【12話】昼食のメンバーが増える
外に出てきた三人は、庭園ベンチに座った。
私を挟むようにして、シンシアとティアが両隣に座る。
左を見ても美少女。
右を見ても美少女。
ん~、最高の眺めだ!
一人悦に浸っていると、ティアが手ぶらということに気付く。
「あれ、お昼は?」
「実は今日、お弁当を忘れてきてしまったんです。早く言えばよかったのですが……ごめんなさい」
ティアが申し訳なさそうな顔で謝ってきた。
さらには、ペコリと頭まで下げる。
「謝らないで。こちらこそ無理に誘ったりしてごめんなさい。お詫びに私のお弁当を食べて」
バスケットのフタを開けた私は、それをティアへ向ける。
中にはシェフの作ってくれたサンドイッチが入っていた。
「それは悪いですよ……!」
「遠慮はいらないわ」
それでも遠慮していたティアだったが、しばらくして折れてくれた。
おずおずと手を伸ばして、サンドイッチを取った。
小さな口を開けて、パクっと食べる。
「おいしい……!」
ティアの口元がほころぶ。
かわいい!
笑っているところを初めて見たけど、これがなんともかわいい。
やっぱり美少女には笑顔が一番似合うよね、うん。
「私ももらいますね」
ときめいていると、反対側からそんな声が聞こえてきた。
シンシアの声だ。
あれ? シンシアもお弁当を忘れたのかな?
体の向きを反対へ向ける。
シンシアの膝の上には、バスケットが乗っていた。
お弁当をしっかりと持ってきている。
「シンシアはお昼を持ってきてる――」
「もらいますね」
おぉ……! なんてプレッシャー……!
冷ややかな声には、ものすごい圧をビンビンに感じる。
もう決定事項で有無を言わさないといった感じだ。
どうしてそこまで私のお弁当を……あ、そっか! このサンドイッチが死ぬほど食べたいんだ!
シェフが作ってくれたこのサンドイッチは、とってもおいしい。
きっとシンシアは、それを食べたくて仕方ないのだろう。
「いいわよ! 好きなだけ食べて!」
「ありがとうございます!」
サンドイッチを手に取ったシンシアは、チラリとティアへ目線を投げる。
その眼光はとてつもなく鋭い。
「あの……カトレア様!」
声をかけてきたティアは、シンシアの眼光には気づいていない。
私をまっすぐに見ている。
「私、学園に来るのが怖かったんです。二か月もあれば、私抜きでクラスの関係はもう出来上がっている。人見知りの私は、その中に入っていく自信はありませんでした。でもカトレア様は、そんな私に声をかけてくれました。お昼に誘ってくれました。それがものすごく嬉しくて……本当にありがとうございます!」
「お礼を言うのは私の方よ。だってこんなにかわいい子と、お昼を一緒に食べられるんだもの」
ずいっと顔を近づてそう言うと、ティアの顔が赤くなった。
照れている顔も、またかわいい。
「そうだ! これからは毎日一緒にお昼を食べましょう!」
「よろしいのですか?」
「もちろん! あなたみたいな美少女なら大歓迎よ!」
「嬉しいです……! それでは明日のお昼は私が作ってきますね!」
「いいの?」
「はい。今日のお返しです!」
「ありがとうね! 楽しみにしているわ!」
「私も作ってきます」
反対側のシンシアが声を上げた。
「でも明日はティアが――」
「作ってきます」
その声に詰まっているのは、たっぷりの威圧感。
またもや、有無を言わさない感じだ。
つまり明日は美少女の作ったお弁当を、二つも食べられるってことだよね!
めっちゃラッキー!
シンシアの行動はよくわからないけど、それについて私は深く考えなかった。