いざ異世界旅行!その10
カメラが誕生した事で、みんな嬉しさが爆発し、工房の小人のおじいちゃんは、どこに置いてあったの?!っていうくらいのアルコール類を持ち出し、リファートさんを巻き込んで祝杯をあげ始めた。
アイシェさんは、仕方ないなぁーといった様子で笑い、私達をそっと工房から連れ出してくれた。よ、良かった・・どう出て行こうと、ちょっと困ってたし。
お部屋の前に行くと、アイシェさんが改めてお礼をいうものだから、私は恐縮しっぱなしだった。ちびっ子セレムまで「すごいです!」って言うし、あんまりにも褒められて、舞い上がってしまった私・・。さぁ寝るぞ・・と思った時に気付いた。
「あ、ベッド・・!」
しまったぁあああ!
ちょっと浮かれてて、今日こそセレムにベッドは別にしようって言うタイミング逃した!慌ててローニャさんに言おうと思って後ろを振り向くと、風のように「おやすみなさいませ」とおもちを連れて去って行った。
お、おもちーーー!!!!
あとちょっと待てーーー!!
今、絶対わざと素早く出てったでしょ!!
なんなら返事はしない!くらいの勢いだったので、仕方なく諦めて、寝室のドアの方を見た。
「いいや、今日も素早く寝よう・・」
そう決意し、ドアを開けるとちびっ子セレムもちょうど入ってきた。
「ごめんねセレム君・・今日別々にって言うタイミング逃しちゃった・・。狭いかもだけど、今晩もよろしくお願いいたします・・」
「いえ・・僕は全然構いません!カエさんとなら嬉しいです」
「あ、ありがとうございます・・」
ちびっ子にフォローされる私・.・もうちょっとしっかりしないとだな。
「カエさんは大事な僕の婚約者ですし!」
「あ、うん・・ソウデスネ」
「明日はアイシェ姉さんが女同士で買い物しましょうって話してました!」
「あ、そうなの?わー楽しみだ!どこに行くのかなー?」
「アイシェ姉さんは、お買い物大好きなんで、色々行くと思います!」
「・・そっか。それは、早く寝ておこう・・」
明日は体力が持つだろうか・・気を引き締めて行くぞ!と、布団に潜りこむと、セレムがそっと布団から顔を出して、遠慮がちに手を出す。
「・・あの、手を繋いで寝てもいいですか?」
「あ、はい・・」
大変照れくさかったが、可愛くお願いされちゃうと、お姉さん心が発動する。
そっと手を握ると、
「今日は僕と夢の中でも遊んで下さいね!」
「ねぇ、そういう台詞って王子様はどこで勉強するのかな?!」
・・うん、こりゃ早く寝よう!
何やら話しかけられたが、私は夢の中へ逃げるが勝ち!!と判断して早々に爆睡した。
次の朝。
「カエさんが昨日、僕と一緒に過ごしたいって言ったので、アイシェ姉さんとのお買い物に同行します!」
めっちゃいい笑顔で宣言した。
あっれー??!
昨日そう言ったっけ?!
あれか、寝ぼけてる時に言質取ったのかな・・。まぁ、そうなるぁなって薄々思っていたので、いっか。
「まったく・・セレム!少しは遠慮なさい!」
「まあまあ・・私も弟が小さい時は、こういうのよくあったので・・」
「僕は弟じゃなくて婚約者です!」
「ソウデシタ。スミマセン!」
朝から花束を早速プレゼントしてくれたセレムは、今日も冴えわたっている。
ちゃっかりリファートさんから、カメラまで借りて、朝から私を激写してる・・。やばいこれマジで新婚旅行で張り切る旦那みたい・・。
「さあ!朝食を食べたらお出かけしましょうね!」
アイシェさんもやたらと張り切っている。
が、頑張ってついていくぞー!!!
若干心許ない、拳を上げてみるのだった。