規約はしっかり読もう。
あらかた植物に水をやると、私の左の腕だけが悲鳴をあげていた。
花屋の娘なのに、腕がプルプルしちゃう量の植物の多さ・・!!!
あとお願い右手を!離してくれ!!それだけでも、だいぶ違うと思うの!
「なんでこんなに植物を王子様自らが育ててるの・・・?」
左手をプラプラ振りつつ、思わず聞くと
「ああ、この国は山や谷が多いから、どうしても緑が育ちにくいんだ。
できれば、もっとこの国を緑豊かにして、農作物をもう少しとれる環境にしたくて、ここで実験してるんだ。」
そういえば王子様だったね。そっかぁ〜緑が少ないと困るのは異世界も同じか。
「私が最初にいた森は、どう見ても緑が多かったけど・・?」
「あそこは、国の中で結構緑は多いが、魔物も多くて・・、竜族が住むにしても、環境がいいとは言えない。出来れば、住民が安全に住める場所に緑を増やしたい。」
おーーーっとーーーーー魔物出たーーー。
っていうか1時間くらいは歩いてたはずなのに、よく遭わなかったな私。
よーし、セーフ!セーフ!!生き残れた!!!
「あ、そう言えば私を運んでくれたのセレムだった・・んだよね?あの、ありがとう」改めてお礼を言うと、
「・・・・別に。」と、素っ気なく答えるが、右手をさらにキュッと握られる。
いや、ちょ・・それ、ドキドキしちゃうからやめれ!
と、またふわっと柑橘系の香りがする。
「セレム・・、香水とかつけてる?なんか柑橘系の匂いがする。」
言うやいなや、バッと勢いよく私から離れるセレム。
「いや、臭くないよ・・・・???」
どうどう・・と、動物をなだめるがごとく慌てて説明する。
異世界では、柑橘系の匂いはダメなのか?!
目元を薄っすら赤く染めてるセレムは、右腕で顔を半分隠しつつ、
「そうか・・」と呟く。
え?何なの??匂いの話はタブーなの?
と、不思議に思っているとローニャさんが、すっと前に出てきて
「では、セレム様水やりも一通り終えましたし、カエ様にお城の案内して差し上げたいのですが、いかがでしょうか?」
と、提案してくれた。うん、とりあえずこの場を撤退は賛成だ。
「・・ん、そうしてくれ。カエ、夕食はこの部屋で食べて、その後また水やりを一緒にやってくれ。」
ちょっと安心した顔のセレムがそっと手を離す。
ごめんよーー、本当に臭いとかじゃないんだよーーーなんか本当にごめんよーーーと思いつつ、コクリとうなづく。
「では、セレム様。失礼致します。」
私はちょっと振り返りつつ、ローニャと部屋を一緒に出る。
扉を出てホッと一息ついてから、
「ローニャさん・・、この国って匂い・・柑橘系とかってあんまり好まれない感じですか?」
恐る恐る聞くと、出会ってから一番良い笑顔で、
「いいえ、でも2人の時だけ言うようにしください」
え、うーん・・・もっと謎が深まってるんですけど・・。
美女の笑顔めっちゃ綺麗。でも、異世界の何が地雷かわからないからめっちゃ怖い。
「あの・・、出来ればこの世界のルールとか、マナーとか、お付き合い上絶対気をつけないとやばいことを重点的、かつ迅速に教えて頂けると、大変ありがたいのですが・・。」
高校で、適度にサボれるマナー講座出ておいて良かった・・って、くらい丁寧に頼んだ。植物係は、安心して働きたいんじゃーーい!!!
「ひとまず城の中を案内してから、お話しいたしましょう。」
そういって、あれ?なんかはぐらかされた?と、思いつつも、うっかりしたら私が迷宮入りしそうな城を案内された。広い・・・広すぎて、意味がわからん。っていうか、ローニャさんがいないとどこへも行けない・・。
「この城を周りきった頃、ちょうど夕食ですね」
あ、これ完全にはぐらかされた・・と、気付いた頃には、セレムのお部屋で夕食となった。
わぁああああ、会話が怖いんだけどぉおおおお。