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【17話】もう一度やり直そう!


(これはチャンスだ!)


 アルゼの瞳が光る。

 

 カトレアへの恋心が抑えられないアルゼは、ずっと復縁を迫ろうとしていた。

 しかし人気者である彼女の周りには、いつも誰かがいる。そのため、なかなか言い出すことができなかった。

 

 しかし今生徒会室にいるのは、アルゼとカトレアの二人だけ。

 やり直そう、と伝える絶好のチャンスだ。

 

 瞳を閉じたアルゼは、大きく深呼吸をして心の準備を整える。

 そして、カッと瞳を見開いた。

 

「もう一度やり直さないか!」

「……」

「やり直そう!」

「……」


 なんと、カトレアはスルー。

 二回も言ったのに、二回ともガン無視。

 

 アルゼには目もくれず、書類仕事を続けている。

 

 ボキッ!

 胸あたりから、心の折れる音聞こえた。

 

「……さすがに無視はひどくないか」

「私に言っていたのね。ごめんなさい、ひとりごとだと思っていたわ。それで、どんなご用なの?」

「やり直そう、と言っているんだ」

「はい? やり直すってなにを?」

「だからその……俺たちの関係をだ! もう一度婚約しよう!」


 アルゼには少なからずの勝算があった。

 自分でも言うのもなんだが顔立ちは整っているし、地位も高い。


 女性からすれば十分魅力的なはずだ。

 

 だから、

 

「ごめんなさい」


 と言われてしまったときには、ものすごく落ち込んだ。

 

******

 

 まさかアルゼに、「もう一度婚約しよう」と言われるとは思わなかった。

 ものすごくビックリだ。

 

 でもどうしてそんなことを言い出したんだろ……うーん。

 あ、そっか!


 ラジェンドラ公爵家は大きな権力を持っている。

 一度は婚約破棄したものの、やっぱりラジェンドラ公爵家との繋がりを惜しく感じたのだろう。

 それでアルゼは復縁を申し込んできたのだ。


 しかし私は、アルゼと復縁する気はない。

 裏ルートがどんなものかわからない以上、攻略対象と結ばれたら断罪されるかもしれない。

 

 だから私は、アルゼを含む攻略対象とは関係を持たないと決めている。

 

「……それは、俺が嫌いということか?」

 

 アルゼが今にも死にそうな声で聞いてきた。

 

「そういう問題じゃないわ」

 

 ただ単に、断罪されたくないから断っているだけだ。

 好きとか嫌いとか、そういう問題じゃない。


 なんか、めっちゃ落ち込んでるんだけど……。

 励ました方がいいのかな?

 

 アルゼがこうなったのは、たぶん私のせいだ。

 罪悪感を感じてしまう。


「アルゼって、とってもかっこいい見た目をしているわよね! あなたみたいな美丈夫、見たとないわ!」


 とりあえず外見をべた褒めしてみる。

 

 そうしたら、落ち込んでいたアルゼの表情に光が灯った。

 

「そんなにも俺の外見を褒めてくれているということは、あとは内面を磨けばいいのだな!」

「……あぁ、うん」


 内面? 磨く?

 どういうこと?


 なに言ってるかよくわかんないけど、テキトーに頷いておいた。

 せっかく元気になったのに、水を差したくはない。


「ありがとう! これで道が見えた!」

「……そう。頑張ってね」


 道なんてないけど、いったいなんのこと?

 普通の人には見えないものが、アルゼには見えているの?

 

 苦笑いで返事をするも、意味不明な言葉に私はひたすら困惑していた。

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