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嵐の前の凪 ~2~

「木洩日、よく頑張ったね。ここまで来れば、私たちは一度の夜でこの平原を抜けられるだろう」


 再び青い火を若草の山に灯し、二人はそれを囲んで荷を外し、腰を降ろしていた。

 今度は二人対面に座るのではなく、隣同士になって。


「さて、今のうちに少しお眠り。夜のために英気を養わなくては」

「いいの?」

「ああ。ここまで来れば、今晩一杯と翌日日のあるうちに草原を踏破できる。だから今のうちにお休みなさい」

「……夜のうちは、どこか一所に隠れてるっていうのは駄目なの?」

「賢明じゃない。森の一ヵ所に長く留まるにつれ、その周囲の樹木が私たちの存在に当てられ僅かずつに変質してしまうんだ。それを嗅ぎ取られ、獣たちに気取られてしまう」

「そうなの……そっか」

「ここの獣たちはそうやって狩りを行う。樹木は純粋な気で満ちているから、生き物の息吹一つにも影響を受け、気配を変える。それを嗅ぎつける術を、森の獣たちは熟知しているんだ。森がせり上がれば、どんなに小さな者でも一ヵ所に留まることはない」

「…………」

「――すまない、今脅かすようなことを言うべきじゃなかったね。さあお休み。大丈夫、【守りの青火】が君を包み寒さから守ってくれるから」

「うん……」


 木洩日が横になると、コマは木洩日の額へ手を伸ばし、二本指でそっと触れた。

 そしてなにかをふつふつと呟くと、木洩日の心に大いなる安息が訪れた。


(……なんだ、ろ、これ。どこかで、知ってるような、気が……)

(あったかい。安心。誰かを、思い出しそうな…………)

(――――あ……)

(――お父さん……お母さ……)


 木洩日の瞼は完全に落ちた。


「……今は、今だけは、ゆっくりとお眠りなさい」


 さわりと木洩日の頭を撫でると、コマは【守りの青火】へと手を伸ばし触れ、ちょいと指を動かした。

 青火が木洩日の元へと伸び、まるで毛布のようにその身を包んだ。


「初めての夜はきっととても長かろう。だが私は君に寄り添い必ず守り通すよ」





 ――人は、その闇の中大地に立ち夜を超えんとするとき初めて、夜の永劫とも思える長さを知る。

 日のあるうちの平穏の、なんと短いことか。明けぬ夜はないという言葉に秘された大いなる過酷が、人には過ぎたものだとそのときに知る。


 ――空が茜色に染まり始めた。

 試練は訪れる。


 

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