トレーニング
今日も日課のトレーニングをしていた。
「雄一先輩!まだやってたんですか?」
後輩の仙石が驚いた声をあげた。
昔から父が厳しく、自分のなれなかったプロスポーツ選手の夢を俺に押し付けていた。
わかってはいたが俺は特に不満や文句を思った事はなかった。
同い年位の友人が街で友人と楽しそうにしているのを見ても自分も混ざりたいなど思ったことがない。
前に友人に
「変だよ。お前。」
と言われたことがあった。
何が変なのかわからず俺は友人の話をまともに聞こうともしなかった。
そして今日も一人でトレーニングをしていたら声を掛けられた。
「いつもこんな時間までやってるんですか?」
「ああ、日課だからな。」
俺が言うと仙石は感心した顔をして
「わかりました!明日から俺も参加します!」
「はぁ?」
仙石の言っていることが理解できず間抜けな返事をしてしまった。
「何で?」
俺が聞くと
「前から気になってたんですよ!雄一先輩が何でそんなにすごいのか。俺もやれば雄一先輩に近づけるかなって!」
笑顔で仙石は答えた。
正直に言って煩わしい。
一人で行うトレーニングに慣れているのでこの空間を壊されたくない。
「トレーニングルームは自由に使用できるんで駄目って言われても来ますからね!」
俺の考えを見透かしたように仙石は言った。
翌日から本当に仙石は来た。
俺のトレーニング表を見て呻き声を上げていたが毎日トレーニングを続けた。
どうせすぐ根を上げるだろうと思っていたが半月経っても変わらず仙石は俺の隣でトレーニングを続けた。
「俺、先輩を追い越すのが夢ですから!」
笑いながら言う仙石が眩しく見えた。
なぜこいつはこんなにも楽しそうにトレーニングをしているのだろうか。
ある日俺は仙石に聞いた。
仙石はきょとんとした顔をして当然のように言った。
「楽しいからですよ!自分がやるって決めてやってるんだから楽しいに決まってますよ。」
俺ははっとした。
ずっと父親に言われ続けてきたトレーニング。
厳しい言葉などを浴びせられて辛くて逃げだしたいこともあった。
それでも続けたのは何故か?
もうトレーニングをすることが当たり前になってしまって忘れていたが俺はプロのスポーツ選手になりたかったんだ。
他の誰も関係ない。
俺自身がなりたいことのために続けてきたんだ。
初めて頭で理解した気がした。
「仙石…。ありがとうな。」
俺は小声で呟いた。
「何ですか?」
仙石が聞き返したが俺は答えず次のトレーニングに向かった。