夏の終わり。その5
セレム視点ですー。
キリル殿と話をつけて、エフェク兄さんとバリス兄さんに報告すると、すぐ動く・・という連絡がくる。ひとまず、ドル国の様子を見つつ、怪しい所は潰しておく事にしようと決めた。
思いのほか、連絡も早くついたので、カエの元へ行く。
・・・と、酔っ払っている・・・。
ものすごく・・酔っ払っているカエが、目の前にいた。
ラウラ姉さんは、ニコニコ笑って「美味しいって言ってくれたの!」と教えてくれた・・。そうだった・・・、姉さんは天然だった・・。結構ずれてるんだった・・。思わずこめかみを押さえる。
「・・・ラウラ姉さん、カエにナナカ酒を飲ませたのか?」
「ええ、ここの名産品の一つですもの!」
「・・・・これ、お酒ですよね?」
「そうね〜。でもアルコールは少なめよ?」
「・・・姉さんからすれば、大概のお酒はアルコールがないですよね・・・」
ラウラ姉さん・・酒豪だからな。
会話をしていると、カエがニコニコ笑って、こちらを見ている。
明らかに酔っている・・。そういえば、お酒を飲んだことなかったな・・と、思い出す。
飲んだ事がないのに、体調は大丈夫か・・?
「・・カエ、一度休ませてもらおう」
「・・・・?ん・・うん・・??」
「姉さん、夕食まで休みたいんだが・・」
「あらそうなの〜、じゃあ案内してちょうだい」
侍女に案内され、カエを立たせようとすると、ものすごく・・フラフラしている。
慌てて手を取ると、ごめんね〜・・とふわふわした声が返ってくる・・。
案内された部屋へ入り、ソファーに座らせ、コップに水を入れて、カエの隣に座る。
「カエ、水をまず飲んでおけ。しばらくすれば冷める」
「・・・・・・・・・さめる」
「えっと、水をだな・・」
じっと、コップを見るカエが、今度は俺をゆっくり見る。
アルコールの度数は低いはずだが・・、ほのかに頬が赤く染まっていて、ドキリとしてしまう。
「セレム〜〜〜〜」
突然、カエが胸の所へ抱きついてきた。
「・・・・?!!カ、カエ???」
いつもは、抱きしめただけで赤くなるカエが、抱きついてきた?!!!
カエはじっと俺を見て、
「セレム、いつもありがとう〜」
「う、うん・・・?」
「お仕事頑張ってて、偉いね〜。格好いいね〜」
そう言って、頭を撫でてくる。髪の毛サラサラ・・綺麗だなぁ〜なんて声がするが・・、体がうまく動かない・・。
「・・う、あ、カ、カエ・・多分、酔っているから、一旦手を離して・・」
多分・・・色々決壊してしまう・・。
カエの腕をそっと離そうと手を添えると、
「やだ」
「え」
「いつもセレムはくっつくのに・・、私はダメなの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!」
だ、ダメだ・・・!!!
今、カエを見ると決壊する!
ここで決壊してはダメだ!!俺は目を瞑り、理性を総動員する!よし、いける・・!!腕を離そう・・。
するっと頬を撫でられる感触がする・・。
目を開けると、夜しか見られない・・カエのしっとりと濡れたような瞳と目が合う。
そのカエが、ふわふわと笑いながら頬を撫で、そっと唇を撫でる。
カッと身体中が熱くなって、カエを離そうとするはずが近くに寄せて、もっと見ようと覗きこむ。ああ、俺の片翼。愛しい人・・。
「・・・・・・・・カエ・・」
そう言うと、
「・・・・・・・・寝る」
「・・・・え?」
もう一度カエを見ると、俺の胸元にもたれかかって、スヤスヤ眠っていた。
もう一度言おう・・・眠っていた・・・!!!!
理性が、俺の肩を叩いて慰めてくれたような気がした・・。
崩れ落ちそうな心を自分で励まし、カエには俺の前でだけお酒を飲ませよう・・・!!!そう強く誓って、ベッドへ連れていった。