翼のない兵士
神様が歩いていると道端で一人の兵士に出会った。
彼は泣いていた。
悔しくて、悲しくて、それでいてどうしようもなくて。
神様はそれは全て分かっていた。
だけど、理解が出来なかった。
「何故、泣いているのですか」
「情けないからです」
「情けなくても生きているではありませんか」
「皆に合わせる顔がありません」
そう言って泣き続ける。
神様は兵士を改めて観察した。
まだ若い。
子供と言ってもいいだろう。
胸元に手紙を入れている。
家族からの手紙だ。
ポケットにお箸を入れている。
お守り代わりだろうか。
きっと、このお箸が守ってくれたのだろうと神様は思った。
お箸が残っているなんて素敵だ。
これでまだご飯が食べられる。
食べてもいい。
まるで生きていていいよって言ってくれているようではないか。
それなのに兵士は泣き続けている。
翼に出来た穴を見て泣き続けている。
神様は飛行機の燃料を見た。
翼さえあれば故郷に帰れるだろうと思った。
だから神様は言った。
「直してあげるよ」
兵士は泣きながら言った。
「本当ですか?」
「うん。いいよ」
神様はそう言って飛行機を直した。
あっさりと。
兵士は涙を流して喜んだ。
その顔を見て神様は少し迷った後に伝えた。
「これで帰れるよ」
兵士はそう聞いて息を飲んだ。
だけど、何も言わなかった。
「ありがとうございました」
翼の直った飛行機は空を舞う。
だけど、向かう先は目的地だった。
故郷ではない。
神様は見送りながらぽつりと呟いた。
「変な人」
***
何となしに神様は兵士の故郷へと向かった。
丁度、兵士達が帰って来たところだった。
「立派な子」
兵士のお母さんがそう言った。
心にも思ってもいない言葉を吐いた姿を見て神様はぽつりと呟いた。
「変な人」




