はい・・・?
セレムと私、おもちと一緒に自動で開いた扉へ、ドキドキしながら入っていく。
後ろで静かに扉が閉まった音がした。
私は、はぁ〜〜っと大きく息を吐いてから、
「セレム・・・ここって、神の間って所・・?」
「俺も父上に連れられて、一度だけ来た事があるが・・確か、もう少し奥だ」
「そ、そっか・・」
手をセレムが一度離すと、ゆっくり私の頭を撫でる。
「セレム・・・?」
「大丈夫だ」
「・・・ありがと・・」
ちょっと・・・いや、かなりドキドキと緊張していたので、二人になって(おもちもいるけど)ようやく、ホッとする。セレムはニコッと笑うと、また私の手を握って、一緒に奥へと進んでいく。
小さな入り口があったので潜って入ると、建物の中は水で満たされていて、水の上に真っ直ぐ一本、小さな橋が掛かっている。橋の向こうには小さな小島があり、小さな木が一本生えていた。
「・・・・ここが、神の間・・・?」
そこは、夢の中で見たような場所だった。
小島にはベッドがあったし、橋もなかったけど・・
「夢の中で見た場所と・・似てる・・」
「・・やはり、カエは神に呼ばれたんだな・・」
「そうなんだ・・。よ、良かった・・・夢じゃなかった・・・」
こんなに緊張するお参りなんて、初めてだよ・・。ようやく緊張が解ける。
橋を渡って、小島へ進む。
おもちが突然手を離れ、目の前の薄い黄緑の葉をした木に飛び乗る。
と、突然木がキラキラ光りだす。
『・・・会いに来てくれて、嬉しいよ・・』
あ・・!神様の声・・!私は、驚いて木をじっと見た。
「世界の神よ、今日は貴方の元へ招いて頂き感謝します」
セレムが、スッと・・静かに礼をするので、一緒に礼をする。
『セレム・・・竜族の剣よ・・、この30年、世界のために労を尽くし、心を尽くしてくれた事・・感謝する』
「有難き、お言葉・・」
『神といえど、我が力だけでは、この世界を治す事は難しい状況であった・・。それを竜の眷属、そなた達が自分達だけでなく、周囲へ心を砕いたからこそ、カエをこの世界へ呼び、力を託す事ができた。礼を言う。』
セレムは驚いて、目を見張り・・言葉が出ないのか、立ち尽くしている。
「・・・え、じゃあ・・セレム達が頑張って、皆を助けようとしたから、私がここに来られた・・・って事ですよね?」
それって、すごい事だ!
いつもセレムは私を誉めるけど、セレム達の努力があったからこそなんて・・・頑張った甲斐があるよね?そう思って、セレムを見ると、セレムは辛そうな顔をしてる。
「え?なんで、セレム・・嫌だったの???」
「・・・・嬉しい・・・が、カエは・・結局、この世界のために、元の世界を捨てる事に・・」
ああ・・・。
30年、ずっとこの世界を心配して、色々していたのに・・
種が発芽すれば喜び、そのために私を守ろうとして、いなくなったら、ずっと探して、見つかったら、誰よりも喜んで・・、綺麗な景色を一緒に見たり、星光の虫を嬉しそうに一緒に見せてくれたセレム。
神様に褒められてるのに、私の事を心配するセレム。
馬鹿だなぁ・・
いつだって、そんなに人の事ばっかり心配して・・
私は、辛そうな顔のセレムを見たいんじゃないぞ。
笑顔が見たいんだ・・セレムと同じように。
「神様、ちょっと失礼」
そう言って、セレムにぎゅっと抱きつく。
「カエ・・・?!」
「私は、セレムに会えて良かったよ!勝手に人を不幸にしないで」
じっとセレムを見て、それから笑いかけようとしたのに、涙が出た。
なんでそんなに優しいんだよ!!
涙を見せまいと、セレムの胸に顔を押し付けてやった。神の御前ですけども。