そうなるよね。
夕方である・・・。
まぁ、赤い夕日が綺麗・・・。
夕日に照らされたドレスも綺麗・・。
若干遠い目をした。
うん、ドレスだな。アイシェさんと選んで作ったドレスだ。近くお祝いがあるって言ってたアイシェさん・・・これの事だったんですね・・。すぐ結婚するって思ってたんですね・・すげえや。
私の着ているドレスは、ちびっ子セレム君の意見も反映されていて、肩を出したドレスなんだけど、裾が真っ青な海を思わせる色が下から上へとグラデーションのようになっているのだ。上の部分は白いレースで、覆われていて・・これがなかなか素敵なのだ。
髪も綺麗に編み込まれ、白い花が飾られている。
鏡で化粧された自分を見ると・・
ちびっ子セレム君が、
「海へ行った思い出のようなドレスですね!」
って、ニコニコしてたなぁ・・と、思い出す。ああ、可愛かったなぁ・・。
リファートさんから、絶対薬をもらっておこう。
トントンとドアをノックすると、返事を待たずに部屋へセレムが入ってくる。前のめりすぎだよ・・。勢いが凄すぎだよ。
「もう、セレム・・ちょっとは落ち着こうか?」
「・・・・カエ・・」
真っ白な軍服のような服を着て、蒼い瞳の色のマントを付け、前髪を後ろに撫で付けたセレムが立っている。うわ、かっこいいな!!!!
「わ・・、セレム・・格好いいねぇ・・。あ、そうだ!カメラで撮りたい!」
私は、写真を撮ろうとテーブルへ寄ろうとすると、手を握られ、セレムの方へ向かい合うように向きを変えられる。
「・・・・・何?写真は後がいい?」
「違くて・・、その、もう少し・・カエを見せて欲しい・・」
あ、ああ・・はい・・・。
ふわふわといい香りがする。
ちょっと俯いて、セレムから一歩下がって、ドレス姿を見せる。
「ちびっ子セレム君が、これがいい!って言ってたんだよ」
「小さい俺の意見が反映されているのは、気に食わないが。流石俺だな・・」
「ものすごく複雑な感想だね???」
パニエも着ているので、裾はふわふわしていて、海の揺らぎを思わせるデザインは、結構・・いやかなり乙女心をくすぐるんだよね。可愛いな。うふふーっと思わず笑ってしまう。
「・・・・可愛い」
ボソッとセレムが言うものだから、びっくりした。
「あ、そういえば・・そう言われるの初めてかも・・?」
「・・・・慣れてなくて・・、でもいつも思ってる」
ぶっきらぼうに、目線を泳がせながら言うセレムに、思わず赤くなる。
「・・・・・・カッコつけ・・」
「いつだって格好いいと思われたい」
クスクスと笑って、そばへ来ると
ドレスを気にしつつ、そっと抱きしめてくる。
そういう小さな心遣いとか、優しい所が、私は好き・・・なんだけど、
私はまだセレムみたいに、素直に言えない。
「あの・・結婚式って、何をするの?私、ローニャさんに全部セレムに任せておけって言われただけで・・」
「ああ、神の前で宣誓するだけだ」
「そんな簡単に終わるものなの?!」
「王だったら違うな。三日三晩、兄の時は祝ってたな」
「王子で良かった・・・・」
「拝まなくていい・・・」
思わず天を仰いだよ・・。
一般庶民の私が王子と結婚するだけでもびっくりなのに、
三日三晩お祝いされたら、魂がどっかに飛んでいく自信がある。
「カエ、そろそろ時間だ」
その声色にドキっとする。
・・本当に結婚するんだ・・。
ちょっと手が震えて、セレムの手を取ると、柑橘系の片翼の香りがする。
「・・俺と出会ってくれて、ありがとう」
優しい蒼の瞳が嬉しそうに見つめる。
私はセレムの耳元へ背伸びすると、ちょっと屈んでくれる。
「・・・・・セレム、大好き・・・」
すっっごい恥ずかしかったので、物凄い小声で言った。
言い終えて、目を逸らしたら、キスされた。
「・・・・・・このまま、どこかに閉じ込めたい・・・」
顔が真っ赤なセレムが、ちょっと不吉な事を言ってた・・・。
いや、これから式ですけど。