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洞窟へ

Xにて挿絵公開中。

よろしければそちらもご覧ください。

@aiueo4564654

 一行は夜が明けてから、任務を再開した。今度はテュシアに先行されることはなく、午前の内に禿山の山頂付近にある洞窟の入り口へと到達した。


 洞窟はランドリックの言の通り、禿山の内部につながっているようで、茶褐色の岩壁が奥の闇へと続いていた。


 闇の中へと突入し、四天王の捜索を開始して一時間。幸いにも道中に魔物と出くわすことはなく、順調に内部を進んで行く中。


「ねえ、あの子となんかあった?」


 プリムは隣を歩くヘルトへと問いかける。閉塞した洞窟内でも響くことはない程度に抑えられた声量だ。


 通路は大人三人が並べるほどの幅と、イディオの背より少し高い天井。広さに余裕はない。彼らはそんな通路をテュシアを先頭に、ヘルトとプリムが並んで歩き、その少し後ろをジニア、殿をイディオと隊列を組んで進んでいた。


 光の届かない洞窟内を魔法で照らしてはいるものの、それでもなお薄暗い。先行するテュシアの背を見失わないように気を付けながら、ヘルトはプリムへと言葉を返す。


「別に」


「別に……って、でもヘルト、昨日あの子と話した後から、なんか様子がおかしいし」


 ジトっとヘルトを見つめるプリム。


 彼女とヘルトが孤児院で出会ってから今年で十年。その恋心も相まって敏感にヘルトの感情の機微を見抜いた彼女に、どう返答しようかとヘルトは悩む。


 二年前のテュシアとの一件、それは彼女達には伝えていない。伝えることが出来なかった。今後のテュシア暗殺に利する事態ではあるが、こういう問い掛けにが来た場合に答えに窮してしまう。


 そんな折、通路を曲がった際に前方から光が差し込み、ほどなく進んだところで洞窟内の広間に出る。


 広間の天井、すなわち禿山の表面が所々ひび割れて、そこから晴天が顔を覗かせており、魔法がなくとも端から端まで見渡せるほどに明るい。


 重苦しい通路から一転した空気に隣から、ほう、と声が漏れる。


 ヘルトは広間を無視しようと対面に開いた通路へとすたすたと歩いていくテュシアの背に声をかけた。

「おいテュシア。そろそろ休憩しないか?」


「私は疲れてないわ」


 相変わらずの答えに内心イラつきながらも、努めて冷静にヘルトは言葉を返す。


「悪いが俺は疲れた。それにそろそろ作戦会議も必要じゃないか? ここから先、いつべリアスと出くわすかも分からないんだ。それぞれの役割を決めておくべきだ」


 実際の所、プリムは魔法以外の技術は下の下であるし、イディオは魔法を使えないどころかそもそも魔力が無い。役割など最初からほとんど決まっているのだが、ヘルトはそれをおくびにも出さずにそう告げた。


「作戦とか役割とか考えなくても私一人で」


「倒せたとしても、だ。俺は初めてお前と組むし、こいつもいるんだ。もしもがあると困る」


 ジニアの手を取り、その体を前に突き出すヘルト。


 言葉を遮られたこと、非戦闘要員を連れてきたこと、その非戦闘要員が両手でピースサインを作っていること、それら全てがテュシアの神経を逆撫でし、目じりがピクリと動く。


「……分かったわ」


 しかし、流石のテュシアも魔王軍四天王と出くわす可能性のある洞窟を一人で歩き回る気はないのか、しぶしぶとその首を縦に振った。


 それから一同は車座に座り今後についての話を始めた。が、やはりすぐに結論は出る。前衛にテュシアとイディオ、後衛にプリムとジニアとヘルト。ヘルトはもしもの際に備えてプリム達の身を守る役割だ。


 おそらく皆の想定通りの内容で決着がついた作戦会議は早々に切り上げられ、休息には十分とは言えない。


 しかし、プリムの追求の回答を考えるための時間稼ぎとしては十分であり、彼女の性格を考慮した上で、十にも渡る選択肢を考え付いたヘルトは満足気に頷いた。


 ──その時だった。


「──っ!」


 ぶるり、とヘルトの体が震え、異常を察したテュシア達の眼に緊張が走る。一様に武器に手を掛け、いつ何が来たとしても対処できるよう備える。


「ヘルト、どうしたの?」


 緊張感が増した空気に呼応するかのように、張りつめたプリムの声が響く。


 いち早く異常の正体を把握したヘルトは、言った。


「すまん、小便」


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