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第79話 異変

 ―その島はただの見向きもされない、どの国にも所属してない小島だった。


 変わってきたのは四十年ほど前の事、ある犯罪組織がMTの残骸などを不法投棄し始めた。

 やがて噂を聞きつけたジャンク屋が住み着くようになり、小島は見る影もない程に巨大な鉄の島となっていく。

 もはや無政府状態となった島は何時しかジャンク島と呼ばれるようになり、戦争が続く世界での掃き溜めとなっている。


・・・・・・・・・・・


「アイギス。生体反応はあるか?」

【現時点では反応はありません。少なくともこの付近には犬一匹といません】


 愛機であるジークフリートにてジャンク島を低空飛行するユーリは、アイギスからの報告を聞き少し悩んでから決断を下す。


「下降して調べるか」


 言うが早いか、ジークフリートで島に降り立つユーリ。

 MTの残骸を踏みしめながら、周りを確認していく。

 するとアイギスがユーリに話しかける。


【しかし神隠しとは、変わった調査ですね】

「本来は警察の仕事だろうが、無政府だからな」


 ユーリたちが行っている調査とは、数日前から一斉に消えたとされるジャンク島の住民たちの捜索であった。

 住民と言っても勝手に所有権を主張している難民やジャンク屋であるが、流石に前触れもなく一斉に消えたとなれば疑問も出てくる。

 そこで調査の先遣隊としてデュラハン隊が来た訳である。

 本格的な捜索は他の部隊が行うため、他から見れば楽な仕事と思えるだろう。


「……」

【ユーリ】

「何だ」

【嫌な予感はまだしてますか?】

「……ああ。むしろ前より感じるぐらいだ」


 そんな中でただ一人、ユーリだけが最大限に警戒をしていた。

 周りの変化を見落とさないように集中するユーリに、アイギスは淡々と機械音を紡ぐ。


【AIである身には予感は感じられません。ですがパイロットの経験から来る勘は侮れない事は理解しています。何か異変があればすぐに知らせます】

「助かる」


 礼を言ってしばらく黙っていたユーリであったが、ふと思い出したように口を開く。


「そう言えばアームストロング博士から何か連絡はあったか?」

【いえ。初めてユーリに会った日から特に】

「いや、学習が云々って言ってたから一度ぐらい顔を見せるかと思ってのに見せないから」

【データは博士の元に届いているはずですので、間違いなく確認しているはずです。それ以外の事は知りえません】

「そうか。随分とお前に情熱を持っていたみたいだったけど」

【間違っていますよ、ユーリ】


 ユーリの言葉を珍しく否定したアイギスは、一拍置いてから淡々と説明する。


【博士が情熱を持っているのは誰にも追いつけない技術を開発する事。当AI、もっと言えばAI技術でなくても良かったはずです】

「随分と確信を持って言うんだな」

【初めて起動した日に博士は言いました。『これで見返せる』と。何を指しているかは不明ですが、状況を察するのは難しくありません】

「……」

【それより隊を散開させて良かったのですか? ユーリの勘が当たっていた場合、被害が出ると思われます】

「探索が目的だ。広く当たるのは定石だろ? それに何かあっても対応できるだけの技量は三人とも積んでるしな」


 ユーリの三人を信頼しているのだろう言葉にアイギスは納得する。

 とそこで捜索範囲を超えて島の中心部に近づいていた事に気づく。


【ユーリ。捜索範囲外です、一度】


 戻るべきと言い切る直前、ジークフリートのシステムを通してアイギスに情報が送られる。

 後方の何かが狙っていると。

 アラートが鳴ろうとしているが、それでは遅いと判断したアイギスはコントロールをユーリから奪い全力で避ける。


「ぐっ!」


 突然襲い掛かった重力にユーリは顔をしかめるが、直後に通ったエーテル光に状況を察知。

 すぐさまアイギスからコントロールを返してもらうと、撃った敵と相対する。


「……なんだアレ」


 困惑するユーリの視線の先には、まるで部品を無理やりつなぎ合わせたかのようなMTがライフルを構えたままこちらを見ていた。

ユーリの前に立ちふさがる異形のMT

果たして一体何者なのか?

どうか次回もご期待ください!


※皆様が素敵なクリスマスを過ごせますように

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