いざ異世界旅行!その8
急に元気がなくなったちびっ子セレム・・・。
朝早起きして眠いのかな・・、朝食食べすぎたのかな・・。
「セレム君、調子悪い?ここで今日はゆっくりしよっか」
「いえ、大丈夫です!ちょっと考え事してただけです!海、行きたいです。」
ちろっと上目遣いで見てくるセレム・・・。
なにその高等テクニック!可愛いぞ!!とはいえ、ちょっと心配だったりもして・・。
「んー・・・じゃあ、お昼前には帰ってこようね」
とりあえず、午後はまったりしよう・・と、約束する。小さい子の体調に合わせた配慮は大事だもんね。お姉さんやってたし、その辺は心得たものよ!ローニャさんと護衛騎士さん達と、そうして昨日も行ったビーチへと馬車で出かける。
「わーーー、今日も綺麗だなぁ!」
今日も今日とて、私は革靴を早々に脱いだ。
青い海、白い砂浜!足に水つけたい!!
ちびっ子セレムは、目線がウロウロしながら、僕の前だけですよ!?と照れていた。安心して少年。こんな王族専用プライベートビーチには誰も来ないから・・多分。
セレムも、照れ臭そうに一緒に足を水につける。
「ハーフパンツいいなぁ・・。私もそれくらい短いパンツはいてくればよかった・・。」
「だ、だめって昨日言いましたよ!?」
「できれば泳ぎたいんだけどなぁ〜、こんなに綺麗な海だしさ。リファートさんのカメラが出来上がったら、せめて写真を撮りたいな・・」
「写真・・・」
ポツリと呟いたセレムは、ちょっとうつむく。
「リファートさん、すごいよね。昨日の今日でカメラ作っちゃうし」
「・・はい、僕はなにも出来ないなぁって思いました」
「あ、だから元気なかったの?」
「・・・・あんな風に、カエさんを喜ばせられないなって・・思ったら・・」
「え、ええーーーーー?!そんな風に思ってたの?どんだけいい子なの?!」
思わずセレムの頭を撫でると、驚いた顔でこちらを見る。
「朝、お花くれたり、手を繋いでくれたりしたじゃない?私、十分嬉しかったよ!そんな風に思ってくれて、ありがとうね」
可愛いなぁ・・。こんな風に誰かに喜んで欲しい!って、小さくても思うんだな・・と、じわじわと嬉しくなる。あ、でも大人セレムもいつもそんな感じかも。喜ぶと、嬉しそうに笑うもんね。・・そっか、ちびっ子とはいえ、セレムには違いないんだ。なんだかそう思うと、大人セレムに会いたいかも・・と、ちょっと思ってしまう。でも、ちょっとね!
「カエさん、僕のこと考えてください」
急にセレムが手を握ってきた。
「・・・え?考えてたよ・・??」
大人セレムは君でもあるし・・。
「今の僕だけ考えたり、見て欲しいんです・・」
ち、ちびっ子ーーーーーーーーーーー!!!!!!
どこでそういうの履修すんの?!
今、違う扉開きかけたからね!?あっぶねー!!!思いっきり閉めたわ!!!い、息だ!息をしよう。
「・・・・・うん、わかった。とりあえずわかったけど、ちょっと落ち着いて」
「じゃあ、僕のこと好きですか?」
「・・・・・ええと、一旦落ち着こうか?」
私は両手でそっと顔を隠した。あとちょっと現実逃避した。大きくても、小さくても、セレムはセレムだった。
「・・・・・よし、ちょっと喉が乾いたし、お茶でもしよっか!」
話の腰をぼきりと叩き折り、ちびっ子セレムに声をかける。
「はい!お茶デートしましょうね!」
ぎゃあ折れてない!!!むしろ鋼のメンタルが襲いかかる!!
しかもちびっ子だから、無下に断れない!!!
大人セレムから逃げたはずが、子供セレムにまで迫られて、私は虫の息だった・・。