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俺の初恋幼馴染は“負けヒロイン”で終われないっ‼~「今フリーなんですけど?」と言ってくる幼馴染を、今度は俺の手で幸せな《勝ちヒロイン》にしてみせます~  作者: 水瓶シロン
第三章~小悪魔降臨編~

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第48話 初恋幼馴染の女心

「可愛かったですねぇ、リョウ君?」

「おっと、知らない間に俺にキュートな一面が?」


 入学式・始業式と新学期の挨拶とも言えるホームルームを昼前に終えて、クラスメイトとなった涼太と姫奈、蓮、結愛の四人でファミレスで雑談を交えながら昼食を取った。


 そして、解散したあとに涼太は帰宅し、姫奈もいつもの如くそんな涼太について部屋まで上がり込んでいた――――


「ねぇ、違うってわかってて言ってるよね?」

「もちろん。どちらかというとカッコいい系だからな、俺」


 この人ウザいわぁ~、とベッドに腰掛ける姫奈が、その足元の床に座ってベッドを背もたれ代わりにして小説を読んでいる涼太の横脇を足先で小突く。


「痛いんですけど」

「リョウ君が変な冗談言うからで~す」

「いや冗談て酷いな……」


 もちろん涼太も自分が本気でカッコいいと思っているわけではないが、それでも躊躇いもなく姫奈に『変な冗談』と斬り捨てられると、やはり来るものがあった。


「はぁ……あの後輩ちゃんのことね?」

「んあぁ、彩香ね」

「……彩香、ねぇ?」


 小説のページを捲りながら片手間に返事をする涼太。

 そのうえ、姫奈からすれば今日初めて出会った後輩をあっさり名前で呼び捨てていることが面白くなかったのか、姫奈は再び足先で涼太を軽く蹴った。


「ちょっとお姫様? 今日足癖悪くありませんこと?」

「理由は自分の頭で考えてください」

「まぁ、ご褒美と考えれば……」

「それは普通に気持ち悪い」


 姫奈は涼太の後頭部に呆れた半目を向けた。


「リョウ君も可愛いって思ってたんだ」

「そりゃまぁ、可愛いだろ。もしあれでも可愛い部類に入らないんだったら、世の中の評価基準バグりすぎ」

「ふぅん、絶賛ですねぇ?」

「いや、誰でもそう思うだろ」


 そうだけどさぁ……と、姫奈は淡々と述べられる涼太の正論を受け、同意はしながらも納得は出来ないといった表情を浮かべる。


「……ちなみに、どこが可愛いと思ったんですか?」

「えぇ? うぅん……入学初日で不安も少なくない中、わざわざ知り合いの先輩を尋ねて上級生の教室を巡ろうとしてた健気な――」

「――そういう長ったらしいのじゃなくて、素直に」

「え、顔?」

「うっわ、最低ですこの人ぉ~」

「い~やいやいや、顔も一要素でしょ!? その人の良いところの一部じゃん!? 貶してるわけじゃないのに外見に触れただけで叩かれる昨今の風潮好きじゃないですねぇ、ボクは!」


 姫奈からの心無い評価を必死に否定しようと、涼太は開いていた小説をパタリと閉じてそう早口で捲し立てるようにして語る。


 小説の表紙には、可愛い衣装を纏った美少女の立ち絵が。


「ってか、素直にって言ったのヒメだろ」


 振り返ると、丁度視線の高さに制服のスカートの中からスラリと伸びる姫奈の生脚があり、目のやり場に困った涼太はすぐに顔を正面に戻した。


 一瞬のことであったため、姫奈は気付かず話を続ける。


「素直にって聞かれて、真っ先に外見が出てくるってどうなんですか~?」

「そりゃ、彩香の内面まだそんな知らんしな?」


 確かに涼太が彩香と出逢ったのは二月。

 顔見知りになってからの期間だけで言えばもう二ヶ月経つということになるかもしれない。


 しかし、顔を合わせた回数は今日を含めてまだ二回しかなく、その人となりを詳しく知るにはあまりに時間が足りなさすぎる。


 そんな状態で内面を理解した気になって語るのは、彩香にも失礼というものだろう。


「ってか、そういう姫奈どうなんだ?」

「はい?」

「ヒメも彩香は可愛いって思うだろ?」

「んまぁ……」

「で、どこが可愛いんですか?」

「ちっちゃくて可愛い」

「いや結局外見じゃねぇか。それも結構コンプレックスに思ってる人が多そうな」


 何だこの見事なブーメランは、と涼太は呆れて肩を竦めた。


「ってかどうした、ヒメ? 何むくれてんだよ?」

「別に? むくれてませんけどぉ?」


 立ち上がって小説をポン、と学習机の上に置いた涼太が視線を向けると、姫奈はつまらなさそうな表情でそっぽを向く。


「むくれてんじゃん」

「むくれてない」

「拗ねてる?」

「拗ねてもない」

「じゃあ、どうしたよ?」

「どうもしてないで~す」


 頑なに認めようとしない姫奈に、涼太は困ったように後ろ頭を掻く。


「……あのなぁ、ヒメがそうやって目を合わせようとしないときは、昔から決まって何か不満があるときなんだよ」

「そこまでわかってるのに、どうしてわからないかなぁ……」


 はぁ、と短くため息を吐いた姫奈。

 ベッドから腰を上げ、床に置いていた学校のカバンを肩に掛ける。


「今日ママ早く帰ってくるらしいから、私も今日はそろそろ戻りまぁす」


 立ち込めた霧が晴れないような空気感の中、姫奈の足音が遠ざかる。


「ちょ、おいヒメ……」

「リョウ君はもうちょっと女心の研究しておいてください」


 ガチャリ、と閉められた部屋の扉。

 あとに残された涼太はしばらくその場で立ち尽くしたあと、天井を仰ぎ見た。


「……ど、どうやって?」


 最も身近にいる女子が姫奈であるのに、その姫奈に乙女心を研究しろと言われても、他に頼れる相手など涼太の頭の中に浮かぶわけもなかった――――



◇◆◇



 その日の夜――――


「あ、ハンカチ洗濯に出すの忘れてた……」


 風呂に入ろうと部屋を出ようとした涼太は、ふと今日学校で使用したハンカチをまだ洗濯籠に入れていないことを思い出し、クローゼットを開く。


 ハンガーに掛けている制服のブレザー。

 ハンカチはいつもブレザーの右ポケットに入れてある。


 涼太が手を突っ込むと…………


「ん、何だこれ?」


 ハンカチと一緒に、二つ折りにされた小さな紙が出てきた。


 仕舞った覚えのない見慣れぬ紙に首を傾げつつ、二つ折りを開くと――――


“涼太先輩へ


これ私のIDですっ!

もっと仲良くしたいので、いつでも連絡ください!

ちなみに、登録してくれないと泣いちゃいます……


涼太先輩の可愛い後輩

橘彩香より”


 ボールペンで書かれたと思われる、少し丸みを帯びた文字と共に、メッセージアプリのIDが記入されていた。


「いつの間に入れたんだよ……」


 涼太は苦笑いを浮かべながら、部屋を出る前に可愛い後輩の願いを聞き届けることにしてあげたのだった――――

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