いざ異世界旅行!その11
アイシェさん、セレム、ローニャさんと今日は、お買い物である。お買い物ってさ、雑貨とかお洋服とかじゃない?
王族ってさ、違うんだね。
店が貸し切りって本当にあるんだね。
お店のオーナー自らが出迎え、ティールームに通され、ドレスを買う経験って、異世界来なかったら永遠にしなかったと思う。あとすんごい緊張して若干お腹痛い。
「カエちゃん、何色が好き?」
「え、ええと・・私のですか?!」
「そう!私もちょうどお祝いがあって、新しく作りたいと思ってたの!カエちゃんも作りましょ!」
「あ、はい・・?!」
なんかついでに作っちゃうの?!
ドレスって高いんじゃないの??
サクサク採寸され、形を選択するけど、よく考えたらお金持ってない!!どうしよう・・と思っていると
「カエさん、ドレスはバリス兄さんが払うので大丈夫ですよ?」
「え?!なんで?!」
「カエさんの育てた植物・・すごく売れてますから」
「そうだったの?初めて聞いた・・」
「額が額だったので・・。兄さんが管理していますが、近くカエさんにお渡しすると話してました」
額が額って・・バリスさんに管理してて欲しい。ぶっちゃけ怖い・・。
「そういうわけだから、安心してね!ね、これ既製品だけど、似合うと思うわよ!着てみて!」
美女にキラキラした笑顔で言われたら、着替えますよ。何着か着替えてみるたび、セレムが写真を撮る。
「カエさん、綺麗です!」
って言うから照れくさいけど、嬉しいもんだ。
結局、白のレースが綺麗なワンピースを買って着ていく。こ、これ可愛いんだもん・・。
アイシェさんは、次々とアクセサリーや、靴、バッグ・・と、色々なお店へ連れて行ってくれて、なんか一生分の買い物をした気分だった。
「はぁーー!私こんなに買った事ないので、ドキドキしちゃいました。でも楽しかった」
「そうなの?今日は楽しめたかしら?って心配だったから嬉しいわ!」
馬車の中、アイシェさんが嬉しそうに笑うので、私もニコニコしてしまう。ちょっと・・いや大分緊張したけど、セレムやローニャさんがそっとフォローしてくれたり、アイシェさんが気遣ってくれたのも大きいかも。ありがたいな。
と、バシャーと音がして、セレムが私を撮っていた。
「今日いっぱいカエさん撮れました!アイシェ姉さん、明日カメラ返すので、もうちょっとだけ貸してください」
「はいはい、言い出したら聞かないの知ってるわ。丁寧に扱いなさいよ」
姉弟の会話に、なんだか懐かしい気持ちになる。仲良しっていいよね。
お屋敷へ戻ったら、もう夕食だ。
今日は目処が立ったのか、リファートさんも一緒に夕食を食べたが、次回作の構想ができているらしく、熱く語っていた。柔和なイメージだったけど、熱い人なのね・・。
夕食後、ゆっくりお茶をしてたら、ちびっ子セレムは眠たいのかうとうとしてたので、一緒に部屋へ戻る。
もう同じベッドでいっか・・と、さっさと休む用意をし、寝室へ行くとセレムはベッドでしょぼん・・と項垂れていた。
「どうしたの?セレム君・・何かあった?」
「・・僕、そろそろ元の大きさに戻ると思います」
「え?戻るって分かるの?」
「はい、力が満ちてきたなって・・でも僕、カエさんを忘れたくないです!僕の事も忘れて欲しくない・・」
なんか昨日から、ちょっと様子がおかしいなって思っていたんだけど、そういうことか・・と納得した。
やたらと写真撮ってたし、一緒にいたがってたもんね。・・なんだか私も切なくなって、ぎゅうっとセレムを抱きしめた。
「セレム君の事、忘れないよ。短い間だったけど、仲良くしてくれてありがとう。」
「僕の事、好きですか?」
「う、うん・・」
「絶対、絶対忘れないで下さいね!あ、じゃあカメラで撮るので言ってください!」
セレムは、パッと離れるとカメラを構える。
「僕の事、好きですか?」
「え、ええ・・?」
「写真の時間、終わっちゃいますよー!早く」
「う、うぅ・・好きです!忘れないです!」
バシャーと写真が出てきて、真っ赤な顔の私がいる。
動画で撮ったのか・・!っく・・!!!消したい!捨てたい!!
「・・カエさん」
ちびっ子セレムが、泣きそうな顔をする。
「本当に約束ですよ」
「うん、約束する」
枕元に散らばった私の写真。
片付けたいけど、セレムがぎゅっと手を握って、涙を堪えているから、そのままにして頭を撫でる。・また会おうね・・言葉になる前に、私とちびっ子セレムは静かに瞳を閉じた。
翌朝
「カエ・・」
「ん・・?」
「カエ、起きろ」
「・・んんん?」
ものすごい怒りに形相のセレムに起こされる。
んんん?????