夏の終わり。その2
セレムの兄妹順は、
長男、エフェクさん・・パワー溢れるちょい悪風な、コルト国の王様。
次男、バリスさん・・冷静沈着、柔和なコルト国の宰相。
長女、アイシェさん・・グラマラス美女で発明品で有名なバシェ国の王族の三男リファートさんと結婚している。
次女、ラウラさん・・まだ会ってないけど、ノルウェル国のエルフの王様の次男さんと結婚。
そして、セレム・・か。
アイシェさんは、すぐ会いに来てくれたけど、ラウラさんはちょっと控えめな方らしい。
お土産は何がいいかな・・と、セレムと相談して結婚したばかりだし・・と、ララのお茶とリファートさん渾身のカメラをお土産にする事にした。写真の画像は1000年!と、保証付きだ。流石だ・・。
今回は、ひとまず一泊する予定になった。
ローニャさんが手早く前日用意を済ませてくれた。
「今回も転移で行くぞ」
「はーい」
ローニャさんと、いつも一緒の護衛の騎士さん達と、同じ場所に集まると、セレムはさっと私の手を握って、パチっと指を鳴らす。足に魔法陣が広がって、淡く光る。これ、本当にテンション上がるなぁ。
ギュッと目を瞑ると、足元の地面が消える感覚になって、下へ引っ張られる・・・と、思った途端に足に地面が着く。ほっとして、そっと目を開けると、周囲は真っ白な大理石で出来た部屋だった。
目の前の大きな窓からは、綺麗な木々が見える。
「セレム、お久しぶりです」
静かな柔らかい声がして、後ろを見ると
長い濃紺の髪を下ろして、綺麗なセレムと同じ蒼い瞳をした美少女が立っていた。白い長いワンピースが、少し薄い褐色の肌に映えて、儚げに見える。
「カエさんですね?初めまして、ラウラ・ノルウェルです。会えて嬉しいわ」
「あ、か、カエと申します!こちらこそお会いできて嬉しいです!」
にっこりと笑うと、バリスさんに似ている・・。
はわ〜・・、美人さん兄妹だなぁ・・。
「ラウラ姉さん、お久しぶりです。キリル殿は、お元気ですか?」
「ええ、ごめんなさいね・・。さっきまで居たんだけれど、急に呼び出されてしまって・・、もうそろそろこちらに来ると思うわ」
ほんわか・・といった感じで話すラウラさん・・。
あ、すっごい癒されるなぁ・・。
「あ、そうだ・・これ、もし良かったら・・お土産です!」
「まあまあ、ありがとうございます!ララのお茶ね!懐かしいわぁ!そうそう、結婚おめでとうございます。セレム、運命の相手に出会えて本当に良かったわね。カエさん、どうぞこれからもよろしくお願いしますね!」
「こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします!あ、こっちはリファートさんが作ってくれたカメラで・・」
と、言いかけた途端に扉が開く。
「すまない!待たせたね!!セレム君、お久しぶり!あ、カエさんだね!結婚おめでとう!!ところで、リファートさんからカメラ・・という声が聞こえたんだが、あ、これが噂のカメラだね!!」
金色の長い髪を緩くまとめ、綺麗な青い瞳をキラキラさせた、おっそろしく美形な男性が入って来た。
ザ・王子様!!プリンスったら、プリンス!!っていうくらいの美形だ。
だめだ・・語彙力が足りない・・!!
「もう、貴方ったら・・!お客様の前なのに・・、落ち着いてください!」
ラウラさんが、プンプン!と言った様子で注意しているが、可憐だった。
私が、思わずセレムを見ると、
「キリル殿、お久しぶりです。お元気で何よりです・・。こちら、お土産のカメラですが、使い方はカエの方が詳しいので、まずお話をしてから、じっくり聞いてください」
セレムは、カメラを渡すべきか迷っていた私の手を、そっと止め・・
ローニャさんが流れるようにカメラを受け取って、箱に戻した。
流石の連携プレー・・・。
ちょっと不服そうに見たキリルさんだったが、コロッと表情を変え、
「じゃあ、とりあえず問題をさっさと終わらせよう!!」
と、にっこり笑う。
・・・なんだろう、長兄のエフェクさんの顔がちらつく・・・。
セレムの小さいため息を、背中の後ろで聞いたが、とりあえず笑っておいた。