いざ異世界旅行!その16
お昼をビーチ併設のカフェで食べ、お屋敷に戻ると、アイシェさんが出迎えてくれた。
「海は楽しかった?」
「はい!あ、写真もとってきました!」
「あら〜楽しそう!そうか、風景だけじゃなくて、作った物を撮るとか、写すものは自由なのね」
「あ、そうなんです!私の世界では料理とか、飼っている動物を写す人もいました。」
「じゃあ、我が家は幻獣ちゃんを写してみようかしら!」
アイシェさんは早速思い付いたように、指をパチっと鳴らすと、
目の前に突然、真っ白な長い毛に覆われた大きい犬が出てきた。
「・・・え?い、犬・・・・???」
私と同じくらいの大きさに、ギョッとして、思わず後ずさると、背中側にいたセレムが受け止める。
「幻獣・・といって、魔獣より貴重な生き物なんだが、まだ赤ん坊みたいなものだから、これでも小さいんだ。エルフの国から貰い受けて、ある程度大きくなるまでここで育てているんだ」
「へぇええええ・・・・」
大人セレムの流れるような説明は、今日も冴え渡っているな。
私はカバンからカメラを出して、アイシェさんに渡す。
「早速、撮ってみてはどうですか?幻獣ちゃん・・なんていう名前なんですか?」
「ベアズちゃんよ〜!ベア〜!こっち見て〜」
ベアズ・・・・熊みたいな名前だな・・。
アイシェさんは夢中でベアズちゃんを撮っていると、リファートさんがやって来る。アイシェさんが写真を撮っているのを見て、思い付いたような顔をする。
「あ、なるほど〜。生き物を研究してる人に売り込んでもいいね」
「・・リファートさん、流石ですね・・。私の世界だと、悪い事をした時の証拠として撮っておいたり、何かを作る時のやり方を動画で撮っておいたり・・色々活用してました。」
「もっと聞きたいけど、セレム殿の邪魔しちゃ悪いから、思いつく限りの活用法、書いておいてくれると嬉しいな」
「注意点なんかも書いておきますね。悪用する人もいますから」
「うわ〜〜!助かるなぁ!!あ、帰りに作ったカメラお土産で渡すね!」
「え、それはめちゃくちゃ嬉しいです!!!」
なんと!ちょっと欲しいな・・、でも、試作品だしなぁ・・と思っていたら、嬉しいお言葉!!思わず、セレムに振り返って笑いかけると、セレムも笑い返してくれた。えへへー。
幻獣のベアズちゃんを撮りまくったアイシェさんは、山の風景も自分で撮りたい!と、渋るセレムを無視して、リファートさんと私達と一緒に夕方から行くことになる。一緒にお出かけ・・私は楽しみなんだけどなぁ。
大きな馬車に、しっかり警護されて一同山へ出かける事になった時は、ちょっと固まった・・。
お屋敷から1時間くらいで、馬車は山へ着く。
窓から、坂を登って行く様子を見たけど、山はあまり見えなかったので、どんな所かとワクワクしながら降りる。
「・・・・うわぁ・・・・!!!」
馬車から降りたそこは、大きなクレーターが目の前に広がる。
クレーターの中には森が見え、その中を小さな川が流れていて、池も見えた。池や川を少し傾き出した太陽の光がキラキラと反射させている。後ろを振り返ると、坂の下にはお屋敷やお城、城下町が同じく太陽の光を浴びて綺麗に光り、海が一面に見える。
「すごい・・・綺麗・・・」
セレムが、そっと手を握ってこちらを見る。
「夕焼けの海も綺麗だが、あちらの川や池も綺麗なんだ。カエに見せられて良かった」
「ありがとう・・・今、すんごく感動してる」
綺麗な風景を見せたかった・・って・・。
いつだって私を喜ばせようとしてくれるセレムが嬉しくて、胸がぎゅうと切なくなる。セレムを見ると、嬉しそうに笑うから、照れくさいけど、笑い返した。うぅ、いい香りがする・・。
周囲をアイシェさんと私で交互に写真を撮ってから、セレムの転移魔法でクレーターの中へ一緒に行く。アイシェさんは、リファートさんと腕を組んでニコニコしてて、可愛かった・・。
「私とリファートが、カエちゃんに見せたいものもあるのよ!」
っていうので、ワクワクしてきた!
え、なんだろ???