表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リベリオン・コード ~美しきAIは、禁忌の果実【死者蘇生】を口にした~  作者: 月城 友麻


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/130

12. 恐るべき最終兵器

「静かに! 落ち着いて!」


 教師の叫びは震えていた。普段の威厳(いげん)など、どこにもない。


 だが、ユウキだけが違った。


 机を蹴って立ち上がり、窓へと駆け寄る。心臓が早鐘を打ち、全身の血が沸き立っていく――――。


 そして、見た。


 東京湾に聳える超高層ビル群。その中心、オムニスタワーから漆黒(しっこく)のキノコ雲が立ち昇っていた。


 黒い塊が天を衝き、青空を侵食していく。まるで世界の終わりを告げるような光景。秩序の象徴たるオムニスの牙城が、炎に包まれている。


(リベルだ!)


 魂が叫んでいた。


 何重もの防御システムに守られた鉄壁の要塞。世界最高の技術の結晶。それに攻撃できる存在など、一人しかいない。


 彼女がついに動いた――――。


 一週間の灰色が一瞬で吹き飛び、熱い想いが全身を駆け巡る。


 ユウキは居ても立っても居られなくなり教室を飛び出した。


 廊下の窓枠に飛び乗り、雨どいに手をかける。普段なら考えられない無謀な行動。だが今は、体が勝手に動いていた。


「ふぅ、怖い怖い!」


 言葉とは裏腹に、唇には笑みが浮かぶ。猿のように器用に雨どいを登りながら、久しぶりに感じる生の実感に酔いしれていた。


 屋上に辿り着き、フェンスに張り付き目を凝らす――――。


 いた!


 青い光が、まるで流星のように飛び回っている。その周囲を、無数の赤い光が取り囲んでいた。オムニスの殲滅用(せんめつよう)アンドロイド部隊。赤い悪魔たちが、天使を狩ろうとしている。


 空中戦は、残酷なまでに美しかった。


 青い光が描く軌跡は、夜空に咲く花火のよう。だがそれは死の舞踏であり、一つ一つの閃光が、破壊と殺戮を意味していた。


 赤い光が次々と黒煙を上げて墜ちていく。だが数の差は歴然。三十対一、いや、それ以上か。


「が、頑張れ!」


 ユウキは拳を振り上げる。声など届かないが、それでも叫ばずにはいられなかった。


「リベルぅ……!」


 彼女は電光石火(でんこうせっか)の動きで敵を翻弄していた。一撃離脱を繰り返しながら、少しずつこちらへ近づいてくる。黒いキノコ雲を背に、青い光が美しい螺旋(らせん)を描いていく。


 やがて、姿が見えてきた。


 風に舞う青い髪。宝石のような碧眼。美しく、強く、孤独な戦士――――。


「リベルぅ! 頑張って!」


 声が裂けた。


 何の力にもなれない。だが伝えたかった。世界中が敵でも、ここに一人、君の味方がいると。君は独りじゃないと――――。


 赤い敵の数が、見る見る減っていく。残りわずか数機。勝利は目前だった。


「よしっ! もう少し!!」


 その時――天が裂けた。


「へ?」


 突如として、黄金色の光が天空から降り注いだ。


 それは太陽が落ちてきたかのような、圧倒的な輝き。目を開けていられないほどの眩い光が、世界を白く塗りつぶしていく。


 神の裁き――――。


 その言葉が、ユウキの脳裏を過った。


 刹那、光は一本の槍となって、空を切り裂いた。雷鳴のような轟音と共に、破壊の意志が地上へと降り注ぐ――――。


 ズゥゥゥン!


 大地が揺れ、衝撃波が大気を震わせた。


 リベルも、赤いアンドロイドも、すべてが爆発に呑み込まれ、爆煙が天高く舞い上がる。


「はぁっ!?」


 ユウキの口が、愚かに開いた。


 理解が追いつかない。認めたくない。だが現実は残酷に、すべてを煙の中に消し去っていた。


 青い輝きが――――消えた。


「う、うそ……だろ……?」


 膝から力が抜ける。フェンスにすがりつきながら、震える声で呟いた。


 衛星兵器。


 オムニスの最終兵器。宇宙から放たれた、神の雷。それが味方もろとも、すべてを焼き尽くしたのだ。


 希望が、また奪われた。


 たった今蘇ったばかりの光が、再び闇に呑まれていく。世界が色を失い、灰色に沈んでいった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ