結婚しちゃいます。
星が光り始める頃、結婚式が始まる。
夜の結婚式・・不思議な感覚だった。
昼間じゃないんだなぁ・・。
セレムと腕を組み、大広間への扉が開かれると、一緒に入る。
大広間へ一歩入った途端、集まってくれた人達がこちらを一斉に向く。
ドキドキする・・!!!緊張で、顔が真っ赤になってると思う・・。
セレムの怒涛の勢いで決まった結婚にも関わらず、見知った顔が多くあった。
昨日ぶり・・の、アイシェさんや、リファートさん、急な式に関わらず来てくれたバリスさん、ハーリカさんも柔らかい笑みでこちらに手を小さく振ってくれて、そっと挨拶をした。ローニャさんや、いつも護衛してくれる騎士さん達も、メイドさん達もいた。
私達が進む前に祭壇らしい場所があって、神官長のアークさんがいて驚いた。
え?!もしかして、すぐ来てくれたの?!!
驚いて、目が合うとニコニコと微笑んでくれた。
お忙しいのに、すみません・・・。
あとでセレムにやっぱり注意はしておこう。
ホウレンソウは、早めにすべきだ!・・と。
静かに歩いて神官長さんの前に立つと、大きく、
だけど、しっかりとした声で、持っていた本を読み出した。
「今日は、こうして竜族のセレム様、カエ様の結婚式にお集まり頂き、感謝です。神の前で、このお二方の結婚を宣言いたします。よろしいでしょうか?」
「「神の前で認めましょう」」
後ろに立っている、皆の声が一斉に広間中に響く。
思わず、ビクッとしてしまった・・。
「神の前で、セレム様、カエ様、お互いが誠実でいる事を誓いますか?」
セレムと私の目が合う。
あ、これ誓いますとか言った方がいいやつかな?
セレムが「はい」と言うと、私へ神官長さんが目で合図してくれたので「はい」と答える。
う、うわぁ・・ドキドキする〜〜〜。
「神と、立ち会った縁ある者達に認められた事で、今二人は結ばれ、神の祝福を受けました」
神官長さんが、そう言って・・私とセレムの手を取って、重ねる。
「神に今、認められ、祝福を受けた二人が永遠に喜びの中を歩めますように・・」
そういうと、手がホカホカ暖かくなる。
あ、これ言霊の力を使っている時みたいだ・・。
と、ハラリと小さな花びらが落ちてくる。
え・・・?不思議に思って、上を見上げると、広間に花が雪のように舞い出す。
薄い桃色の花びらが、大広間一面に舞い散って神官長さんを始め、広間にいた人が歓声をあげる。私は、自分の家の近くにある桜並木を思い出す。甘い春の香りが広間一杯に広がり、胸が締め付けられる。
春の桜が一斉に散っていくような光景に見とれていると、目の端で、リファートさんがめっちゃ写真撮ってて、思わず笑ってしまった。
「・・セレム、すごいね!桜みたい!!」
「・・・さくら?」
「ハーリカさんの所へ行った時に、話していた春に咲く花の名前なの!門出の時とか、お祝いの時に咲く花って言われてて、そういう時に使われる花なの!これって、結婚式の時の演出なの?」
セレムは、どこか切ない目でこちらを見る。
「・・・これは、恐らくカエの世界の神からの祝福だと思う。通常はないんだ」
「・・・・へ???」
私の世界の神様が・・・?
満開の桜をもう一度見て・・・、思わず胸が一杯になった。
「カエを祝ってくれているんだな・・」
私は、セレムの手を握って、
「私達・・・だよ」
そう答えた。
花びらを捕まえてみようとする皆を見つつ、舞い散る桜を二人で見た。私の故郷の一部を、セレムに見せてあげられた気分だった・・・。
「神様・・・ありがとう」
随分と遠い所へ来たけれど、門出を祝ってもらえるなんて嬉しい・・。誰にも聞こえない声で、私はそっとお礼を言う。
そうして式が和やかに終わり、ゆっくりと夜は更けていった。