【29話】ドラゴンの襲撃
生徒会メンバーの五人は、王都の大広場に来ていた。
そこではクリムゾンドラゴンが暴れ回っている。
「あれって!」
私はクリムゾンドラゴンの首元へ指をさす。
そこには呪いの首飾りがかけられていた。
つまりクリムゾンドラゴンも、誰かの命令に操られているこということになる。
「その調子です! もっとめちゃくちゃに壊してしまいなさい!」
クリムゾンドラゴンの足元から声が聞こえてきた。
黒い髪をオールバックにしている男だ。
黒いローブを着ているその男は、嬉しそうにドラゴンへ命令していた。
手には黒い光を放っている杖を持っていて、クリムゾンドラゴンへそれを向けている。
あの黒い光……呪いの首飾りと同じ光だ。
もしかしたらあれが、呪いの首飾りの制御装置なのかも。
「みなさん聞いてください! クリムゾンドラゴンの足元にいる男が持っている杖! たぶんあれが呪いの首飾りの制御装置です!」
「ということは杖を壊せば、ドラゴンが止まるのだな」
アルゼの声に私は頷く。
制御装置が壊れたら、呪いの首飾りの効果を消えるはず。
そうすれば、クリムゾンドラゴンの洗脳も解けるだろう。
「おや? 見覚えがある人たちがいますね?」
黒いローブの男がこちらを見てきた。
みなを代表するようにして、アルゼが一歩前に出る。
「クリムゾンドラゴンを操っているのは貴様だな?」
「確信を持っている瞳……ごまかしは無駄ですね。ご名答。この私――デイビスがクリムゾンドラゴンを操っています」
「今すぐに破壊行為をやめさせろ」
「それはできませんね。この国を破壊するのが私の目的ですので」
「ならばその杖を、叩き折ってやるまでだ!」
「そんなことをさせるとお思いですか」
フッと笑ったデイビスが、クリムゾンドラゴンへ顔を向ける。
「この人たちを殺してしまいなさい!」
「キュオオオオオ!!」
クリムゾンドラゴンの激しい雄叫びが響く。
こちらを睨みつけている瞳には、強い殺気が宿っている。
そこへ、三種類の魔法が激突する。
セシル、ルーファス、シンシア――三人が魔法を放った。
「ここは僕たちに任せて二人はあいつをやってきて!」
「悔しいですがおいしいところを譲ってあげましょう。その代わり、必ず目的を果たしてきてください」
「カトレア様! どうかご無事で!」
三人の力のこもった言葉に、私とアルゼは頷いた。
クリムゾンドラゴンの横をすり抜けて、デイビスのところへ向かっていく。
剣を抜いたアルゼが、デイビスの杖に向けて剣を振り下ろす。
しかしデイビスの杖に、その剣は受け止められてしまう。
「いい腕前ですが、その程度の攻撃ではこの杖は壊せませんよ。残念でしたね」
「残念なのはお前の頭の方だ。……頼んだそ! カトレア!」
「はい!! 【エアブレイド】」
杖に向けて風の刃を放つ。
それはデイビスの持っている杖を、いとも簡単にスパッと両断した。
「な……! この杖を両断するとはなんという威力だ!」
デイビスから驚愕の声が上がる。
それと同時。
クリムゾンドラゴンの首元にあった呪いの首飾りが、粉々に砕け散った。
「キュオオ」
小さく叫んだクリムゾンドラゴンは、大きな翼をはためかせる。
宙に上がり、かなたへと飛んでいった。
「クソッ! これでは私の復讐が――」
アルゼが剣の柄で、デイビスのみぞおちを突き上げた。
うずくまった彼は、そのまま気を失った。
セシル、ルーファス、シンシアがこちらへ駆け寄ってくる。
三人とも大きなケガはしていない。
みんな無事でよかった。
私は大きく安心した。
気を失っているデイビスを衛兵に引き渡してから、生徒会メンバーの五人は学園に戻った。
******
それから一週間。
世界は滅亡することなく、今も以前と変わらない日々が続いている。
結局のところ、私は今でもこの裏ルートというものがよくわかっていない。
でも、ずっと続いてほしいと思っている。
シンシア、ティア、アルセ、ルーファス、セシル――みんなと過ごす日々はとっても楽しい。
だから私は、ハッピーエンドもバッドエンドも望まない。
私が望むのはただ一つ! 現状維持だけ!
ということで、よろしくね。
頭の機械音声に呼びかけると、テレレレン♪と効果音が鳴った。
これにて完結です!
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました!
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それではまた、次回作でお会いしましょう!




