真夏といえば。その4
セレムの水着着用の許しを得たので、早速着替えようとする。
と、ドアをノックする音が聞こえたものの、入ってくる気配がない・・。
不思議に思ってドアを開けると・・すっごいいい笑顔のリファートさんが、何やら丸い、白い物を抱えて立っていた。私もセレムも目を丸くする。
「り、リファートさん!?」
「やー!急にごめんね?カエさんのお手紙を頂いてから、すっごいの閃いて作ったのを持ってきたんだ!!これね、アイシェもすっごく喜んでくれたんだ!名付けて、白丸ちゃん!!」
そういって、丸い物からそっと手を離すと、ふわりと浮き上がり、リファートさんの頭の上で止まる。
「アイスの空気を出しておくれ」
リファートさんが、そう言うと、丸い白い物体はクルクル回りながら、冷たい風を出す。
「こ、これ・・もしかして、クーラー・・・」
私が呆然とした顔で言うと、リファートさんがにっこり笑い、白い、丸い物体を指差す。
「カエさんの手紙を見て、考えたんだ・・。扇風機、サーキュレーター、そして、クーラー・・・これを全部一つにまとめ、夏は氷の魔石、冬は炎の魔石を入れて稼働すれば、夏も冬も使えるんじゃないか・・ってね。これ一台で、この城くらいなら、一番高い場所に置けば、全ての部屋を涼しくできる優れもの!・・まぁ、魔石代は高くつくけど、城が丸っと冷やせるなら、お買い得だと思わない?」
「・・・リファートさん・・・・天才です!!!!!」
私は、リファートさんと固い握手を交わした。
「どうしても肌を見せられないと言う事情の方もいますし、これは・・・絶対売れますね!」
「・・・しかも、これ・・カエさんが書いておいてくれた温度設定、タイマー設定、モードも変更できます!」
「え・・・もう、即決で買います!!!宣伝もします!!!」
「ありがとう・・!心強い言葉だ!!すでに量産できるように、システムもチェック済みだよ!!」
「素晴らしいです!!」
「更に!!使った魔石を回収して、氷の魔石は氷山へ、炎の魔石は炎山へ置いておけば、また使えると言う・・カエさんのリサイクル・・という理念も取り込み済み・・。これで、意識の高い富裕層への売り込みもバッチリだ!!!」
「えええ、リファートさん、素晴らしすぎて後光がさして見えます!!!」
私達は、盛り上がった・・・。
あまりに画期的な発明品の前に、二人で目の色が変わった瞬間であった・・。
リファートさんは、セレム殿の城でぜひ!と、白丸ちゃんをプレゼントしてくれた。
「はぁああああ・・・・最高・・・・・」
ひんやりと冷えて、適温になった部屋は快適そのものだった・・・。
セレムが、少し言いにくそうに、
「・・・カ、カエ・・・プールは・・・・?」
「あ、白丸ちゃんがいるから・・いいかな・・。セレム、ちょっと嫌がってたし・・。ローニャさんもせっかく水着用意してくれたけど、ごめんね?」
「いいえ、どうかお気になさらず。それよりも白丸ちゃん・・・最高ですね!」
「うん、涼しくて最高!!!これで夏を乗り切れるね!セレム!!」
にっこりとセレムに笑いかけると、ものっすごい落ち込んでいた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・水着」
って、言ってたようにも聞こえたけど、ローニャさんが私の肩に手を置いて、首を横に振るだけだった・・。ええ・・っと、なんか・・・ごめん???
とりあえず涼しくなった城は、お仕事している皆さんにも大好評だった。
ちなみに一日中、ずっと落ち込んでいるセレムに、そっと・・
「涼しくなったので、セレムとくっついて寝るのも、苦じゃないかも・・」
と、言うと・・、ご機嫌な顔になって、まだちょっと寝るには早いんじゃない?という時間に、意気揚々と寝室に連れていかれ、まぁ、なんというか、ええと、白丸ちゃんがいても溶けそうでした・・・。
うん・・・早く涼しい季節になるといいな・・・。