夏の終わり。その4
穢れていた苗木・・。
キリルさんがそう言って浄化した苗木を触ると、静かにセレムを見る。
あ、もしかして・・誤解してない?セレムの国からの苗木と、今回の苗木は、見た目は同じだ・・。
「あの、この苗木はわざと穢されていたみたいで、セレムの苗木は穢れていないはずです!」
私が慌てて話すと、キリルさんは少し驚いた顔をしてから、ゆっくり微笑む。
「・・・恐らく、その通りでしょうね。隣のドルという国は、そういう事をやりかねない・・。それで昨日、会議であえて言ってみたのです・・。「セレム殿の国の苗木と一緒のはずが、おかしいですね・・」と。」
セレムはキリルさんを見てうなづき、しゃがんでいた私に手を差し出す。
手を借りて立ち上がると、森の精達はまたふわふわと舞いだした。
「ようやく平和になってきたというのに、きな臭い話を聞いていたんですが・・、まさかこんなすぐに色々仕掛けてこようとは・・」
セレムがじっと浄化された苗木を見る。
なんだか不穏な空気に、ドキドキしてきた。セレムの手を握ると、
「大丈夫、争いが起きないようにする。そのために、今日は話し合いに来たんだ」
セレムがそう言って、手を握り返してくれるとホッとした。
「カエ・・、なぜ穢されていたとわかったんだ?」
「えーと、映像みたいなのが見えて、黒い穢れが液体みたいになってて、それを苗木が掛けられていたのが見えたんだけど・・。そういうのって、できるの?」
キリルさんとセレムがハッとした顔になる。
思い当たる事があるのかな・・。
「・・早急に対処しましょう。セレム殿、少しお付き合い願います」
「もちろんです。カエ、少し行ってくる」
「あ、うん、行ってらっしゃい」
そういって2人は足早に違う部屋へと移動していった。
・・こういう時、私は何もできないんだよね。
なんかお手伝いできればいいんだけど・・・。
と、ちょいちょいと私の肩をつつかれて、振り返るとラウラさんがにっこり微笑んでいる。
「カエさんのおかげで、助かりました。ありがとうございます」
「いやいや、映像が見えただけで・・」
「カエさんは控えめな方なのね、セレムは可愛くて仕方ないんでしょうね・・」
そういってうふふ・・って笑うラウラさん・・・、あなたが可愛いです。
「来て早々に、お話してしまって・・。私達だけでお茶でもしましょう。きっと男性達は、お仕事・・と言いつつ、なんだかんだで楽しんでいるでしょうから」
「あ、はい」
仕事・・楽しいのか・・?そう思いつつ、ラウラさんについていき、
お茶を頂くことにする。
さっき来た部屋に戻ると、お茶の支度が整っていて、メイドさん達が椅子に座らせてくれる。お、おぉ・・ちょっと久々なブルジョワな接待・・。私はかなりドキドキした。
透明の丸い形のグラスに淡い紫色の液体が注がれて、渡される。
コクっと飲むと、マスカットのジュースみたいな味だった。向こうではよく飲んでたけど、こっちはお茶を飲む事が多かったので、ジュースの存在が嬉しかった。
「・・・これ、美味しいですね!」
「うふふ、気に入ってくれて嬉しいわ〜。お客様にも好評なのよ〜」
「あ、わかります!ジュース・・って、こっちはあまりないのか、お茶ばかりだったんで・・。飲みやすくて美味しいです」
「あらあら嬉しいわ〜。まだまだあるから、ぜひ飲んでね〜」
「はい!」
二杯目を飲んでいると、ふと違和感を覚える。
なんだかふわふわする?
気のせいかなぁ・・。会話をしていると、少し暑いかな?って思ってラウラさんを見るけど、ラウラさんはニコニコしてるし・・・。あれ〜???ローニャさんが、心配そうに見てるけど、どうしたのかな・・・?
ふわふわ・・
あ〜なんか気持ちいいなぁ・・
そう思っていると、セレムが部屋へやって来て、私の顔を見ると驚いていた。
ん?なーに???