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浮浪者

作者: エドゴン

【1.序章】


マネヒコは家を持っていません。1年間介護をした母親は死んでしまい家族はいません。頼れる知り合いもいません。新宿のとあるガードした。今日もマネヒコは段ボールにくるまって眠っていた。


お金を持っていません。食べ物はコンビニの残飯を漁っていました。特に何かをするわけでもなく、ただ家がないのでダンボール生活をしていました。やりたくて浮浪者になっているわけでもなくできれば家に住みたいと思ってはいますがやり方がわからずにいました。


お風呂には入っていなくてかなり不潔な状態です。マネヒコはそれが当たり前になっていました。身体中に土がついており、油ぎった顔や髪の毛、汗でびしょびしょのシャツ、靴は切れており水虫になっていました。こんな状態で銭湯に行ったら迷惑ですね。


ご老人「そこの若いの。ほれ、パンじゃ。」


マネヒコ「おばあちゃん、いつも悪いね。いいのかい。」


ご老人「最近は足腰が悪くなってきてのう。いつまでパンを届けられるかわからんよ。」


マネヒコ「おばあちゃん助かるよ。いつもありがとう。」


マネヒコはご老人からいつもパンをもらっていました。


翌日。


「チャリーン」

マネヒコは驚きました。地面に500円が落ちています。マネヒコは急いで拾いました。さっき通りがかった人が恵んでくれたのだとマネヒコは瞬時に察知しました。

「ありがとう」

マネヒコは心の中でお礼を言いました。


【2.嫌がられるマネヒコ】


マネヒコはせっかく500円を恵んでもらえたので隣町にある大好きなシュークリーム屋さんに行きたいと考えました。昔からの大好きなシュークリームを久しぶりに食べたいと思いました。しかしスマホを持っていないので歩いて行くにも道がわかりません。でも駅からなら行くことができるので電車で行くことに決めました。


マネヒコは電車に乗りました。しかし周りにいる乗客たちが同じことを言い始めました。


男性「くっさ」

女性「くさいわ」

老人「くさいのう」

子供「何この臭い、くさいよぅ」


マネヒコは明らかに臭がられていました。それもそのはずお風呂には浮浪者になってから一度も入っていなかったのです。鼻を刺すような臭さです。納豆の比ではありません。くさややドリアンの強化版といった感じです。


男性「常識はずれだ。浮浪者め。風呂ぐらい入ってから電車に乗れや。こっちは迷惑してんだ。」

女性「本当にキモいわ。ありえない。」

老人「悪いことは言わぬ。今すぐに降りなされ。」

子供「くさいよぅ。何かが腐ってるよ。」

男性「二度と乗ってくるんじゃねぇぞ。このカスやろう。消え失せろ!」


子供が水鉄砲でマネヒコを撃ちました。

母親「やめなさい。何されるかわからないわよ。」


マネヒコは隣町の駅に着いたらすぐに電車から降りました。マネヒコは今回の出来事にショックを受けました。そんなに自分は臭くなっていたのかと、知りもしませんでした。また人間とはこういう生き物なのだと悟りました。


目的だったシュークリームを買いましたがあまりのショックに味を感じられませんでした。また帰りの電車で罵られるのかと思うと憂鬱でした。


【3.エドゴン牧師との出会い】


数日後。マネヒコはいつものように段ボール生活をしていました。たまにいただけるお金だけを楽しみに生活をしていました。


???「そこのお主。」


マネヒコ「・・・」


???「お主じゃよ。」


マネヒコ「はっ!わ、私ですか?」


???「そうじゃよ。」


???「私はエドゴン牧師。今は可能性のある浮浪者のことを見て周り助言を与えていたのじゃ。お主、まだ若いのう。」


マネヒコ「私に何のようですか?見ての通り段ボール生活、お風呂にも入っていないただの臭いおっさんです。」


エドゴン牧師「でも先程の通りがかった女性はお主にお金を与えていたじゃろう。何かお主には光るものがある。まだこの先の人生は長いぞよ。生活保護を受けてみる気はないかのう。」


マネヒコ「なんですか?その生活保護というのは?」


エドゴン牧師「生活保護は日本で保証されている最低限の生活をするためのシステムじゃ。生活を立て直し、仕事をするまでの間、生活の面倒を国が見てくれるのじゃ。どうじゃ、気になるじゃろう。」


マネヒコ「仕事ですか。私はもう仕事をする気もないです。」


エドゴン牧師「浮浪者になれば誰でもやる気はなくなるもの。最低限の生活を開始すれば気持ちも変わるじゃろう。生活保護を受け入れればアパートに住み、毎月10万円以上のお金を手に入れられるぞよ。どうじゃ、魅力的じゃろ。」


マネヒコ「アパートに住めるんですか?そして10万円も?いただけるんですか。」


マネヒコは生活保護というシステムの存在を知りませんでした。そしてエドゴン牧師によって生活保護を受け入れ、アパート生活を始めることになったのです。


【4.生活保護の魅力】


マネヒコは久しぶりのお風呂に入りました。前回のお風呂からはもう半年近くが経っていました。新宿のガード下では悪臭を放っていました。泥まみれの体を洗い流し、髪の毛や顔にこびりついた脂を落としました。3回も体や頭を洗いようやく汚れを落とすことができました。とてもスッキリしました。


マネヒコ「ふう、気持ちが良かった。生活保護とはすごいシステムだな。働かずにこの部屋に住むことができるのか。」


「ピンポーン」


マネヒコ「はい、誰だこんな時間に。・・・エドゴン牧師!」


エドゴン牧師「どうじゃあれから。生活にも慣れてきたかのう?」


マネヒコ「はい、おかげさまで。生活には慣れて、居心地が良いです。あの・・・私、浮浪者の時、体の不自由なご老人にたくさんパンを恵んでもらっていました。それが嬉しくて嬉しくて。どうして私なんかにあのご老人はパンを恵んでくれていたのかわからないのです。だから少し的外れかもしれないのですが、ご老人のお世話をしてみたいです。」


エドゴン牧師「それなら介護士という仕事があるのじゃがやってみるかのぅ?」


マネヒコ「ぜひやってみたいです。母親の介護もしていたので、コツはわかっているつもりです。」


エドゴン牧師「わしの目に狂いはなかった。お主ならきっと人生をやり直せると思った、だからわしはお主に声をかけたのじゃ。浮浪者という大変な環境にいたことにもめげずに、心にはしっかりと芯を持っておった。お主の人生はこれからじゃ、たくましく生きるのじゃぞ!」

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