【21話】目的達成
ルーファスと同じように、銀色のネックレスを破壊したことでピンク髪の女子生徒も正気に戻っていた。
しかし二人とも、高貴なる魂についての記憶を綺麗に失っていた。
なにも覚えていないらしい。
うーん……ネックレスが関係あることは確かだよね。
「ロスル本人に事情を聞くしかないわね」
二人がおかしくなった原因は、銀色のネックレス。
そしてそれを渡したのは、責任者のロスルだ。
騒動を起こした本人に聞くのが、一番手っ取り早い。
私の言葉にアルゼ、シンシア、セシルが頷く。
みんなも同じことを思っているのだろう。
「あの……ロスル先生がどうかしたんですか?」
「あー……それはあとで」
ルーファスに聞かれるも、テキトーにごまかす。
事情を話すと長くなりそうなので、いったん後回し。
今はそれよりも先に、ロスルのところへ行かなきゃいけない。
ルーファスとピンク髪の女子生徒を残し、私たちは生徒会室を出る。
目指すは別棟の最上階の一室――高貴なる魂の活動場所だ。
そうするとすぐに、十人ほどの学生たちが近づいてきた。
彼らは全員、銀色のネックレスをつけている。
高貴なる魂の会員だった。
「ここは僕とシンシアで引き受けるよ。カトレアとアルゼは、ロスルのもとへ行って!」
セシルの言葉に、私とアルゼは頷く。
セシルとシンシアに任せて、この場を離れた。
目的地を目指して、全力で駆けていく。
別棟の最上階の一室――高貴なる魂の活動場所に、私とアルゼは入った。
そこにはメガネをかけた男性――ロスルがいた。
「貴様がこの騒ぎの元凶だな?」
「いかにも」
アルゼの言葉に、ロスルは隠すことなく答えた。
口元はニヤついている。
「私の人形たちの襲撃をくぐり抜けるとは、なかなかやるではないですか」
「人形? それってルーファス様たちのこと?」
私が睨みつけると、ロスルは小さく頷いた。
「そうです。彼らがつけている銀色のネックレス。あれは『呪いの首飾り』という魔道具です。対象者を意のままに操るという、素晴らしい力を持っている。しかし呪いの首飾りは、できたばかりでしてね。正常に動いてくれるか、試す必要があったのですよ」
「高貴なる魂を作ったのはそのためなのね!」
「えぇ。優秀な人形を集めるために作っただけにすぎません。私は彼らに『生徒会メンバーを襲撃しろ』という命令を出しました。それに対し彼らは、実に忠実に動いてくれた。襲撃は事態は失敗しましたが、実験は大成功です!」
大喜びしているロスルを、今度はアルゼが睨みつける。
「『魔力を高める』というのは、真っ赤な嘘だったのだな! ゲスな男め!」
「なんとでもお好きに言ってください」
ロスルが高笑いをする。
首元でなにかが揺れたのが見える。
あれは……銀色のネックレス!
ロスルも高貴なる魂のメンバーたちと同様、呪いの首飾りをつけていた。
「アルゼ。ロスルも呪いの首飾りをつけているわ」
「ということは、あれを破壊すればいいのだな」
「そういうことよ」
ルーファスやピンク髪の女子生徒と違って、ロスルは会話ができている。
なぜそうなっているかは不明だが、呪いの首飾りが悪さをしていることは確かだろう。
あれを壊せば、ロスルも正気に戻るはずだ。
「よし!」
アルゼが剣で斬りかかる。
「甘いですよ!」
ロスルは炎の剣を生成。
アルゼの剣を受け止めた。
「呪いの首飾りによって、私の力は増しているのです。そんな単純攻撃では倒せませんよ」
「馬鹿が。俺の狙いは攻撃ではない」
「【エアブレイド】」
私は風の刃を放つ。
アルゼの攻撃を防ぐことに集中していたロスルは、それを防げなかった。
ロスルの呪いの首飾りのチェーンが、風の刃によって断ち切られる。
私とアルゼはナイスコンピプレーで、目的を達成した。