いざ異世界旅行!その12
起きたらば、大人のセレム、怒ってる。
一句できた。いや、そうじゃないな。
あっれー?なんか怒られる事したっけ?
まだ寝ぼけているので、頭がうまく回転しない。
でもセレムは、一生懸命怒りを抑えているけど、私の腕を掴む力がちょっと痛い。
「セレム・・どうしたの?なんで怒ってるの?私、何かしちゃった?」
昨日まで可愛い子供のセレム。・・大人に戻ったセレムは、美形な上に迫力がある。端的に言えば恐い。
「・・この映像みたいな物に、カエが・・」
そういって、昨日寝る直前、セレム君が撮った写真を目の前に出される。ぎゃああ告白しちゃってるやつじゃん!
「そ、それは・・」
真っ赤になって、写真を撮ろうとすると、さっと長い腕が邪魔をする。
「カエ・・この男は誰だ?」
「っへ?」
静かな怒りを孕んだ目で、セレムは私を見つめる。
「カエは俺の片翼で、婚約者だ。俺以外、好きだなんて許さない」
「え、ええと・・?」
それ、貴方が言わせたんですけど。あ、記憶がないのか・・。しかし、真実を告げると、イコール好きって告白しちゃうわけで・・。
私はジワジワと顔が赤くなって、言葉が出ない。
それが不味かったのだろう。
誤解したセレムは、一瞬傷ついた顔をして、すぐ目がギラッと光った。
「・・カエは、俺のだ!」
ギュッと腕を掴むと、顔を上に上げられ、
止めようとする前に言葉が消える。
「まっ・」
噛みつくようなキスをされる。
びっくりしてると、セレムの舌がペロっと唇を舐めるので、「やめっ」というと、舌が入ってくる。
ぶわりと片翼の香りがする。
体がビクッとはねて、頭の奥がジンと痺れる。
一気に体中が熱くなって、呼吸ができない。
舌が動く感触にゾクゾクする。
「ん・・」
真っ赤になった私が、ぎゅうっとセレムの腕を掴むと、ようやく唇が離れる。
「カエ・・」
私の首元に、セレムが顔を寄せる。
「そいつはどこにいる・・?」
すっごい地獄を這うような低い声だ。
もう仕方ない・・私は息を吸って答えた。
「目の前の人ですけど?」
私は、大きな声で言ってやった。
「・・は?」
まだ信じられない・・といった顔のセレムに
「リファートさんの作った薬から、私を庇ってセレムが小さくなったの!その間記憶を無くしちゃってたの!後で皆に確認して!映像みたいな物はリファートさんが作ったカメラの写真っていう物で、小さいセレムと仲良くなって、す、好き?って聞かれたから・・返事したの!セレムが好きなの!」
一気に言った。
なんならノンブレスで言った。
なんだ?!まだなんか文句あるのか?!
呆けたセレムの顔を真っ赤な顔で睨む。
「カエは、俺が好き・・なのか?」
「・・す、好き・・ですよ?」
セレムの手が、頬を撫でる。
「本当に?」
「・・本当です・・」
指先が私の下唇をゆっくり撫でる。
「俺も好きだ・・」
セレムが掠れた声で囁くと、私は思わず目を瞑ってしまう。そうすると、さっきとは全然違う優しいキスをされる。
ちゅってリップ音をさせて、啄むようにキスをするから、私はますます強く目を瞑る。
「カエ、大好き・・」
甘い言葉と一緒に、しばらく私は呼吸もままならないほどキスされてしまって、セレムが満足して離れる頃には、溶けてるんじゃないかと思うくらいだった。