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第31話 死神と王

「よいのですか? 一国の王が一介の少尉と直接」

「あまり良くは無いが、この位の我が儘ぐらい許されるだろう」


 王と思えないほど茶目っ気たっぷりの笑みを見せ、ユリウスはユーリの傍に寄る。

 無警戒すぎてユーリが心配していると、ユリウスは周りを見渡しながら笑う。


「心配しなくても、余すら知らない護衛がそこら中にいる」

「……だからと言って無警戒でいい理由にはならないと思いますが?」

「はは。いや全く、その通りだ」


 いつも調子で軽口を叩くユーリに対し、ユリウスは怒る様子もなく笑みを浮かべる。

 だがユリウスは式場の中心部に首を向けると、先ほどより暗い口調で語る。


「だがいまアレに巻き込まれたくなくてな。しばらく話し相手になってもらえると助かる」

「アレとは?」

「いやなに、只の演説だよ。ガスア帝国との開戦を望む者のな」


 ユリウスは遠い目をしながら、演説してるであろう者とその周りを見ていた。

 口を挟んでいいのか悩んだユーリであったが、その前に王が話題を切り替える。


「まあ今はその話はどうでもいい。少尉、君は元は少年兵だったらしいね」

「ええ。まあ」

「その時なにを思ったのか、聞かせて貰えないか?」

「……ただ生きたかった。それだけですよ。特に語るような事でもありません」

「生きたいか。ならそれを奪おうとした余たちを、憎んでいるのだろうな」

「いいえ。恨んでも何にもなりませんしね」


 その答えは予想外だったのか、驚いた表情を見せるユリウス。

 だが笑みを見せると、ユーリの肩に手を置く。


「君のような若者がもっと周りに居てくれればと思うよ」

「それは止した方がよいかと。何せMTの操縦以外はポンコツなもので」

「ははは! そうか!」


 大声で笑ったユリウスは、ユーリの肩を叩くと背中を見せる。


「きっとこれからも大変だろうが、生き残ってくれ。……余も君のような者が増えないよう、全力を尽くそう」


 そう言うとユリウスは式場の中心へと向かっていった。

 その背中をジッと見ていたユーリであったが、その脇腹を小突く人物がいた。


「何やってるのよ隊長!」

「アイシャ、人の脇腹を小突くのがこういった場のしきたりか?」


 怒った表情を見せるアイシャに、ユーリは軽口を叩く。

 だがその返事として返ってきたのは再び小突かれる事であった。


「冗談言っている場合じゃないでしょ。ユリウス王とあんな態度で話すなんて何考えてるのよ」

「聞いてたのかよ」

「途中からだけどね」

「悪いがこの口は生まれつきでな。王様相手だろうと簡単に治らないんだ」

「明日隊長が何処かに連れ去られても、私驚かないから」

「その時はエルザとミーヤを頼んだぞ。新隊長」


 ユーリがそう言うと先ほどとは比べようが無いほど思いっきり脇腹を突かれ、流石に悶絶する。


「っ~!!」

「そんな冗談。好きじゃないから」

「だからって思いっきりド突く事はないだろ。まあ今後は気を付けるよ」

「はぁ。まったく」


 呆れたように肩を竦めるアイシャを見て笑みを向けるユーリ。

 式場の端で会話を弾ませる二人であったが、そこに近づく二つの影がいた。


「お邪魔かしら。白い死神さん」

「いえ。……失礼あなた方は?」


 ユーリに声をかけて来たのは軍服を着た初老の女性と、ユーリと歳が変わらないであろう白髪の長髪をバレッタで止めた少女であった。

 初老の女性はゆったりとした様子で笑うと、自己紹介をした。


「失礼したわ。私はカサンドラ・ブレイン。これでも准将なのよ。そしてこの子はエリカ。私の娘よ」

「初めまして」


 エリカと紹介された少女は、手を差し出す。

 ユーリもそれに応じて握手すると、やけにジッと見られている気がした。


「何か?」

「……いえ、何も」

「あらあら。照れているのかしらこの子」


 手を放した後もユーリの事をジッと見て来るエリカに違和感を感じるユーリであったが、それよりもまず聞いておくべき事があった。


「それでブレイン准将。何か御用でしょうか?」

「そうね。あまり時間を取らせるのも迷惑だろうし、単刀直入に言うわね」


 そしてカサンドラが放った次の言葉に、ユーリだけでなく側にいたアイシャですら大きく驚くのであった。


「あなた私の直属にならない?」

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