面影
面影
忘れられない人がいる
真昼の光に薄められた月のように
そこに在っても姿は見えない
私の時間はひとり歩き出し
もう2度とまみえることはない
過ぎ去ってしまった時間の流れを
確かに私たちは共有していた
お互いの中にお互いを孕み
その姿を透かしてでしか
未来を見ることが出来なかった
いつか遠い昔に置き去りにして
忘れてしまったはずなのに
ふとした弾みに名前がこぼれる
木漏れ日が気まぐれに照らすように
その面影が浮かび上がる
忘れられない人がいる
今がどんなに光で満ち溢れようとも
そこに在るのはかつての私
消えることのない私の反映
ただ私で満たされた時間の結晶