挨拶って大事だよね?
石で出来たアーチみたいな所を潜ってから、真っ直ぐな石の道をガタゴトと揺れて進む。
神殿の前は、大きな広場になっていて、白い円状の噴水がある。
周囲にお参りに来たのかな・・、白い服を着てたくさんの人達が寛いでいる。白い服を着るの・・マナーなのかな。そう言えば、私もセレムも白い服を着てた・・。今、気付いた・・。
「セレム、お参りに行く時って、白い服を着るの?」
「白い服・・でもいいし、物でもいい。まぁ、地方の神殿は何でも大丈夫だが、国の神殿だからな。」
君、作法そんなないって言ってたよね・・?
「・・・ありますやん、お作法〜!」
「俺やローニャが知っているんだ。フォローしていくから心配するな」
「・・・っ、あ、ありがとうございます・・」
心強いお言葉と共に、そっと手を繋ぐな。ええい、神の御前であるぞ!!
でも、照れくさいがセレムの心遣いはありがたい・・。
やがて、神殿の前に馬車が着き、セレムとローニャさんに付き添われて降りていく。
見上げると全体が大きな白い四角い建物の神殿は、色々レリーフみたいなものが掘られている。と、神殿の大きな金色の扉が開かれ、一番前におじいさん、その後ろを同じ長い白い服を着た人たちがぞろぞろ出てくる。
そして、私達の前に来ると、ゆっくり礼をして、おじいさんが一歩前に進みでる。
「セレム様、お久しぶりでございます。此度は、吉兆の便りを賜り・・」
「ああ、そう畏まらなくていい。カエ、こちら神官長のアークだ」
「は、初めまして・・カエです」
会話中断させちゃっていいの???
ちょっと焦りつつ、私は銀色の髪と長い髭をしたアークさんに挨拶する。アークさんは、目を細めて、
「カエ様、お初にお目に掛かります。こうして、30年・・神託を受ける場所が、全く何もできず・・歯がゆい思いをしていた所に、カエ様の神託を受けたという知らせ・・この国の神殿だけでなく、世界中が歓喜しております」
「せ、世界中・・・」
あ、そんなワールドワイド???
っていうか、本当に夢だったらどうしよう・・背中に冷や汗が流れる・・。手に持っているおもちを、思わずギュウッと掴みそうになる・・。
「あ、よ、喜んで頂けて何よりです・・?」
「それでは、セレム様、カエ様・・早速、奥の神の間へご案内いたします」
「神の間・・・?」
こそっと、セレムに聞くと
「神官長と、王族、それと神託を受けた者だけが入るのを許された、まぁ・・神域に近い部屋の事だ」
「・・・・・・・・胃が潰れそう」
「手を繋いでおけ」
そう言って、私の手を握るとふっと微笑むセレム。
今ほど、君が頼りになると思った事はない・・。いや、何度もあったな。
そう思い直して、手を繋いで奥へと進んでいく。
神殿の中は、真っ青な色一色だった。
外国の空を思わせる鮮やかな青で、白とか、赤とか・・日本の神社とかをイメージしていたから色彩に驚く。
「すごい・・青、一色なんだね・・」
「コルトのシンボルカラーは青だからな」
「国のシンボルカラーなんてあるんだ・・」
高い天井に、石造りの神殿は、カツカツと歩く音が響く。
いくつか金の扉を潜って、10分くらい歩いた所に、大きな金の扉の前に騎士さん・・なのだろうか、扉の前で警護している人達の所へ着く。
アークさんが、扉の前へ進み出ると、騎士さん達は扉から離れて、膝をつく。え?なに??
「神官長のアークです。セレム様、カエ様を神の間へお連れいたしました。神よ、どうぞお答えください」
扉が、ギッ・・と重い音がして自動的に開く。
後ろで、一緒について着た人達が、おおっ・・て声を上げる。なに?何なの??セレムと手を繋いでるけど、手汗がやばいし、離したいけど、怖くて離せない。
「・・・カエ、行くぞ」
「・・・う、うん」
何なら、両手足が同時に動いているんじゃないかと思いながら、一緒に通された部屋へと足を進める。
ドキドキしながら進んだ部屋に、その後すぐ驚くことになる。