いざ異世界旅行!その5
「いいですか?本来、女性は裸足になったり、ひ、膝上までスカートを上げるなんて、はしたない事なんですから、今度からやってはいけませんよ!」
「・・・はーい。」
腰に手を当てて、プリプリ怒るセレム・・8歳児。
怒られる18歳児。
砂浜で、貝殻でもないかな〜と探しながら、話半分で聞いてた。
裸足もダメなんて、この世界窮屈すぎない?
今回だけ!と、言って私は裸足のままだけど・・。セレムは、照れくさそうだけど、今日くらいは勘弁して頂きたい。こんな気持ちのいいビーチで、ほどよい気温の中、革靴とか・・。あー、サンダル欲しい。
「ねーねー、山を作って、トンネル作ってみない?」
「トンネル???」
「あ、知らない?じゃあ、まず山を作ってみよっか。」
私は、もそもそと砂を集めて山を作ると、セレムもしゃがんで一緒に山作りを手伝ってくれる。セレムみたいな可愛い弟だったら、もっと可愛がったろうな・・。うちの弟とは大違いだ。
「いい感じに山になったね〜。で、こっちと、セレム君もここの部分から穴を開けるの。」
「穴を開けると楽しいんですか?」
「私は楽しいです・・・。」
そーだよねー王子様なんて、こんな遊び不可解だろうねー。
でも、海入りたいって言ったら怒られそうだし・・、せめて砂遊びとかしたいの。
2人で砂を掘って、無事に穴が開通する。
「あ、無事開通!やっほ〜。」
そう言って私が開けた穴から、手を出して、セレムの手を握る。
懐かしいなぁ〜、よく作って遊んだっけ・・。
顔を上げると、セレムの目元が赤い・・・。あれ、暑かったかな?
「・・・・・・・・カエさん、警戒心とか身につけて下さいね。」
「・・・へぇ?」
間抜けな返事に、セレムはジトっとこちらを見る。
あ、もしかしてまたなんかやっちゃった・・・???
「セレム君、顔赤いけど大丈夫?暑くなってきたし、ちょっと飲み物でももらって、木陰で休もうか」
手を叩いて、砂を落としながら尋ねると、
「・・・そうします。」
ちょっと顔を逸らして答える。あ、あれ〜〜???
ごめんよ〜〜〜、なんかやっぱり失礼な事しちゃったかな。
ローニャさんに声をかけて、手洗い場に案内してもらって、手足を洗って、カフェスペースで涼を取る。・・信じられるか?これ、全部プライベートビーチの中にあるんだぜ?当たり前みたいな顔してるけど、実はめっちゃ緊張しながら、冷たくて甘いジュース飲んでるからな?一般庶民だから。
「っはーーー、美味しい」
緊張はしてるけど、ジュースはうまい!思わず言っちゃう。
8歳セレム君は、そんな私を見て、クスクス笑う。な、なんだよ・・。
「カエさんは、大人なのに、子供みたいです。」
「・・・大きくたって、子供みたいな人はいますよー」
「そういう人とは、違うと思います。カエさんは、可愛いな・・と思っただけです。悪口ではありません」
「ひぇっ・・・!」
きゃあ!!!8歳児!!!え、うそこんな年齢で、そういう事言っちゃうの?!
思わず顔が赤くなるので、手で扇ぐ。
「・・・あ、ありがとうございます?セレム君・・大人だね・・」
「いえ・・僕はまだまだ子供ですし、足りない所が多すぎるくらいです。」
「お、弟に聞かせたい!そのセリフ・・!!!いい子だね〜〜。」
思わず頭をなでなでしてしまった・・。
だ、だって可愛いがすぎる!!
ちょっとびっくりした顔をしていたが、こちらをニコッと笑ってみるセレム君。齢8歳児。可愛い・・・。
「一休みしたら、夕食へ参りましょう。アイシェ姉様も楽しみにしていました!」
「そうだね!私も夕食楽しみだな〜」
と、食い意地の張った私は、すぐにそっちへ考えが移った。
そして夕食は実際とてつもなく美味しかった!
問題は、その後だ。
セレムと私の部屋に、ベッドが一つしかなかったのだ。