、これからも縄跳びに関する活動は続けていくつもりだ。
一方アチュバールはというと、怪しい女性に声をかけられた怪しい投資によって資産をほぼすべて失ってしまったそうで、先日自ら死を選んだらしいという噂を聞いた。
彼がどんな人生を歩んでいたのかは知らないけれど。
晴れやかで幸せに満ちた未来を掴むことはできなかったようである。
◆終わり◆




