あれ・・?
いよいよ帰る朝。
ふっと、目が覚めて布団の中で軽く伸びをする。
いつもは鳥の鳴き声が聞こえるのに、今朝はいやに静かだ・・。
・・あれ?そういえば、セレムは??
右隣に寝ていたはずなのに、布団を触ってもいない。
「セレム?」
パッと起きると、ベッドが小さな陸地の上にポツンとあって、それを囲うように水に覆われている。湖?なんだろうか・・霧で遠くはぼやけているので、良く見えない。
「え?・・・・夢?」
でも、布団はふかふかだし・・
手触りは現実っぽい、ただセレムはいない。
あのセキュリティの鬼みたいなセレムがいないのは、非現実的だ。
『そうだろうなぁ・・』
不意に声がする。
「え?誰・・?」
辺りを見回すけれど、誰もいない。
と、小さな光の玉がふわっと布団の上に転がって出てきた。
「あれ??おもち???」
『ああ、すまんな・・。森の精の姿を借りたが、私はこの世界の神だ』
「神?!!!!」
びっくりしつつ、そっとおもちを持ってみる。
『神殿に来たいと、話していたので・・こちらも礼を言わねば・・と思ってな』
「え、いやいやこっちが先に行きますって!あ、どうもお世話になりまして・・」
『ふふふ・・お前さんは良い子だな・・』
「きょ、恐縮です」
丸いおもちなのに、中身は神様なので、ちょっと緊張する。
『セレムも良い子なんだが、お前さんの事になるとちょっとなぁ・・』
「神様にも、言われるくらいなんですね・・」
『だが、お前さんに託した力は大きいので、セレムの側にいる事が一番安全だからな・・。』
「確かに・・。あの、もしかしてだから片翼なんですか?」
ちょっと、そこ確認しておきたい。守りが必要だから、
片翼だった・・ではセレムに・・なんか申し訳ないし。
『いや、それは偶然だ。こちらの世界に呼んだのは私だが・・』
「あ、じゃあ・・良かったです。なんか申し訳ないなって思ったので」
『こちらに呼んだのは・・問題ないのか?』
「だって、30年間も苦しんでいるんでしょう?まぁ・・役に立てているかは、あまり実感ないですけど。あっちの世界の家族も大事ですけど・・・帰れたら帰りたい・・とも思うけど、でも・・・こっちの世界でも大事な人が出来たし・・」
大事な人・・
セレムがパッと出てきて、ようやく思い出す。
「あの、ここってそういえばどこですか?あとセレムは??」
『ここは、神域の中だ。セレムは現実の世界で寝ているよ』
「あ、そうなんですね・・良かった」
ホッとすると、おもちは淡く光る。
『お前さんの清い気持ちのおかげで、私にはどうにもできない浄化ができて・・本当に感謝してる』
「神様なのに・・そういう事ってあるんですね?」
『制約がある事で、力が使えるのだ・・。まだ私は神格が低いのでな・・。この世界の子供達には迷惑な話だろう・・。そこでお前さんのような清い心を持った人間を、呼ばせてもらったんだ・・』
「き、清いのかなぁ〜〜???」
食い意地は張ってるし、セレムには結構迷惑かける時もあるし・・。
『そういうお前さんだから、私は力を託したんだ・・。』
「ソウデスカ・・。では、今後も頑張ります」
神様、直々に褒められると嬉しいな・・・。
おもちをちょっと私も撫でてみた。
「神様、改めてありがとうございます。私、最初ここに来てショックだったりしたけど、優しい人ばっかりで、有難いなって思ってます。植物を使って、これからも浄化・・?が、頑張りますね」
『カエ・・・。青い星の民は優しいな・・』
「地球の事ですか?人によると思いますけど・・・」
意地悪な人や、怖い人は普通にいたし。
まぁ、神様が選んでここへ来たって事は、そっち枠ではない・・という事か。うん、今後もこのままで行こう。
『さて・・そろそろお前さんを戻すかな・・。カエ、急にこちらへ呼び寄せてしまい、申し訳ない・・。だが、本当に感謝している。どうかこれからもこの世界を頼む・・。』
「はい!わかりました。」
『セレムと、今度神殿にくるのを楽しみにしているぞ』
「あ、はい。近くお邪魔しますね」
淡くおもちは光り、少しずつ光が大きくなる。
眩しくて、目を瞑ると体が重く感じ、ゆっくり目を開けてみると、大人に戻ったセレムの寝顔があった。