【17話】もう一度やり直そう!
(これはチャンスだ!)
アルゼの瞳が光る。
カトレアへの恋心が抑えられないアルゼは、ずっと復縁を迫ろうとしていた。
しかし人気者である彼女の周りには、いつも誰かがいる。そのため、なかなか言い出すことができなかった。
しかし今生徒会室にいるのは、アルゼとカトレアの二人だけ。
やり直そう、と伝える絶好のチャンスだ。
瞳を閉じたアルゼは、大きく深呼吸をして心の準備を整える。
そして、カッと瞳を見開いた。
「もう一度やり直さないか!」
「……」
「やり直そう!」
「……」
なんと、カトレアはスルー。
二回も言ったのに、二回ともガン無視。
アルゼには目もくれず、書類仕事を続けている。
ボキッ!
胸あたりから、心の折れる音聞こえた。
「……さすがに無視はひどくないか」
「私に言っていたのね。ごめんなさい、ひとりごとだと思っていたわ。それで、どんなご用なの?」
「やり直そう、と言っているんだ」
「はい? やり直すってなにを?」
「だからその……俺たちの関係をだ! もう一度婚約しよう!」
アルゼには少なからずの勝算があった。
自分でも言うのもなんだが顔立ちは整っているし、地位も高い。
女性からすれば十分魅力的なはずだ。
だから、
「ごめんなさい」
と言われてしまったときには、ものすごく落ち込んだ。
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まさかアルゼに、「もう一度婚約しよう」と言われるとは思わなかった。
ものすごくビックリだ。
でもどうしてそんなことを言い出したんだろ……うーん。
あ、そっか!
ラジェンドラ公爵家は大きな権力を持っている。
一度は婚約破棄したものの、やっぱりラジェンドラ公爵家との繋がりを惜しく感じたのだろう。
それでアルゼは復縁を申し込んできたのだ。
しかし私は、アルゼと復縁する気はない。
裏ルートがどんなものかわからない以上、攻略対象と結ばれたら断罪されるかもしれない。
だから私は、アルゼを含む攻略対象とは関係を持たないと決めている。
「……それは、俺が嫌いということか?」
アルゼが今にも死にそうな声で聞いてきた。
「そういう問題じゃないわ」
ただ単に、断罪されたくないから断っているだけだ。
好きとか嫌いとか、そういう問題じゃない。
なんか、めっちゃ落ち込んでるんだけど……。
励ました方がいいのかな?
アルゼがこうなったのは、たぶん私のせいだ。
罪悪感を感じてしまう。
「アルゼって、とってもかっこいい見た目をしているわよね! あなたみたいな美丈夫、見たとないわ!」
とりあえず外見をべた褒めしてみる。
そうしたら、落ち込んでいたアルゼの表情に光が灯った。
「そんなにも俺の外見を褒めてくれているということは、あとは内面を磨けばいいのだな!」
「……あぁ、うん」
内面? 磨く?
どういうこと?
なに言ってるかよくわかんないけど、テキトーに頷いておいた。
せっかく元気になったのに、水を差したくはない。
「ありがとう! これで道が見えた!」
「……そう。頑張ってね」
道なんてないけど、いったいなんのこと?
普通の人には見えないものが、アルゼには見えているの?
苦笑いで返事をするも、意味不明な言葉に私はひたすら困惑していた。