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現状確認も大事。

昼間は気が付かなかったけど、やっぱりトルコっぽいランプがいくつも高い天井から吊り下げられ、ぼんやりと照らされたセレムの部屋へローニャさんと向かう。なんのルールも聞いてないまま・・。痛恨の極み。

っていうか、おハイソな世界って食事の前に着替えるって本当なんだね。

転生モノとか読んでおいて良かった。ああー、はいはいそれね!みたいな・・・。


綺麗な濃紺の首元に繊細なレースが縫いとめられたロングワンピースは完全に好みだったので嬉しかった。ふわふわだぜ。植物係は守備力が上がったぜ。


なっがいテーブルを想像してたけど、意外に家族で食べるくらいの大きさのテーブルにちょっと安心する。いや、戦いは始まったばかりだけど。ローニャさんがセレムの右隣の椅子を引いてくれて、ちょっとためらいつつ座ると、頭のゴングが鳴り響く。

目標は地雷を踏まない。


「城の中は覚えられそうか?」

「いや・・、あの、当分難しいと思う。」


あんな広さを、今日だけで覚えられたら素直にすごいよ・・。

棟が4つあるうちの1つがまるっとセレムのための部屋っていうのだけは

流石に覚えましたけど。


「あの・・、結局お城を周るだけで終わっちゃって・・この世界とか、国のルールとかマナーを知りたいんだけど・・」


ローニャさんが静かにサラダを盛ったお皿を私とセレムの前に置く。

へー、こっちもサラダとかから食べるんだ〜。いや、違うそうじゃない。

すぐに脱線する思考を引き戻す。


「ああ、そうか・・。まずこのコルト国は竜族の治める国なんだが、7つの大陸の中で1番小さい国だ。だが、この国は竜族がいるので高い軍事力を誇る。加えて、この世界で多く使われる魔石や鉱石が多く取れる所でな、昔は攻め入って、支配しようとする国がいたが、今は平和だな。」


竜を見たら、絶対攻め入ろうなんて思わないけど、攻め入ろうとする国があったのか・・・

無謀すぎだろ・・。フォークでレタスっぽい野菜を口に入れる。


「平和が一番だよね・・。」


野菜の食感がシャリシャリしてる・・と、楽しみながら食べる。

ドレッシングって、何でできてるのかなぁー、美味しいぞ。


「ああ、平和なおかげで俺の役目もないし、緑化の実験ができるんで助かってる。」

「・・?セレムの役目って、他にもあるの?」


「国防担当」


グッと詰まる喉を誰が責められよう。

それ、めちゃくちゃ大事なやつですやん!!!


「30年くらい前に戦争があって、俺が一番強かったから、それ以来任されてるけど、今は平和だから・・。」

「そういえば兄弟とかいるの?」

「5人兄妹だな。兄が2人、姉が2人、俺は一番下。今は1番上の兄と2番目の兄がこの国を治めてる。姉達は他国に嫁いでるけど、たまに遊びに帰ってきてる。」


まさかの末っ子!しかも兄妹仲良さそうな雰囲気。


「お姉さん達は結婚してるってことは、お兄さん達もしてるの?っていうか、セレム達も人間みたいに、18歳くらいになると結婚するの?」


「ぐうぅっ・・」


セレムが水を飲んだ瞬間に聞いたのがまずかったのか、一瞬吹き出しそうになってのを堪えていた。す、すみません・・・。タイミングが悪くて。


「大体人間と同じだけど、違うのは片翼を見つけてから結婚する・・だな。」

「かたよく・・・・?」

「竜族は、この世界の神が定めた片翼の者と結婚する習わしがある・・。見つけて結婚できた時、初めて大人として一人前になれる・・・。」


へぇええええ〜〜〜つがいとかあるけど、「片翼」かぁああ。かっこいいな。


「え、そういうの大体どれくらいで見つけられるの?」

「最長で100年くらい。平均すると30〜40年かな」


なんでもないようにサラッと言うたけど、人間なんて100年経ったら死んでるし、30〜40年なんて結婚しちゃってて、かつ子供もいるよね・・。あ、だから私の年を聞いた時、心配とかしてくれたのかな。悲しいかな相手などいないんですけどね・・・。


なんでも竜族は家族想いでもあり、結婚すると片翼やその子供を大事にするそうな。長い間、片翼に会えなかった人なんかそうなるよね・・。


「家族の仲がいいって大事だよね。うちも弟がいたけど家族みんな仲良いよ。」


言った途端、なんだか鼻がツンとして泣きたくなった。

あ、ダメだ・・今、食事中だし、泣いちゃったら・・とか

一気に頭がグルグルしてきた。

グッとフォークを掴んで、堪えようとするとセレムが私の横に立って、私の頭を撫でる。


「・・・不安もあると思うけど、今は俺がいるから・・、その・・」


視線をウロウロさせつつ、ぎこちなく撫でる手つきに、今度こそ涙腺が崩壊してしまった。



帰りたい。

帰れない。

寂しい。

会いたい。



膝に乗せてたナプキンで思いっきり涙を拭きつつ、ああもうここで生きていくしかないんだな・・と、頭のどこかは冷静に受け止めていた。しばらく泣いて、ちょっとスッキリした。夕飯は普通に美味しく食べた自分の強靭さを褒め称えたい。だって、お肉めちゃ美味しそうだったんだもの・・・。


心配したセレムが、植物の水やりは明日しようと言い、手を繋いで部屋まで送ってくれた。ドアの前で、手を離すのをちょっとためらいつつ


「おやすみ」


静かに告げて離れた時・・ふわっと優しい匂いがした。


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