【23話】シンシアと手作りチョコを作る
「お返しのチョコを買いたいのだけど、シンシアはどこのお店で買ったの?」
生徒会の仕事を終えてシンシアと校舎内を歩く私は、そんなことを聞いてみた。
今日は色んな人からチョコを貰った。
貰いっぱなしというのは気が引けるので、お返しをしようと考えている。
だから参考に聞いておきたかった。
「申し訳ございません。私のチョコは手作りなんです。お店で買っていないんですよ」
「すごーい! シンシアってチョコも作れるのね!」
「そんなに難しくはありませんよ。そうだ! それなら一緒に作りませんか?」
「いいの?」
「はい! 私、カトレア様と一緒にお料理してみたいので!」
「ありがとう! 助かるわ!」
大喜びでシンシアの話を受ける。
推しと一緒に料理とか最高すぎる!
むしろお礼を言うのは私の方なんだけど!
学園の週休日である明日に、シンシアの家にお伺いすることになった。
翌日。
私はシンシアの家――セルスタル男爵邸にお邪魔した。
「お待ちしていましたカトレア様!」
エントランスに出迎えてくれたシンシアを見て、私は固まる。
やばい……かわいすぎる!
出迎えてくれたシンシアは、なんとエプロン姿。
フリルとリボンがかわいらしい。
天使にしかみえなかった。
「あの……カトレア様?」
「…………あ! ごめんごめん大丈夫!」
衝撃的なまでのかわいい姿に、私は危うく気が飛んでしまいそうになっていた。
ふー、あぶないあぶない。
シンシアから借りたエプロンに着替えた私は、シンシアと一緒にキッチンに立った。
「カトレア様……とってもお似合いです! かわいい!」
私のエプロン姿を見たシンシアが、甘い声を上げる。
きっとお世辞で言ってくれているのだろうが、褒めてもらえれるのは嬉しかった。
シンシアに教わりながら、チョコレートを作っていく。
「カトレア様お上手! とっても筋がいいです!」
「シンシアの教え方が上手なのよ」
互いに褒め合いながら和やかな雰囲気で、料理の手を動かしていく。
特にトラブルもなく進んでいき、ついにチョコレートは完成!
うーん、差ができちゃったな……。
チョコレートは全部で五つ作ったのだが、完成度と大きさに結構な差ができてしまった。
初めて作ったからこんなものだろう。
さて問題はどう振り分けるかだが……一番できがいいのを上げる相手はもう決まっている。
「はい! シンシア!」
シンシアに一番出来がいいのを上げた。
推しである彼女に一番をあげるのは、当然のことだった。
「ありがとうございます! 一生大事にしますね!」
チョコを受け取ったシンシアは大喜び。
涙まで流している。
そんなに喜んでくれるなら、作った甲斐があったというもの。
とっても嬉しい。
二番目によくできたのは、ティアに上げることに決めた。
そして残るは、生徒会の男子メンバー三人だ。
うーん、どうしよ……。
別に優先順位はないしな……テキトーでいいか。
0.3秒ほど考えた結果、三人のぶんはテキトーに選んだ。
後日。
生徒会の男子メンバーは私からもらったチョコのできでマウント合戦を始めるのだが、それを私が知ることはなかった。