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【22話】いっぱいのチョコレートをもらう


 呪いの首飾りの一件から、数日後。

 教室の机に座っている私は、考え事をしていた。

 

 ロスルが操っていた高貴なる魂のメンバーの呪いの首飾りは、全て破壊に成功。

 操られていた生徒たちは、全員正気を取り戻した。

 

 これで事件は幕を閉じたのだが、私には引っかかっていることがある。


 呪いの首飾りによって操られていた人間は、呪いの首飾りを破壊すると正気に戻った。

 その際には、高貴なる魂のことを全て忘れていた。

 

 それは集団を洗脳していたロスルもそうだ。

 今の彼はなにも覚えていない。

 高貴なる魂を作ったことも、生徒たちを操っていたこともすべて忘れていた。


 ロスルも呪いの首飾りをつけていたということは、誰かに操られていたということになる。

 その人物が今回の騒ぎの黒幕だ。

 

 でも、調べようがない。

 唯一の手がかりであるロスルの記憶がないため、探りようがない。

 

 黒幕がこのままなにもしてこないといいけど……。

 

 そんなことを考えて難しい顔をしている私のところに、ティアがやってきた。

 

「どうぞ!」


 包みを私に差し出す。

 

「私にくれるの?」

「はい。今日は『感謝の日』ですから!」


 感謝の日……あー、カトレアの記憶にあったけなそんなの。

 すっかり忘れてたっけ。


 この国ではお世話になった人に、チョコレートをあげる習慣がある。

 それが今日――感謝の日。

 バレンタインデーとよく似たようなイベントだ。


 前世ではそういうキラキラしたものとは無縁の生活を送っていたものだから、なんにも気にしていなかった。

 

 あれ? でも確か感謝の日って、異性にチョコを上げる日よね?

 

 カトレアの記憶によればそうなっている。

 なんでだろう、と考えるも数秒で解決。

 

 あれか、友チョコとかいうやつ!

 

 学生のとき、バレンタインデーに女の子同士でチョコを交換しているのを見たことがある。

 きっとこの国の感謝の日も、そういう感じなのだろう。


「ありがとうねティア! 大事にいただくわ!」


 そう言って、包みを受け取ろうとしたとき。

 

 今度はシンシアが包みが差し出してきた。

 

「どうぞカトレア様!」


 包みを差し出したシンシアは、ティアを見やる。

 そこには、メラメラと炎が宿っていた。

 

「ティアさんには負けませんよ!」

「わ、私だって!」


 なになに? なんの勝負?

 

 二人がなんの勝負をしているかはわからないが、なんだが楽しそうな雰囲気だ。

 ほっこりする。

 

「二人ともありがとうね!」


 私は笑顔で、二人からの包みを受け取った。




 放課後。

 生徒会室に入ると、ルーファスが包みを差し出してきた。

 

「カトレア。あなたにはいつもお世話になっています。その感謝をしたくて、国で最高の腕を持つ菓子職人にチョコレートを――」

「はい、カトレア! 僕からのチョコレートだよ!」


 セシルの手が横から伸びてきた。

 手には包みを持っている。


「セシル……。あなた、なにを横入りしているのですか!」

「えー、だって長くなりそうだったしさ」


 二人がわちゃわちゃ言い合いを始める。

 相変わらず仲が良い。

 

 ここだけの話、二人はBでLな関係なんじゃないかと密かに私は疑っている。

 

「ありがとうございます!」


 二人からの包みを受け取る。

 攻略対象とは関係を持ちたくないけど、せっかくくれたものを断るのも気が引ける。

 

 それにチョコを無駄にするのはもったいないしね。


 二人のもとを離れた私は、自分の席へ向かった。

 そしたら、机の上がすごいことなっていた。

 

 え……なにこれ。


 机の上には、いっぱいの包みが乗っていた。

 それはもう、机が見えないくらいにぎゅうぎゅうになっている。

 

「どういうものが好きかわからなからな。手有り次第に買ってみたんだ」

 

 横からスッと登場したアルゼがそう言った。

 

 じゃあこれはチョコレートか……。なんだ、新手のいじめかと思ってびっくりしちゃった。

 

「ありがとうございます」

 

 安堵の息を吐いた私は、アルゼにもお礼を言った。

 

 アルゼは満足そうに微笑む。

 これで俺への好感度は上がったはず、とわけのわからないことを呟いた。

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