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【24話】ダンスの誘い


 その日の昼休憩。

 私はシンシアとティアに挟まれながら、いつものように庭園のベンチに座って昼食を食べていた。

 

「カトレア様。お願いしたいことがあるんです」


 シンシアの声色は真剣。

 眼差しはまっすくだ。

 

「来週のダンスパーティー、私と一緒に踊ってくれませんか!」


 ダンスパーティー……あぁ。そういえばこの学園には、そんなイベントがあったわね。


 リエルト魔法では、大ホールを使って年に一度ダンスパーティーが開かれる。

 かなりのビックイベントで、多くの生徒が参加するらしい。

 ……という話を先日担任講師がしてくれたのだが、すっかり頭から飛んでいた。

 

 これも『感謝の日』と同じ理由。

 前世の私はダンスなんてキラキラしたものとは、無縁の生活を送っていたからだ。

 

 うーん……ダンスかぁ。興味ないなぁ。

 

 あ、でもパーティーってことはおいしい食べ物飲み物がいっぱい出るはず!

 それなら出てみたいかも!

 

「いいわよ」

「ありがとうございます!」


 ガッツポーズしたシンシアは、瞳をギュッと閉じた。

 幸せを噛みしめているかのように、めちゃくちゃに喜んでいる。

 

 どうしてそんなに喜んでるんだろ? 踊るのが好きなのかな?


「あの!」


 今度は反対側のティアから声がかかる。

 ぐいっと身を乗り出して、緊張した顔で私を見つめる。

 

「カトレア様、私とも踊ってくれませんか?」

「え、うん。いいわよ」


 シンシアの誘いだけ受けるなんて、そんなひどいことはしない。

 ティアの誘いも、もちろん受ける。


「……はい?」


 シンシアも身を乗り出した。

 

 そして、ティアをまっすぐに見つめる。

 鋭い視線だ。


「カトレア様は私と出るんですけど。話聞いてました?」

「ずっと同じ相手と踊らなきゃいけないなんて決まり、どこにもありませんよ」


 ティアも負けじと見つめ返した。

 

「あはははは」

「うふふふふ」

 

 視線を交わす二人は笑顔になった。

 とっても仲良しみたいだ。

 

 笑い声がわざとらしいし目が笑っていないような気がするけど、それはきっと気のせいだろう。



 放課後。

 生徒会室に入った私に、セシルが話しかけてきた。

 

「今度のダンスパーティー、僕と踊ってよ!」

「抜け駆けはずるいですよ!」

 

 ルーファスも慌ててやってくる。

 

 抜け駆け? なんのこと?

 

 不思議に思っていると、

 

「私とも踊ってくれませんか?」


 ルーファスも同じことを言ってきた。

 

「ルーファスさぁ、まともにダンス踊れるの?」

「失礼な。ダンスのたしなみくらいありますよ」

「そういう意味じゃないよ。踊るときはカトレアと手を繋いで、体をくっつけるんだよ。大丈夫? 照れてまともに踊れないんじゃない?」

「そ、それは……」


 ルーファスの顔が真っ赤になる。

 プルプル震えている指先で、メガネをクイっと上げた。

 

「二人とも……俺を差し置いて話を進めてもらっては困るな」


 アルゼまでもが、ここへやってきた。

 

「もちろん俺とも踊ってくれるよな?」


 もちろん、ってどう意味?

 私まだ、踊る、なんて一言も言ってないんだけど?

 なんで決定事項なの?

 

 というかそもそも、なんでみんなそんなに私と踊りたいんだろ。

 

 シンシア、ティア、生徒会の男子メンバー。

 彼らはなぜかダンスの誘いをしてくる。

 

 私と踊ると、ご利益的ななにかがあったりするのかな?


 なんてことを考えていたら、いつの間にか三人にじーっと見つめられていた。

 私の答えを待っているのだろう。

 

 ……どうしようかな。

 

 正直言うと断りたかった。

 攻略対象である彼らとは、関係を築きたくない。

 

 でもなぁ……。

 

 三人は三人とも、中々クセが強い。

 断ったら断ったで、面倒なことになりそうだ。

 

 すんなり諦めてくれるビジョンが、あんまり浮かばない。

 

 ……仕方ない。

 

 断る方が面倒くささそうと判断。

 不本意ではあるが、私は三人からの誘いを全て受けることにした。

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