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俺の初恋幼馴染は“負けヒロイン”で終われないっ‼~「今フリーなんですけど?」と言ってくる幼馴染を、今度は俺の手で幸せな《勝ちヒロイン》にしてみせます~  作者: 水瓶シロン
第四章~青春交錯編~

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第59話 初恋幼馴染と大親友の応援を背に

『さぁっ! 二年次クラス対抗リレーも終盤に差し掛かって参りましたっ!!』


「行け行け行けぇ~!!」

「走れぇ~!!」

「頑張れぇえええ!!」


 スターターピストルの乾いた銃声を聞いてからしばらく。

 今、笠之峰のグラウンドは主に二年生の応援席の盛り上がりと、放送委員が務める司会の声によって熱狂していた。


『先頭から三組、一組、五組と少し離れて二組! そして今バトンを受け取った四組が最後方から追い上げてきますっ!!』


 どのクラスも残す走者はアンカーのみ。

 各クラスのアンカーはグラウンド本校舎側のスタート位置――バトンを受け取るテイクオーバーゾーンの少し手前に並び始める。


 暫定順位を見ながら、一番内側にサッカー部の生徒だという三組の生徒が構えたので、その隣に涼太も並ぶ。


『競り合う三組と一組は僅かに三組が先頭か! しかしその差は僅か! 五組と二組の差も縮まったぁ~! やや遅れていた四組も怒涛の追い上げ!!』


(いや競馬かっ……!?)


 涼太は放送席から捲し立てるように語られる司会の口調の熱に、やや呆れながら笑う。


 しかし、すぐに真剣な表情に戻した。

 後ろを見やれば、コーナーを曲がった三組と一組がもうすぐそこまで駆けてきている。


(単純な足の速さでは絶対勝てないから、本当はもうちょっと差をつけてもらってバトンを受け取りたかったんだが……)


 涼太は後方を注視しながらも、左隣に立つ三組の生徒の脚を一瞥した。


 流石は運動部。

 それも常に動き続けるサッカー部。


 陸上部のように洗練された鹿のような脚とはまた違うものの、一目見ただけで速力と持久力に優れた双脚だとわかる。


(でもこうなったら仕方ない。一組(ウチ)と三組の差は少し。抜かせる機会があるとすればこのバトンパスだけだ……!)


 足の速さでは自信を持って勝てないと言える。

 しかし、小手先の器用さなら涼太もかなりの自信を持っていた。


(あとはっ――)


「っ!!」


 並ぶ三組のアンカーとほぼ同時に涼太も駆け出した。

 助走を充分につけられたタイミングで、後ろ手にバトンをしっかりと受け取る。


(――運だッ!!)


 そう心の中で叫びながらバトンを右手に握って、テイクオーバーゾーンから飛び出し、加速するべく強く地面を踏み締めたとき――――


「おっ……!?」


 三組のアンカーがバトンを落とす――とまではいかなかったようだが、手から手へ渡る際に少々バタついてしまったようだ。


 そのせいで三組のアンカーは一秒か二秒経たない程度ではあるが、スタートが遅れてしまった。


(これも日頃の行いか……!!)


 思わぬツキに、涼太は胸の内でガッツポーズ。


 三組には悪いが、これも勝負。

 遠慮なく必死に脚を回転させ、加速に加速を重ねてグングン前に駆けていく。


『おぉっと、ここで抜け出した一組ぃ! 綺麗にバトンが渡り一足先に先頭を走り出すぅ~!!』


 そんな熱の籠った司会を小耳に聞きながら、涼太は最初のコーナーを走る。


『五組と二組もアンカーにバトンが渡ったぁ! 競り合うように三組を追い掛ける! やや遅れていた四組も今アンカーが走り出し、後方から追い上げを狙っているぅううう!!』


「っ、はっ、はっ、はっ……!!」


 コーナーを曲がり切った涼太は、各学年の応援席の前を通るコースの直線に入る。


 バトンの受け渡しの器用さで確保していたリードも、涼太は徐々に三組のアンカーがその距離を縮めてくる気配を感じていた。


 前へと走ることに集中しながら一瞬チラリと後ろを見やろうとして――――


『コーナーを回り直線を走る一組が逃げる逃げるっ! リードは五メートル! その後ろ追い上げを狙う五組と二組が並んで外からじわじわ四組が上がって来たぁ~!!』


(……見るまでもなく司会が説明してくれるな)


 涼太はやはり後方を確認することを諦め、懇切丁寧にそして熱く状況を解説してくれる司会の語りで、苦笑交じりに自身の立ち位置を理解する。


 走って、走って、ただひたすらに速度を落とさないように――いや、これ以上は上がらないとわかっていながらも、抜かされないためにはもっと速く走らないとと鞭打ちながら、駆ける。


 右耳に打ち据えられる音圧。

 もはや誰が誰へと向けた声援なのかわからない、そのごちゃ混ぜになった不協和音を浴びながら走っていると、ふと際立つ声が耳に入った。


「涼太走れぇっ!」


 バシッ、と背を叩くような声は蓮のものだ。

 全速力によって刻一刻と蓄積されていく足の疲れを払い除けてくれる。


 そして――――


「行けぇ~、リョウく~ん」


 決して大きくない声量。

 というより、何故耳に届いたのか不思議なほどにごちゃ混ぜの声援に埋もれた声。


 それでも理屈を超えて確かに聞こえたその声は、紛うはずもなく姫奈の応援。


 とても背を押す気のあるようには聞こえない、どこか間延びしていてのんびりした声だが、それでも涼太の身体を軽くするには充分だった。


(ったく、簡単に言ってくれるな……!)


 心の中で文句を言いながらも、涼太の口許には笑みが浮かぶ。


『最後のコーナーに差し掛かり、最後方から怒涛の追い上げを見せていた四組が五組と二組を外から躱したぁあああ!! 先頭では逃げる一組を三組が狙っているっ!』


 風切り音を耳に感じ、心臓をフルスロットルで脈動させ、後ろから迫り来る足音から全力で逃げる。


「はっ! はっ! はっ! はぁっ!!」


 タッタッタッタッタッ――――

  タッタッタッタッタッ―――――


 涼太の背後から、三組アンカーの足音が迫る迫る迫る。


『最終コーナーを回って最後の直線へッ!! 先頭で駆けてきたのは一組! しかし後ろから三組が追い縋るぅううう!! 四組も外から伸びてきたぞっ!? 勝負はまだわからないわからないっ!!』


 ゴールテープはもう見えている。

 筋トレしているとはいえ所詮インドア派の体力はもう底を突いた。


 だから、この最後の直線を先頭を譲らずに駆け抜けるためには――――


(っ、根性っ……だぁぁあああああッ!!)


 もつれそうになる脚を全力で回転させる。

 きちんと呼吸が出来ているのかどうかもわからないまま肺を伸縮させる。


 その身でゴールテープを切るまで残り七メートル、六、五――――


 追い縋る三組のアンカーとの彼我の距離の差、三メートル、二、一――――


『先頭はもつれてゴールラインに向かう! 一組がやや前か!? 三組が抜け出すか!? 一組か!? 三組か!? 一組か三組かぁあああ!? 一組先頭っ、一組僅かに先頭!! 一組先頭のままっ――』


「っ、はあっ……!!」


『――ゴォォオオオオオルッ!!』


 僅差で先にゴールテープを切った涼太が、脚を空回りさせるように減速して立ち止まり、その場で膝に手をつき肩で呼吸する。


『一着は一組っ! 惜しくも二着は三組だ! そのあと続いて四組、二組、五組がゴール!!』


 涼太は歓声の中、二年一組の応援席の方へ――正確には姫奈と蓮に視線をやって、息も苦し気ながらにニヤリと笑った。


「これで文句ないよなっ……?」

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