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第33話 緊迫

「現在我が軍はこのフロイ基地を前線とし、作戦地点であるドリトドン要塞攻略のための部隊を集結させています。これは既に知っている事だとは思いますが、ご容赦ください」


 カゲロウのミーティングルームにて主要なメンバーを集めて前置きしたエリカは、モニターにドリトドン要塞を映し出して説明を続ける。


「情報部の報告ではドリトドン要塞に新兵器が運ばれたとの情報があります。デュラハン隊には偵察を行ってもらい、その兵器の概要を掴んでもらいます」

「その兵器の情報は全くないのかい?」


 副長であるジェイドが質問すると、エリカは首を横に振って答える。


「残念ながら。しかし、各地に監視塔が作られているという報告は受けています。間違いなく新兵器と関係があるでしょう」

「監視塔。……バリア装置か何かなのか?」

「分からない事を考えるのは時間の無駄です。ならば知るために動く事が肝心。その為の偵察任務です」


 ローランドの疑問をバッサリと切って、エリカはモニターの映像をフロイ基地から要塞までの俯瞰の映像に切り替える。


「デュラハン隊は中腹以降はそれぞれ四方向に分れ作戦を開始。その後、安全が確保されたならカゲロウを前進させて広範囲に偵察。場合によって威力偵察を行います」

「まって。敵の新兵器の全貌も掴めてないのにバラバラに偵察なんて危なすぎるでしょ」


 立ち上がったアイシャは、不満な表情を隠しもせずにエリカに真っ向から反論する。

 だがエリカは大して動揺する事もなく、淡々と理由を述べる。


「だからこそです。もし新兵器が大量破壊兵器ならば、一刻も早く見つけて対策を練らなければいけません。常識を崩してでも、迅速に行動しなければ」

「だったらデュラハン隊だけじゃなくて他の隊も含めた方がいいでしょう? それとも他に何か理由でもあるんですかブレイン少佐?」

「威力偵察も兼ねると言ったはずです。少数のほうが警戒されず、またこの隊ならこなせると考えたまでです。他意などありませんよ、ウェルズ曹長」

「……」

「……」


 アイシャとエリカ。

 互いが睨み合ったまま一歩も譲らないといった様子だった。

 険悪なムードにエルザとミーヤだけでなく、ローランドとジェイドも困った様子を見せる。


「アイシャ。そこら辺にしておけ」


 その空気を壊したのは、今まで一言も発しなかったユーリだった。

 どうでもいいといった雰囲気で、ユーリはアイシャを嗜める。


「ここで揉めても仕方ないだろ。それにブレイン少佐が言っている事も間違ってはいないだろ?」

「……」

「だが少佐。不測の事態が起こった場合、こちらの判断に任せてもらう。構わないか?」


 エリカに問いかけるユーリであったが、目は反論させないという意志が見えていた。


「元よりそのつもりです。戦術レベルの事はお任せします」

「……感謝する。アイシャももういいだろ?」

「……」


 未だ不満が残っている様子のアイシャであったが、やがて椅子に乱暴に座ったことでようやく緊張が緩和されるのだった。


「では作戦開始は四時間後」


 そう言うと、エリカは一例してミーティングルームを去っていった。

 それぞれが部屋を出ていく中、ユーリも一度部屋に戻ろうとした。


「ん?」


 だが何かが落ちているのを見つけ拾い上げると、持ち主に届けるために足を向けるのであった。

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